この素晴らしいエリス様と祝福を! 親友の危機ですよ、女神様


 「エピローグ女神様でも青春がしたい!」


 機動要塞デストロイヤー迎撃戦から、数日が経過。そして本日。


 冒険者内は異様な空気に包まれていた。


 理由は言わずとも、この熱気で分かる物。


「カズマ。今更私が言う筋合いじゃ無いかも知れないが、改めて礼を言う。よくこの街を守ってくれたな。……どうも、ありがとう……!お前には、いつか私の事を話たいと思う。まぁ大体の検討は付いてるみたいだがな。」


 そう言って、今日は私服姿のダクネスがはにかんだ笑みを浮かべてきた。


 すると突然、ギルド内のざわめきがピタリと止んだ。


 顔を上げると、ざわめきが止んだ理由が目に入る。


 ___それは、親の敵を見るかの様な、厳しい眼差し。


「冒険者、サトウカズマ!貴様には現在、国家転覆罪の容疑が掛けられている!自分と共に来てもらおうか!!」













 「第1章 この豚領主に鉄槌を!」




「……はぁ?国家転覆罪…?」


 険しい表情をした目の前の女に、俺はオズオズと尋ねてみる。


 賑やかにざわめいていたギルド内は、両隣に二人の騎士を従わせた女の言葉により、シンと静まり返っていた。


「自分は、王国検察官のセナ。国家転覆罪とはその名の通り、国家を揺るがす犯罪をしでかした者が問われる罪だ。貴様には現在、テロリストもしくは、魔王軍の手の者ではないのかと疑われている。」


 セナと名乗った黒髪ロングのその女は言いながら、俺に厳しい視線を向けてきた。


「いや別に罪の内容は知ってるんで、何で疑われているかの理由を教えて頂けませんか?その理由が分からないのに行くバカが何処にいると思うんですか?」


 俺はまるで喧嘩を売るような言葉をあえて使った。


 これに感化されるようならそれまでの人だ。


「その男の指示で転送された、機動要塞デストロイヤーの核であるコロナタイト。それが、この地を治める領主殿の屋敷に転送されました。」


 ふーん、ん?、その領主ってもしかして……。


「あぁ!俺達にベルディア討伐賞金を払うのを渋ったやつか!いやそれ天罰が下ったんじゃない?どうせその領主生きてんだろ?なら良かったじゃん。」


「何が良い!貴様、状況が分かっているのか?領主殿の屋敷に爆発物を送り、屋敷を吹き飛ばしたのだ。先程も言った通り、今の貴様にはテロリストが魔王軍の手の者ではないかとの嫌疑が掛かっている。まぁ、詳しい事は署で聞こう。」


「え?いや普通に嫌ですが?」


「は?」


「嫌だってさ、俺がテロリストかどうか以前に、その領主の街を守ったんだぞ?んでベルディアも俺達のptが討伐、それなのにその領主はベルディアの時賞金を渋る、そしてそんなクズ領主の街を守ったのに、テメー見たいな奴を押しかける、なぜ不思議に感じない?少しでもおかしいと感じるだろ?それ共テメーはそんな事すら感じられないバカなの?」


「貴様…っ!あまり調子になるなよっ!」


 そう言い放ち、騎士の二人が俺を取り押さえようとする……が、急に立ち止まるかと思うと、まるでこちらを怯えるかのように後ずさった。


「あまり調子に乗らない方がいいのは貴方達の方では?」


 そう言い放ち後ろから姿を表すエリス。登場の仕方が格好良過ぎるぜエリス…っ!。


「始めまして検察官の方々、そして久しぶりですね皆さん。」


 そう言いニコっと笑うエリス、その笑顔はとても可愛いと、とても怖いで捉える。


「確かに、指示したのはカズマ、、さんですが、その指示が無かったらここら1辺どうなっていたでしょうね?そのちっぽけな頭で考えて見て下さい。」


 その笑顔は、ギルド内に居る全員が凍り付く程の笑顔…。


 因みに俺は普通に可愛いと思ってた。


「ですが…。魔王軍の刺客の可能性はまだ捨てきれないのも事実、取り敢えずカズマ……さん、事情聴取だけでも行って見ればいいんでは?」


 ふむ、確かに事情聴取だけならまぁいいだろう、それにクソ領主の指示に従っただけ…と捉えればこの検察官もまぁ……可愛そうだろう、少し位顔を立ててやろう。


「まぁ、事情聴取位ならいいよ。」


 そういい、検察官と一緒に領地所に行く俺、その検察官は先程までの高圧的な態度とは違い、まるで俺が怖いかのような目で俺を見てきていた……。













「おいおい、こんな所で奇遇だな!何だよ、何をやらかしたんだよ?」


 取締室に入る途中で、話しかけてきたダスト、何故嬉しそうなんだ……。


「いや何かテロリスト扱いされてさ……、デストロイヤー討伐の時、爆発寸前のコアを転送するとうに指示したんだよ。それが領主の屋敷に転送されて、家が吹き飛んだとよ。」


 腹を抱えて爆笑するダスト、俺も笑いたい気分さ。


「あ、あのぉ…。そろそろ……。」


 そう言われて取締室に入る俺。


「えー、これは嘘を看破する魔導具です…。この部屋の中に掛けられている魔法と連動し、発言した者の言葉に嘘が含まれていれば音がなりますので、その事を頭に置いといて下さい。それでは質問をします。」


「まずは出身地と冒険者になる前は、一体何をしていたんですか?」


「出身地は日本です。そこで、学生と言う名を盾にしてただのニートをしてました。」


「ニホンと言う名の地名は聞いた事はありませんね……。では次に、貴女が冒険者になった動機からお聞かせ下さい。」


「美少女達にチヤホヤされたいからです。」


「………そ、そうですか……。それでは次、領主殿に恨みなどありませんでしたか?」


「デストロイヤー戦の時は無かったですね、まぁ今は……ね?」


「そ、そうですよね……。では、次……」


「なぁ、そんな周り諄いやり方して何になる?もっとストレートに聞いてくれないか?まずランダムテレポートを指示したでけであって、決して領主を狙ったわけじゃない、んで俺は魔王の手の者では無いです、はいこれで満足?」


 流石に諄いぞ……セナさん……。


 久々にキレちまったよぉ……。


「……どうやら自分が間違っていたそうですね。本当にすいませんでした。」


 そういい、頭を下げてくるセナさん、やはりこいつは話が分かる奴だったか。


「そ、それとカズマさん、非常に言いにくいのですが……。」














 あの後家に戻ってきた俺、ソファーに座ろうとすると、そこにはぐったりと倒れ込んでいるクリスを発見した……。


「おいクリス、カズマさんが帰ってきたぞ、おかえり位返したらどうだ。」


「カズマは私に感謝すべきだよ……。私のお陰で穏便に済んだんだからね……。あの後いろんな冒険者に質問攻めにされて大変だったよ……。」


「それはありがとなクリス、あと俺結局裁判行く事になった。」


「私の苦労は一体何処に行ったんだ……。」


 あの後セナさん曰く、一応裁判の形をした茶番に出てもらうとのこと……。


 正直面倒くさくて仕方がないが、まぁクソ領主の事だ、またあーだこーだ難癖つけてくるだろう……との事。


 俺はぐったりしながら、自分のベットに倒れこんだのだった……。


 この世界の裁判は至ってシンプルだ。


 検察官が証拠を集め、弁護人がそれに反論する。


 裁判官が疑わしいと判断すれば、それで実刑。


 この世界に弁護人なんて職は無く、被告人の知人や友人が弁護を請け負う事になる。

そして現在___


「そんなに緊張する事は無いですよ。大丈夫、私達が付いてますから」


「安心しろ、本当にどうしようもなくなったら私が何とかしてやる。今回の件に関しては、お前は何も悪くないさ。」


「最悪エリスになればいいっしょ。」


 とても頼もしい二人と、何処か楽観的なのに一番頼みになるクリス。


  ___裁判長と思われる中年の男が、木槌でコンと机を叩いた。


「静粛に!これより、国家転覆罪に問われている被告人、サトウカズマの裁判を始める!告発人はアレクセイ・バーネス・アルダープ!」


 こいつが今回の真犯人、値踏みする様に俺を睨めつけ、そして俺の隣に立つ3人に、好色そうなネットリした視線を送った。


「うっわここまで嬉しくない視線は初めてです、カズマカズマ、変わりにカズマが私の目を見て上書きして下さい。」


 ネットリした視線のせいで頭がトリプッためぐみんの言葉を受け流しつつ、クリスの方を見ると、殺気が大変な事になっていたので目を逸らし無かった事にした。


 因みにあのダクネスですら狼狽えるレベルの視線だったらしい……。


「では、起訴状を読ませて頂きます。……被告人サトウカズマは、機動要塞デストロイヤー襲来時、これを他の冒険者達と共に討伐。その際に、爆発寸前だったコロナタイトをテレポートで転送するように指示。転送されたコロナタイトは、被害者の屋敷に送られ爆発。被害者、アルダープ殿の屋敷は消滅し、現在、アルダープ殿はこの街の宿に部屋を借りる生活を余儀なくされております」


 セナさんが読み上げていく間に、当の被害者の領主は食い入る様にダクネスを見つめる。


「領主と言う地位の人間の命を脅かした事は、国家を揺るがしかねない事件です。よって被害者アルダープは、被告人に国家転覆罪の適用を求める…との事です。」


「続いては、被告人と弁護人に発言を許可する。」


「はいは〜い、私が弁護人ね、んじゃまず、この中に悪魔の力を使っている人がいる!」


 クリスが急に何を言ったかと思うと、悪魔の力を使っている奴がいる!?


 俺は領主に目を向けると、めちゃめちゃ汗をダラダラ流していた……あいつやん…。


 裁判官はベルを凝視するが、ベルは鳴らない、そこでざわめきが起きる。


 そりゃそうだ、裁判で悪魔の力を使うなんて、即刻死刑になってもおかしくない…。


「何を拔かしておる小僧、それに裁判官よ、コイツが何を言おうと悪魔が力を使ってるかどうかは分からないだろう?ベルを見ても意味はない。」


「そ、そうでしたね。それで、どうしてクリスさんは悪魔の力が働いていると思ったのかね?」


 そう言うと、少し考え込むようにして、また口を開くクリス。


「まぁまず匂いだけど………普通に考えて領主さんがやってる事、可笑しいよね?」


「……何が言いたい。」


「だって、今まで誰も成し遂げなかった幹部討伐してくれた人に、賞金を送るのを渋る。そしてあのデストロイヤーすらも討伐した同じ人に対して、自分に不利益があったから裁判を起こす、しかもワザと起こった事でもないのに……。違う?」


 そう言うと、周りの人達はそれぞれ確かに…などと呟いたり、各々喋り始めた。


「あーごほんっ!静粛に。」


 裁判長の呼びかけに、皆喋るのをやめる。


「………一先ず、彼が言っている事も間違ってはいない、アルダープ殿、何か意見はあるかい?」


「………フンッ!やめだやめ、こんな茶番する意味などない。」


 そんな感じて終わった裁判、結局あの領主は何がしたかったのか……。


 その後クリスがダクネスに質問攻めにされ、コソコソと教えていていた。


 そして次の日、何故かアルダープが行方不明になったとかなんとか……。













 「第2章 この貧乳女神と混浴を!」


 領主が行方不明になって数日後。


 クリスは何だかニコニコし、ダクネスは何故かどんよりしていた。


 めぐみんの一日爆裂魔法の日課を終わらし、さっさと風呂に行こうとすると……。


「あれ?カズマが先に入るの?」


「ん?あぁクリスから入るか?」


「え!いいの?ありがとうカズマ!!」


 フッ……、紳士カズマはこんな所でも気配り出来るのだよ世の男性の諸君……。


 そんな一人事を考えていたら、クリスが、あ、そうそうとでも言いたげに……。


「私が風呂に入るからって覗かないでよぉ〜?」


 腹立つ顔でこちらをニヤニヤしながら見てくるクリス。


「誰が貧乳のお前の風呂何か見るか、見るならダクネスのを覗く。」


「なっ!貧乳じゃないですー!ちゃんとありますー!」


「ハッ!見栄を張りたいお年頃なのは分かるが、事実から目を背けている内はそのままだぜクリス!……ん?…お年頃?……そういや女神って何歳なn」


「女神に寿命はありません。」


 そんなやり取りをしていると、段々とヒートアップしていき………。


「そもそもねぇ!見た事も無い癖に貧乳って決めつけないでくれる!?」


「見た事ないんじゃなくて「無い」んだろ?」


「ぶっ殺ッ!!」


「わっ!ちょ、危ないだろ馬鹿!」


「そんなに言うんだったら一緒に入ればいいじゃないか!ちゃんとあるもん!」


「あぁいいさ確かめてやるよ!もし無かったらクリスの二つ名に貧乳の化身をくれてやるよっ!!」


 そうして妙なテンションで風呂に入る事になったんだが……。


「ふぅ……」


「はふ……。カズマのせいで変に疲れちゃったよ……。」


 広い浴槽に肩まで浸かり、のんびりと手足を伸ばす。


 風呂が広いのが、この屋敷の良い所でもある。


「それでカズマ、私にはちゃんとあったでしょ?」


 縁にあごを乗せたまま、クリスが片目を開けてこちらをチラ見してくる。


 俺は浴槽の中のクリスの体を改めて見た。


「諦めろ貧乳の化身。」


 その日、家の浴槽が一日使えなくなったとかなんとか……。

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