第125話 黒い翼
「ご苦労だったダズー君。悪いが状況が変わった。シーラを渡してもらおうか」
戦略飛空艇師団『黒い翼』の団長ケインがとんでもない事を言ってきやがった。
「え!? ケインさん何を言ってるの?」
ダズーが戸惑いながら問い返した。
「そこにいる幼女が聖竜王の遺児シーラなのだろう? 魔導無線機で盗聴している時に、シーラという名前を聞いた瞬間に気付いたぞ。帝国将校の間で特別指名手配されているあのシーラだとな」
「だから何を言っているんだよ!? レジスタンスに入ってくれる話はどうなったんだよ、ケインさん!」
「レジスタンスにはいずれ入ろう。だがその前に、黒髪黒目の女、お前がシーラを強奪した
『黒い翼』の団長ケインが四つのオレンジ色のボールを取り出して見せつけてきた!
ドラゴン
それは神鳥を復活させるために必要な七色の
伝説の竜に七つのドラゴン
俺もゲーム『ファンサ5』の初回プレイ時に偽の情報が多すぎて、本物の
どこぞの教会が神鳥の伝説にあやかって、本物の
本物は、七つの色だが、レプリカの方はオレンジ一色で、中に漢字で一から七までの数字が書いてあり、消費すると対応するステータスが100上がる。これはこれで飛び切り優れたものなのだ。
もちろん集めても願いなど叶わないので、こちらは消費アイテムとして使うべきだ。ステータスアップ素材として俺にくれないかな。
だが、シーラの事となれば俺も黙ってはいられない、カインに聞いておかなければ。
「ドラゴンオーブを集めて何をする気だ!?」
まさか、ぎゃるのパンティおくれとか言わないよな!?
「我が最愛の恋人ローゼを助けるためだ。俺にとっては帝国よりもレジスタンスよりも、全てにおいて優先させる事だ。シーラを渡せぬとなれば、悪いが実力行使で頂いていくぞ。三分間待ってやろう、その間にどうするか決めるのだな」
カインが飛空艇の砲門に、あえて視線を送りながらタイムリミットをもうけてくる。
脅しているつもりか?
「恋人を助けるためってどういう事だ? 協力できる事もあるかもしれない。詳しく話してくれないか?」
「素性の知れぬ
理由を話してはくれないのか……だがあくまでシーラを寄越せというのなら、三分間待ってもらう必要などない。
「シーラを渡すことはできない」
「そうか、残念だ」
『黒い翼』団長ケインがスッと左手を上げると、俺達を取り囲んでいる『黒い翼』の飛空艇から一斉に砲弾が飛んできた!
イーリアスが聖剣技で、シーラとチョコが魔法で、ミーニャが忍術で、それぞれの遠距離攻撃で砲弾を撃ち落とす!
間を抜けて来た砲弾は俺が叩き落とし、更に
エリーは戦闘開始の少し前から、怪しい空気を察知して『すばやさの歌』の重ねがけをくり返している。
数々の戦闘をくぐり抜けてきた俺達にとっては、砲弾など何の意味もない。しかし困ったな。ゲームではケインと戦略飛空艇師団『黒い翼』は、レジスタンスにとってはとても重要な立ち位置になるんだよな。
完全な敵なら飛空艇を沈めてしまえば良いのだけど……そうすると、ゲームの流れと大きく変わって今後ジョアーク帝国の皇帝コムゲーンを倒すのが難しくなってしまうかもしれない。
「ルイ! 飛空艇を落とすぞ!」
「待ってくれイーリアス! できればお互い無事に戦闘を終結させたい!」
どうする!?
考えろ俺!
あ!
土の大輝石解放イベントで活躍してもらう予定だった『先生』ならなんとかなるか!?
「シーラ! 大先生の出番だ! 先生をお願いしやす」
「わかった! せんせぇ、おねげぇしやす! ティボーンせんせぇ召喚!」
特殊モンスター、ティボーン先生のご登場だ!!
ふぅ〜ん!!
ふぅ〜ん!!
巨大なティボーン先生のものすごく荒い鼻息で、『黒い翼』の飛空艇が大きく揺れる!
そのまま次々に吹き飛ばされて戦線離脱していった!
クシャルト大陸とアラーユ大陸の間にあるウボウフ海峡での、シーラと聖竜王ファーヴニルによるティボーン先生を
ティボーン先生の鼻息の荒さに耐えられたのは、ケイン団長が乗る『黒い翼』の旗艦のみだ。助っ人として一仕事終えたティボーン先生は、再び
鼻息に耐えきった『黒い翼』の旗艦では、ケインが怒り心頭の様子で何か叫んでいる。
『黒い翼』の旗艦から何かが勢いよく飛び立った!
更にケインが船べりでいったん大きくしゃがんだかと思うと、大ジャンプしてきた!
ケインの
まさかこの距離で飛べるのか!?
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本編の補足ですが、ルイの事を泥棒と呼んでいるくだりは、『第69話エリート帝国兵』での無線のやり取りがあったためです。
年末年始の投稿時間は決まった時間ではなくバラバラになると思います。
いつも応援していただき誠にありがとうございます!
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