プライベートの綻び

天川裕司

プライベートの綻び

タイトル:(仮)プライベートの綻び



▼登場人物

●牙城真守(がじょう まもる):男性。27歳。出世意欲が凄まじい。しかしプライベートは荒んでいる。

●掛川理香(かけがわ りか):女性。25歳。幸三の一人娘で令嬢。

●掛川幸三(かけがわ こうぞう):男性。60歳。真守が働いてる会社の社長。清廉潔白で曲がった事が大嫌い。とにかく厳しい。本編では「掛川」と記載。

●掛川芳美(かけがわ よしみ):女性。58歳。幸三の妻。清潔を好む。


▼場所設定

●真守の家:都内のマンションのイメージで。駐車場あり。

●街中:デートの待ち合わせなど一般的なイメージでOKです。

●山奥:かなり郊外にある。普段は人目が無い。ここに本を捨てに来る。


NAは牙城真守でよろしくお願いいたします。

(イントロ+メインシナリオ+解説:ト書き・記号=3631字)



イントロ〜


皆さんこんにちは。

案内人のアンナです。


皆さんは毎日生活する上で、

物をよく失くす事はありますか?


あるいは管理する事が苦手で、

「なんでこんな所にこんな物が?」

なんて、ある筈のない場所に探し物が見つかった…

と言う経験はあるでしょうか?


今回は、失くした物に関する意味怖のお話。



メインシナリオ〜


俺の名前は牙城真守。

今年27歳になる独身サラリーマン。


これまでの俺はそれなりに順調な人生を歩んできた。


昔から努力家だった俺は勉強も一生懸命にして、

都内の一流私立を卒業した後一流企業に入社し、

その後も出世を重ね、この若さで係長の座に就いている。


今後も更に課長、部長、そして専務、

あるいは次期社長になれるんじゃないか?

そんな噂も立つほど俺はこの会社で実力が認められ、

出世街道まっしぐら!

といったサラリーマン生活を送っていた。


真守「ぐふふ、俺は人生の勝ち組だよね♪」


1人になればこんな妄想をしてしまうのも仕方がない。


決して他人がいる場所ではこんな妄想をかき立てず、

とにかく紳士的に振る舞う事を心がけ、

誰に対しても当たり障りのない

無難な生活を送る事を心がけてきた俺。


これも出世の為には本当に大事な事なんだ。


学生時代にはタバコを吸っていたがそれも…


「出世したければ喫煙をやめろ」


と上司から言われたのを受けすぐにやめ、

他にもいろいろ出世の為のハウトゥー本などを読み、

とにかく自分のステータスを高める事に尽力していた。


と言うのも俺はもうすぐ、

この独身生活をおさらばするからだ。


(デート)


理香「真守さん♪ごめんなさい、時間に遅れちゃって」


真守「いやいや大丈夫だよ、僕も今来たトコだから♪」


ついこの前、俺の元に新たな出会いが舞い込んで、

俺はその彼女と付き合う事になった。


名前は掛川理香。


何を隠そう彼女は、この会社の社長の一人娘であり、

もし結婚できれば俺はこの会社の御曹司、

つまりゆくゆくはこの会社の次期社長…

と言う立場を獲得できる!


つまりこういう経過があって

「俺が次期社長になれる可能性も満更無くはない」

と言う事になり、俺は本気でその為の努力を重ね、

この会社の社長に見合うだけの人材になろうと

必死でそのステータスを高めている最中だったのだ。


理香「あなたと出会えて本当に幸せ♪これからもずっと一緒にいて、明るい将来を2人で紡いでいきましょうね♪」


理香は本当に良く出来た娘だ。

さすがは令嬢というもので、

品行方正を真っ直ぐ地(じ)で行くような生活をして、

純粋で誠実で穢れを知らず、

25歳にもなっていると言うのに男性経験は俺が初めて…

と言うのだから本当に驚きだ。


でも俺はそんな彼女との出会いを心から喜び、

彼女の為にも自分の為にも、そして2人の将来の為にも、

絶対にこの出会いから結婚に漕ぎ着けたい!

そんな思いがどうしてもあった。


しかし1つだけ問題がある。

それは、彼女の家庭が余りにも厳粛と言う事。

浮気なんてすればもちろんの事、俺のプライベートの

生活でも好ましくない点があれば即離婚…


そんな厳しさを持った家庭であり、

俺はとにかくその辺りのボロを出さないよう

必死に隠し続け、必要なら自分を改善し、

彼女の家族の前では猫をかぶるように…

「立派な彼氏」をずっと演じ続けてきた。


確かにこんな状態で結婚しても…

と言う苦労の多さも想像するが、

それでも俺は出世意欲に燃えている。


俺の家庭はこれまで貧乏だった。


両親は数年前に他界して、

それもこれも全部貧乏が悪いんだ!

そんな風に決め付けていた所もあった為、

俺はとにかくその土台を元に

出生への意欲を人一倍燃やすようになり、

その為に人生を費やしても良い…

そこまでを覚悟する程になっていた。


真守「絶対彼女と結婚してやる!そしてゆくゆくは必ず次期社長の座に据えられるようになってやる!」


確かに不純な気持ちを否めない所もあるが、

それでもそう思う事がその時の俺の正直だった。


ト書き〈エロ本の山〉


しかし、その点での問題が1つ浮上する。

俺はこう見えてエッチな本を大量に持っていたのだ。


俺が今住んでいるのは都内のマンション。

その俺の部屋の1室のクローゼットの中には、

おびただしい程の猥本が山をなしている。


真守「彼女の家族に見つかる前に、まずこれをどうにかしなきゃならない…」


恥ずかしい話だが、

俺には今その問題が突き付けられていた。


幸い彼女はまだ俺の部屋に来た事がなく、

その家族も俺のプライベートのこの部分には

手を付けず、足を踏み入れてはいない。


隠すなら今だ。

いやこれを機に俺は2度とこんな本を買わないようにして、

「自分の中の憂いを断つ」

そう決めようと覚悟していた。


なぁに今はネットの時代。

必要ならばその時々にネットから情報を得れば良い。

そんな1つの暗に隠れた思惑を補強にした上。


ト書き〈捨てに行く〉


そしてある夜。

俺は1人で車を走らせた。

後部座席と後ろのトランクには、あのおびただしい程の

猥本がバッグに入れられて詰められてある。


これを都内(ここ)からかなり離れた郊外の山奥に捨てに行く。


いろいろ考えたが、これが1番無難だ。

まさか燃えるゴミの日に

これ程の量の猥本を捨てる訳にはいかない。


シュレッダーに掛ける事も考えたが、

これ程の量となると大変な労を要する。

時間もかかる。


実は彼女との挙式がもう間近に迫っていたのだ。

だから事は急を要し、なんとか早めに

問題を解決しておかなければならない。


本当にいろいろ考えた末の算段だ。


そして俺はあらかじめ目を付けていた山奥に到着し、

そこでバッグ8つ分のその本達を置き去った。


もちろん山奥と言えど、人目を避けるように黒い服を着て、

誰にも見つからないよう配慮しながら明かりはつけず、

暗闇の中で手探り状態の廃棄だった。


しかし投棄するのは簡単。

数秒でそれらの事を終え、即座に俺は車に乗り込み

それから猛スピードで山道を降り、

何事も無かったかのように帰宅した。


真守「…よし、これで良い」


これで、俺の元から憂いは立ち去った。

これからは、彼女と共に第2の人生を歩む。

この事の明るい兆しが、

その時真っ暗な駐車場にいた俺の頭上に照り輝いた。


ト書き〈大惨事〉


それから数日後。


掛川「やぁ、真守君。お邪魔するよ?」

理香「真守さん♪」

芳美「まぁ♪綺麗にお掃除してあること♪」


俺の家に掛川家族がやってきた。

挙式の事や今後の事を話し合い、

俺と理香の将来を祝ってくれる為。


前祝いのような形で来てくれた皆に、

俺は心から感謝していた。


真守「本当にこんな粗末な私の家に来て下さって有難うございます!社長、今後ともどうぞ末永く宜しくお願い致します!」


俺はもう舞い上がる様に喜んでしまい、

理香とこれからも一緒にいられる事、

そして将来の安泰が約束される事に

この上ない喜びを感じていた。


しかし丁度そんな時だった。


ピンポーン♪とインターホンが鳴り、俺は玄関に出る。


真守「ん、何だろう?」


大きな段ボールが3つ分。

しかも着払いで送られてきた。


通販で何か買った記憶も無ければ、

誰かがこんな物を送ってくる予定も無い。


不思議に思いながら…


真守「あ、ちょっとすみません!」


と言いつつ、

その段ボールの中身をとにかく確認しようとした。

周りには掛川家族がいる。


掛川「おぉ、いいよいいよ」


「こちらには気にせず荷物の確認をしてくれ給え」

そんな風に言ってくれた掛川社長を横目に、

俺はその段ボールを開けた。


すると…


理香「き…きゃあ!」

芳美「な…!」

掛川「うおっ!こ、これは…!」


真守「あ、あああ…」


段ボールの中にはあの時俺が捨てた筈の、

おびただしい程の本達が敷き詰められていた。


3人は速攻で帰ってしまい、

俺と理香の縁談話はその場で無かった事に。


真守「なぜ…なぜなんだぁ!」


3つ目の段ボールを開けた時、1番下のほうに

俺の免許証と、1枚の手紙が添えられていた。


その手紙には…

「こんなモン捨てんなボケ!」

とだけ書かれてあった。



解説〜


はい、いかがでしたか?

今回は意味怖のお話と言うより、

間抜けな話に切り替わっていましたね?


解説の必要は無いかもしれませんが、まぁ簡単に。

ラストの場面を見ればもう一目瞭然でしょうか。


そう、真守はあの夜、沢山の本を捨てに行きましたが、

そのどれかの本のページの間に、知らない内に

自分の免許証が挟まっていたのです。


それに気づかず捨ててしまった。


だからその捨てられた本を確認した地元の住民は、

その免許証を頼りに真守の素性や住所を確認でき、

その住所宛におびただしい量の本を送り返してきた…

それも当然着払いの形で。


と言う事だったのです。


掛川家族は当然、

こんなあるまじき真守の生活を許しません。

その場で結婚の話は白紙に戻され、

おそらくその後の真守の出世にも響いたでしょうか。


まぁこんな事は男性にとっては

普通の生活習慣かもしれませんが、

それでもタイミングによっては

悲惨極まりない事件になってしまう…


そういう事もあるので、要らない物を捨てる時、

また部屋の中で大事な物が失くなった時には、

少し注意するのが良いかもしれませんね。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=_aNFqFRhm1U&t=74s

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