求め彷徨う刹那

ボツ原稿 

友未 哲俊 様の自主企画『エロスの里 第三回』への書き下ろし。

友末様の活動休止による、お蔵入り作品。

ひとつの作品として投稿するのも、気が引ける内容です。


 タイトル:【 求め彷徨う刹那 】 ~性の本質は魂の傷の中にしかない~


 

母胎の温もりに包まれ、安らぎの中で浮かんでいた至福の時間。

この時間が止まったまま、永遠に続いて欲しかった。

それ以外、何も要らなかった。


人生の中で、たった十ヶ月だけの幸せ。


刹那の十ヶ月は、突然奪われた。

母との繋がりを引き裂かれた 哀しみ

悔しさ、狂おしさを叫ぶ。

これが産声であり、この瞬間を人は『 誕生 』と呼ぶ。



命は哀しみに始まり、孤独の中でついえる。



人が何故、セックスを求めるのか。

記憶が消えても、身体が覚えている。

誰かと繋がり、喜びを共有した至福の時を

刹那でも胸の奥が求めるからだ。



エロスとは、ただの欲では無い。

あの無常の喜びを、求め彷徨う

張り裂けそうな魂の衝動。

単に性行為を文章化したものを、エロス文芸とは呼ばない。



性を嫌悪するのは

あの幸せが、二度と手に入らないという

絶望を裏返した、悔しさなのだ。


愛は距離と比例する。

0.00mmまで求め、惹き合う衝動こそ愛なのだ。

触れる事を拒む " プラトニックラブ " など

都合の良い、まやかしに過ぎない。



年衰うと、誰もが性欲を失う。

それは自分には、あの喜びを再び享受する事など

もう無いという、長い人生に疲弊した

諦めと終焉を悟るからだ。



互いの肌と、唇の温もりを感じ合い

繋がる喜びに、快楽を貪り満たす時間。

それがたとえ、二度と戻れない刹那であっても

求め合うのが、人の業なのだ。


エロスとは

命より根源的な、魂が求める叫びなのだ。

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