第126話 俺は正気にもどっ・・・

『黒い翼』の旗艦から何かが勢いよく飛び立った!

  

 更にケインが船べりでいったん大きくしゃがんだかと思うと、大ジャンプしてきた!


 ケインの職業ジョブは竜騎士だ!

 まさかこの距離で飛べるのか!?


 うおっ!?


 本当にここまで来た!


 しかも速い!


 ドカッ!


 俺達の更に上空から大ジャンプで襲ってきた竜騎士ケインの槍を、オーラを纏った腕で弾く!


 俺の捌きによって弾き飛ばされたケインが不死鳥フェニックスモードのザックの背中から落下していく!


 え!?


 落ちて……死ん……


 キラリと光る何かがぐんぐん上昇してくる!


 キラリと光る槍を携えて竜騎士ケインが飛竜に乗り、ザックに乗る俺達と横並びになった!


盗賊シーフのくせに俺の槍を弾くとは、お前なかなかやるな! 強者とやりあえるのは騎士の誉れ! 改めて名乗らせてもらおうか。我が名はケイン! 竜騎士ドラゲナイッのケインだ!」 


「俺の名前はルイ! シーフではなくモンクだ」


「そうか、モンクならば納得の力だ! だが空の上は我々竜騎士の独壇場! いつまで俺とローゼの空中殺法を防ぐ事ができるかな!?」


 そう言い残すと、急旋回した飛竜はザックに乗る俺達の背後へと回った!


 ローゼっていうのはその飛竜の事か!?


 飛竜がファイアブレスを吐いて攻撃してきたが、フェニックスのザックが炎を全て吸収した。


 見れば飛竜の背からは、いつの間にかケインの姿が消えている!?


 はっとした俺が上空へとモンクスキル『けり』を放つと、すぐそばまで迫っていたケインのジャンプ攻撃と激突した!


 ドゴォ!


 危ない!

 ファイアブレスは囮だったか!?


 しかも竜騎士のジャンプ攻撃は、必中効果があるから厄介だ。俺はカチモンだからダメージは少なくて済んでいるが、後衛職や防御が前衛の中では弱いミーニャがこのジャンプ攻撃をくらうとひとたまりもないだろう。


 攻撃の後には再び飛竜ローゼの方へと飛び移り、目まぐるしく空中を飛び回るケイン。俺達をほんろうしつつ要所で攻撃を繰り出してくるそのバトルスタイルは、足場の限定された空の上では本当にやりづらい。

 

「ぴえぇ〜!」


 俺達を全員背に乗せている為に、思うように行動できないザックはもどかしそうだ。空で相手に好きなようにされるのはストレスなんだろう。すまんザック。


 ザックの為にも、これ以上竜騎士ケインに好きにさせるわけにはいかないな!


 タイミングも段々掴めてきたところだし、次のケインの攻撃でカウンターを決めてみせる!


 ドドン!

 

 上空からの左肩を狙った竜騎士ケインの一撃を紙一重で避けると、そのまま槍を脇に挟んでしっかりとホールドしつつ、ケインの兜の隙間からあごに強烈な掌底を叩き込む!


「ホォあたァ!」


 ズガンッ!


「ぐはっ!」

 

 カウンタースキルも発動させた俺の掌底をくらったケインはその場に膝から崩折れる!


 俺の半端ない力ステータスに、スキルの力も合わさって脳を激しくシェイクされた事だろう。


 今のうちにケインの槍は俺のインベントリにしまい、ケインの急な反撃に備える。念の為に、シーラとエリーを庇う立ち位置へと少し移動した。


「うっ」


 少しの間動けなくなっていた竜騎士ケインだが、ヨロリと立ち上がるとボソリと呟いた。


「俺は何をやっていたんだ? ダズー君達と交戦する必要があったのか?」


 ふらふらしつつも頭を振って、なにやらおかしな事を呟く竜騎士ケイン。

  

「俺は正気に戻った! ダズー君、そして君たち。突然攻撃してすまなかった!」


 そう言って勢いよく頭を下げる竜騎士ケイン。


「なにやら俺の思考回路は途中からおかしくなっていたようだ。すまんが俺が聖竜王の遺児シーラを欲した理由を詳しく聞いてくれないか?」


「なんだったんだ?」


 俺がそう尋ねると、竜騎士ケインは語りだした。


「実はそこにいる飛竜のローゼは……」


 再びぼーっとした顔をして間があく竜騎士ケイン。


『ルイ! ミーニャ! におうで! 早くそいつを取り押さえろ!』


 破邪の剣はっつぁん!?


 竜騎士ケインが突然ダズーの方に向かって突進すると、ダズーを突き飛ばし、その後ろにいた時魔道士アルファを抱えてザックから飛び降りた!


 馬鹿な!


 飛び降りた竜騎士ケインと時魔道士アルファを飛竜がなんなく拾い、空の彼方へと突き進む。


「アルファ!」


「ダズ〜!」


 地面に落下しなかったのは良いが、まんまとアルファをさらわれてしまった!?


 いつの間にか『黒い翼』の旗艦も姿が見えなくなっている! 


 

  



 

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