第135話 土の巫女アルファ
飛空艇ミューズ号は順調に空の旅を続け、浮遊大陸ズイーブドの中央高山地帯の近くまでやって来た。ここからは飛空艇では進めないので、
俺がここに来た目的は、かつてこの洞窟の最奥の間を封印した
黄色いバケツの彼こそは、土の
土の大輝石の力を奪っている百獣魔王ディラグノスは、かつて土の大輝石の大いなる加護を得た男で、『大地に触れている間は常に体力(=HP)が回復し続ける』という加護を持っている。
膨大なHPを持っているくせに、行動回数を減らすことなく毎ターン自動で回復していく、というボスモンスターが一番持っていてはいけない加護とも言える。
まぁ、これに対する攻略法は、初回版の頃に村人から話を聞いたり、自分で閃いたりして自力で発見するプレイヤーがほとんどだったみたいだ。
そう、百獣魔王ディラグノスに『浮遊魔法』や『浮遊薬』を使って、とにかく地面から浮かしてしまって加護の力が発動しないようにしてしまうのだ。
これで百獣魔王ディラグノスは、強いが順当に倒せる相手になるのだ。ゲームバランス的にちょうど良い相手とも言える。それでもかなり手強く、低レベルクリアなんて絶対にむりなんだけど。
ところが「ディラグノスは浮かせれば楽勝」みたいな、イキった書き込みが後年掲示板に氾濫したことで、(怒った?)制作会社がリマスター版をリリースする時には『浮遊』状態も追加で無効にしてしまった。
今度は「出番が早すぎる裏ボス」「ラスボスより強い」「ゲームバランスおかし過ぎ」「クリア不能のクソゲー」などの
そして『浮遊』状態に代わる百獣魔王を倒す為のギミックとして、リマスター版にこっそりと追加登場したのが時魔道士のアルファというわけだ。
永久氷床で埋め尽くされた『レゴ厶の洞窟』最奥の間の広場の前までたどり着いた俺達は、時魔道士アルファに黄色いバケツの雪だるまを呼び出してもらった。
「休眠中のぼくに言葉を届けることができるなんて、誰だろうかと思ったら、懐かしいね、あの時眠りについてもらった最後の土の巫女じゃないか。何年ぶりなんだろう。おや、一緒にいるのは光の戦士だね。他の大輝石を解放してくれているのがぼくにも伝わっているよ、ありがとう」
永久氷床からポンッと飛び出してきた黄色いバケツの雪だるまが俺達の前までトコトコと進んでくるとアルファと俺達へ語りかけてきた。
「時は満ちた。今こそ魂に連綿と受け継ぎしその力を解き放つ時。土の巫女アルファよ、土の大輝石本体を解放できるのはきみしかいない。頼んだよ」
黄色いバケツの雪だるまがアルファに手をかざすと、黄色い光がきらめき、アルファの全身をぐるぐると回った後に強く光ると消えていった。
「私が今ここにいる理由、その全てを思い出しました。土の大輝石よ、我がラミューダ一族に与えていただいた恩恵に今こそ報いる時。土の巫女としてのお役目、おまかせください」
アルファが黄色いバケツの雪だるまに約束をすると、黄色いバケツの雪だるまは頷き、再び部屋の全てが氷で埋め尽くされた最奥の間へ溶け込み、その姿は見えなくなっていった。
この時魔道士アルファの解放イベントを終えたことで、ゲーム通りならば百獣魔王ディラグノスを倒せる様になったはずだ。後は、不測の事態に対応出来るようにレベル上げだな。
早めに帝国のイベントが終わったということは、カッファリ大陸にある砂漠の国『オアシズ』の『ピラミッド』に入れるようになっているはずだ。あそこなら強力なモンスターが数多く徘徊しているので経験値がたくさん稼げるし、『星降る指輪』も手に入るかもしれない。
『星降る指輪』の効果はなんと素早さが二倍になるという、とんでもない代物だ。『ファンサ5』のゲーム世界では一周目プレイではピラミッドで入手する一個のみ、2周目プレイで裏ボスのいるダンジョンで二個目をゲット出来るはずだ。
瞬影のケンタジードが持っていた物が二個目のものだとありがたいんだけどな。
浮遊大陸から飛空艇で進路を南東にとれば、カッファリ大陸のピラミッドへと辿り着く。
朝になり、飛空艇の船室でいつものパーティーメンバーで朝の儀式を終わらせると、アルファとダズーも加えてピラミッドでのレベル上げ方針について打ち合わせをする。
「それじゃあレベル上げを兼ねてカッファリ大陸のピラミッドを攻略していこう! まずは俺とエリー、チョコとザックは戦闘に参加しないようにする。イーリアス、シーラも戦闘参加は少なめで、ミーニャ、カサンドラさん、アルファ、ダズーに経験値を集めよう」
「はいっ!」
土の巫女として覚醒した時魔道士アルファも気合い十分だ。これならば大丈夫だろう。
「普通の敵なら、
アルファとダズーの緊張を解して、いざピラミッドへ突入だ!
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