第134話 ドラゴンオーブと顔色

 キープレイヤーである時魔道士アルファを再び仲間に加えて、いよいよ土の大輝石のある地底世界『ロストワールド』へと向かう。


 ジョアーク帝国の帝都リギラウを出発する前に、竜騎士ケインからローゼの呪いを解いたお礼にとドラゴン王孵オーブを四つもらった。


 更に、すでにもう一箇所ドラゴン王孵オーブを手に入れるアテが有るらしい。そこで入手は竜騎士ケインに任せて、その分の報酬に俺達が持っていた最高の槍を作るためのレア素材『ワイバーンのくちばし』でドワーフ王に槍を造ってもらい、お互いに交換することが決まった。


 俺達のパーティーとアルファ、ダズーを乗せて、ジョアーク帝国の帝都リギラウから飛び立った飛空艇ミューズ号は、地底世界『ロストワールド』を目指して南へと飛ぶ。


 まずは途中で浮遊大陸ズイーブドに寄り道をして、時魔道士アルファの能力解放イベントをこなさなければならない。

 

 その移動途中の船内で、今持っている一から五までのドラゴン王孵オーブを使う事にした。


 ドラゴン王孵オーブの一から七でどのステータスが上がるかは、基本的にはステータスと同じ並び順だが、力、体力、運、素早さ、器用、知性、精神と三番だけがなぜか割り込んで運が入ってきている。


 このドラゴン王孵オーブ、一般キャラが消費して使うと各種ステータスが100上がるのだが、竜王(幼生体)のシーラが使うとなんと150も上がるのだ。


「そもそも転職ができないシーラ用のパワーアップ素材だったのではないか?」と前世では掲示板で噂されていたっけ。


 そういうわけで、ドラゴン王孵オーブを使うのはもちろんシーラだ。ただしシーラといえども運は100でカンストだから、運の上がる三番だけは我らがぶっ壊れリアルラックキャラのミーニャに使用してもらう。


 因みに使用の仕方は別に食べる必要はなく、手に持って使用すると宣言すればいいだけだ。ミーニャが三番を使用して更に運が100上昇し、シーラが残りを使用して力、体力、素早さ、器用がそれぞれ150ずつ上がった。


 船内で時魔道士アルファを交えてロストワールドでの対応を打ち合わせしている最中に、困った事に機工士ダズーが「アルファが心配だから土の大輝石まで一緒に行く」と言い、アルファも「ダズーが来てくれた方が心強い」と言い出してしまった。


 うーん、弱ったな。


 二人はラブラブみたいだから気持ちの上ではそうなんだろうが、護衛対象が増えると百獣魔王ディラグノス戦の難易度が跳ね上がってしまうから、連れて行きたくないんだけどなぁ……


 だけどアルファはもともと戦闘することに対して、積極的な娘ではないしなぁ……二人も連れて行くとなると最低限のアルファとダズーのレベル上げもかなり多目に見積もらないと危険だろうし……困ったな。


「ねえ、ルイちゃん、奇御魂くしみたまの盾って使えないの?」


「それだ!」

 

 俺が「二人のレベル上げ、二人のレベル上げ」とぶつぶつ呟いていたら、エリーがいいアイデアを出してくれた。


 そろそろ奇御魂の盾くまさんも元気を取り戻したんじゃないのか?


 インベントリから奇御魂の盾くまさんを取り出してみる。出てきたくまさんは、まだ中心の紅い宝玉の色かおいろが少しくすんで見える。まだ回復していないのだろうか?


 インベントリからくまさんを取り出して、数瞬の間があいた。


『これはこれは! 新しいお嬢様……にお坊ちゃま、お初にお目にかかります吾輩奇御魂くしみたまの盾と申します。以後お見知り置きください』


 破邪の剣はっつぁんで少し慣れたのかアルファとダズーは、インテリジェンスウェポンに対する驚きは特にはないようだ。

 

 くまさんの中心の紅い宝玉の色かおいろがみるみる輝いていった。アルファにロックオンして元気が回復したと見える。……やはり奇御魂の盾ロリ○ンは使えないか……。


 ん? そういえば破邪の剣はっつぁんが男なら普通に装備できるって言っていたな。


「くまさん、女の子は時魔道士のアルファ、男の子は機工士のダズーだ。装備適用外だけど腕輪に形態変化して、ダズーにくまさんの能力絶壁愛バリアを使ってもらう事はできるかな?」


 くまさんが腕輪に形態変化し、ふわりと念動力で移動してダズーの腕にはまると、俺達(高山組)みたいにバチバチっと弾かれることはなかった。


『可能でございますね』


「それじゃあ、ダズーと一緒にまずは二人のレベル上げからだな。ちょうどいいからミーニャとカサンドラさんのレベルももっと上げておこうか。くまさんよろしく頼むよ」


『……ルイお嬢様? アルファお嬢様が身に着けてくだされば、吾輩もっと活躍できる自信がありますぞ』


 くまさんが俺だけにささやいてきた。


 我慢だぞ、くまさん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る