この素晴らしいエリス様と祝福を! 親友の危機ですよ、女神様 3


 「第4章 対決!!仮面の悪魔と幸運の女神!!」


 ダクネスの縁談も終わり、今日も今日とでクエストに行こうと皆で話し合いながら、ギルドの掲示板を眺めていた時だった……。


「……ん?ねぇねぇカズマ、このクエストとかどうかな?」


 そう言って張り紙を剥がして俺に見せてくるクリス、そのクエストの内容とは……


「何々?『キールのダンジョンにて謎のモンスターを発見、調査をお願いします』か……」


 キールのダンジョン……その昔、キールと言う名の稀代の天才と呼ばれたアークウィザードが、一人の令嬢に恋をした。


 たまたま街の散歩をしていた令嬢に、それまではただ魔法にのみ打ち込む、色恋など全く興味を示さなかった男は、一目見ただけで恋に落ちた。


 だが勿論そんな恋は実るはずがない……。


 月日は流れ男は何時しかこの国のアークウィザードと呼ばれていた。


 男は持てる魔術を惜しみなく使い、この国の為に貢献した男は多くの人々に称えられ。


 そして男は王城に呼ばれ、その男の為に宴が催された、そんな男に王が言う、その功績に報いたい、どんなものでも望みを一つ答えよう。


 ……男は言った。


 『この世にたった一つ。どうしても叶わなかった望みがあります……。』





 ……と、この世界のお伽噺と言えばで代表的な話の元になったダンジョン……今では初心者が練習に使われる用になったダンジョンだが、そんな所に謎のモンスター……?


「……確かに、初心者が集まるダンジョンに謎のモンスター……もしそいつが強かったら練習にならないな……」


「まぁ確かにそうだな……よし!今日はこのクエストにするか!」


 よーしそうと決まったら早速準備だ、まず家に戻って支度を……


「嫌です」


 ………おいめぐみん今なんて…?


「だから、嫌って言ったんです。」


 頼むから心の声を覗かないで欲しい……。


「でもめぐみん、確かにダンジョンじゃ爆裂魔法は使えないけど、荷物持ち位は出来るんじゃない?」


「そうだぞめぐみん、お前のわがままはまた今度聞いてやるから今回はダンジョンに付いてこい、わかったか?」


「……まぁ、それならいいですけど……」













「つーことで、ダンジョンの入口まで来たわけだが……」


「……成る程な……確かに謎のモンスターだな……」


「………」


 ダンジョンに着いた俺達は、入口から次々と湧き出るモンスターを遠巻きに観察する。


 一言で表すとか仮面人形。


 仮面を被った膝の高さ程のサイズの人形が、二足歩行で這い出していた。


「なんでしょうね、この変わったのは。見た目も見た事ないのですが……」


 めぐみんが小首を傾げ、興味深そうに人形を眺めている。


 にしても、こいつがどんなモンスターかどうかも分からないからあまり下手には動けないな…………ん?クリスさんや、その手に持ってる小石は一体どこに投げるおつもりで((」そい!」


 そう掛け声をし、メジャーリーガー顔負けの投球ホームで小石は投げられ、その小石は謎のモンスターの頭へとヒットした……。


「ちょっと!?クリスさん何してくれてんの!?」


 クリスを見るとテヘペロ顔でこちらを見ていたので許す事にした。


「お、おいカズマ!あの人形がこちらに向かってくるぞ!?」


「どうするんですかカズマ!!」


 それまでこちらに敵意を向けなかったモンスターは、石を投げたクリスへと、突如猛ダッシュしてくる……。


「カ、カズマ、私どうしたら!!………って、あれ?」


 そして攻撃するわけでもなくクリスの膝にしっかりとしがみついた。


「えっと……そんな悪魔臭が凄い人形に抱きつかれても嬉しくないというか……」


 そうクリスが人形に話しかけていると、急に人形がチリチリと言い出して、何かを察知した俺とめぐみんとダクネスは、クリスに少し距離を取ると……


「う〜ん…全く離れてくれる気配が……って、どうしたの3人とも?」


 クリスがこちらに振り向いた時だった……そして___


 大きな爆発音を響かせながら、クリスにしがみついた人形は跡形もなく消し飛んだ。


「「「クリスーーッ!!」」」


 ……そこには、爆発に巻き込まれたボロボロの格好で地に倒れ伏すクリスの姿があった。













「……と、言うわけで、どうします?」


 あの後クリスが目を冷ますまで作戦を考える事にした俺達だったが、中々いい案が浮かばずにいた……。


「ふむ、なぁカズマ、ちょっと試して見たい事があるんだがいいか?」


 と、俺が悩んでる最中、ダクネスが人形の一体に近づくと唐突に無言でゲシッと殴る。


 その行動に俺達が慌てる中、殴られた人形はダクネスにしがみつく。


 やかで人形はクリスの時と同じ様に盛大に爆発した。


 そして、爆発したその後は……


「……うむ、これならいける。問題ないな。」


 そうして、ダクネスを盾に俺達は進む事に決め、クリスが目覚めるまで待つ事にした。





 クリスが目覚め作戦を伝えた後、めぐみんは外で待つことにし、俺達はダンジョンの中へと進んでいくのだった……。


「フフフフ。ハハハハハハハハッ!見ろカズマ!当たる、当たるぞ!!」


 俺達の前を行くダクネスが喜々として剣を振り回しながら、ダクネスの攻撃を避けようともしない人形達をバサバサと切りまくっていた。


 順調過ぎるほど順調に奥まで進み、目標としていたリッチーの部屋近くに到着した。


「……どうしたもんかな。アレ、どう考えてもこのモンスター達の主だろ……」


 俺とダクネスの前には、リッチーの部屋の前であぐらをかいて、地面の土をこね回し、せっせと人形を作る影がある。


 すると、いつの間にエリスへと変身を遂げ、その主に突撃するエリスの姿が目に入った。


「セイクリッド・ターンアンデッドッ!!」


「華麗に脱皮ッ!」


 そんな事を言ってエリスの魔法を避けた主は、こちらに振り返ると……


「何なんだ貴様っ!急に不意打ちなどしてきおって……吾輩が全てを見通す悪魔じゃなかってらやられていたぞ全く……」


 そう言ってこちらを見る悪魔、仮面の部分は赤く光らせ、開いた口元をニヤリと歪めた。


「それでは改めて自己紹介、我がダンジョンへようこそ冒険者よ!いかにも、吾輩こそが諸悪の根源にして元凶!魔王軍幹部にして、悪魔達を率いる地獄の公爵!この世の全てを見通す大悪魔、バニルである!!」













 ___暗いダンジョンの中、俺はジリジリと後退りする。


 ダクネスがバニルに向かって油断なく剣を構え、エリスは魔法の準備をしているが、魔王軍の幹部と言う事で流石に緊張している様だ……。


「……に、しても、どうしてここに女神エリスが君臨しているのだ?まるで親の仇を見るかのようで我を見て…まぁそうカッカするでない、ほら、吾輩の仮面の一部を一口囓ってみろ、落ち付くぞ。」


「何故悪魔の私物に口をつけなければいけないの?にしても、そちらこそ何でこんな初心者用ダンジョンに悪魔…それも幹部が住み着いているのかな?」


「まぁ落ち着くがいい。吾輩は、別にお前達と争うためにこの地へやって来たわけではない。魔王の奴に頼まれたとある調査。そしてアクセルの街に住んでいる働けば働くほど貧乏になるという不思議な特技を持つ、ポンコツ店主に用があってここに来たのだ」


 そのバニルの言葉に、俺は思わずダクネスと顔を見合わせた。


 隣では、ダクネスが何時でも斬り掛かれる様に油断なく剣を構える中、俺はダンジョンの床に座り、バニルの話を聞いていた。





 そうして大人しくバニルの話を聞いていたのだが、バニルに何かに気づいたかの様に俺を見ると……


「……………フハハッ!そこの男!吾輩とビジネスをしないか?」


 そう悪魔らしい顔でニヤニヤとこちらを見てくるバニル。


 にしてもビジネス?何で俺に……。


「内容は簡単だ!お主が前の世界にあった便利グッズを出来るだけ作り、その生産は吾輩に任せるがい!どうだ?折檻で吾輩と金を稼ごうではないか!!」


 そう言ってフハハと笑うバニル……ふむ、普通に考えはいいんだが、これが契約相手が悪魔なのだ一番の懸念点なのだ……。


「カズマ、そんな事しなくていいよ、この悪魔はここで倒そう。」


 まるで悪魔と天使の囁やきのようだ……まぁ実際は女神と大悪魔とか言う完全上位互換なのだが……って、そんな事はどうでもいい、どっちにしろ幹部を倒したらお金が入るんだ。

悩む必要などないだろう。


「おっと良く考えろ小僧。そこの女神は慈悲深いを自称しているのだぞ?あのベルディアの奴のようにまた貰える報酬の3分の1位寄付するであろう……なら!今後もお金が稼げる吾輩と手を組んだほうが得策では?」


 それはそうなんだけど……冒険者としては討伐を選ぶのが正解だろうが、俺はお金が欲しいのだ!てことで何とかエリスを説得するか……。


 つってもなぁ、エリスが納得してくれるかなぁ……


「手なことなんでエリスさん、ここは一旦様子見でどうですかね?」


「駄目です。」


 そう無慈悲にも言い放ち魔法を唱えるエリス、バニルも負けじと目からビームを出して応戦しているが……如何せんダンジョンが崩れそうだ……。


「おいさっきから黙りっぱなしのダクネス、俺らはここから離れるぞ。」


「な!?エリス様に全部任せると言うのか!?」


「当たり前だろ?俺達に出来る事は何一つない、ということで一旦逃げるぞ。」


「そ、それはそうだけど……」


「うるさいぞダクネス、腹筋だけじゃなく頭も硬いのかお前は?」


 無言でこちらに当たらない剣を向け追い掛けてくるダクネスと一緒に出口へと走る俺、まぁ最悪エリスが何とかしてくれるだろ……入口にはめぐみんもいるし、最悪エクスプロージョンでドカンだ。


 後ろからいつこのダンジョンが崩れてもおかしく無い爆発音が聞こえてくる、このままだと本当に崩れるのでは?


 ___とか言ってたら出口が見えてきたな。


「おいめぐみん!何時でも魔法が撃てる準備しとけ!!」


「ダンジョンの中で何が…?後さっきから聞こえるこの爆発音は?」


「後で説明してやる!もしもの時の為に準備しとけ!」


 そう言うと渋々詠唱を始めるめぐみん、後はエリスとバニルが出てくるかどうかだが……。


「!?カズマ!二人が出てきたぞ!!」


 そう言って入口の方を指差すダクネス、俺もそちらに目を向けると、巻き込まれれば確実に生きては戻れないであろう戦いをくり広げている二人。


「カズマ!詠唱が終わりました!何時でも撃てます!!」


 ナイスタイミングだ、後はどうやってエリスだけをこちらに移動させるかだが……。


 ___そうだ!!


「めぐみん!俺が合図したら撃て!!」


 さて、これが一発で成功してくれるかは分からないが、試してみない事には分からない…。


 頼むぞ、、俺の唯一の幸運の高さに全てかかってるんだからな!!


「いくぞ!!スティーーールッ!!」


 そう言って俺は両手をエリスに構えてスティールを使う。


 すると突然エリスが消え、俺の眼の前へと瞬間移動した……。


「え?」


 驚いているエリスを尻目に、俺はエリスをキャッチすると……


「撃て!!めぐみん!!」


「エクスプロージョンッ!!!」


 そう言ってバニルを方を見ると……


「フハハッ!!流石だ小僧!!これには吾輩も負けを認めようではないか!!」


 そう言って、最後まで笑いながら爆発に巻き込まれ散っていったのだった………。


 あの後、顔を真っ赤にしたエリスをそのままお姫様抱っこで帰ろうとした所、流石に恥ずかしいとの事で仕方がなく降ろし、ギルドへと報告に行く。


 因みにウィズの店へとポーションを買いに行ったら、快く俺を出迎えてくれたバニルmk2が居て、結局一緒に商品を売る事になった。

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