第127話 ジョアーク帝国へ
飛び降りた竜騎士ケインと時魔道士アルファを乗せた飛竜は空の彼方へと突き進む。
ザックが追いかけるが、全員を乗せたままでは飛竜の方が若干速いか!?
少しずつ差が開いていく!
まずい!
このまま時魔道士アルファを奪われてしまったら、土の大輝石の解放が困難になってしまう!
「シーラ! ティボーン先生を再召喚してくれ! 皆はそっちに乗り移り、飛空艇ミューズ号と合流して後から追いかけてきてくれ! 俺はザックにチョコザサイズの最速形態になってもらってこのまま追いかける!」
「うん! わかった! ティボーンせんせぇ、おねげぇしやす!」
再び召喚されたティボーン先生に乗り移り、ザックに乗り直した俺は、破邪の剣に声を掛ける。
「
『おう! 竜騎士のイヤリングと、飛竜がつけとった首輪は呪いのアイテムやで! 匂いに気付くのがもう少し早ければ良かったんやけどなぁ。儂が祓ったるさかい、連れてけや』
「ああ、頼むぞ!」
すぐさま追いかけようとしたところで、機工士ダズーが待ったをかける。
「ルイさん! アルファを助けに行くのなら、僕も連れて行ってください!」
……万が一逃げ切られた時のことを考えるなら、ジョアーク帝国のレジスタンスのメンバーである、ダズーを連れて行ったほうが向こうで協力をあおげるか!?
「よし! 一緒に行こう! ダズーは俺の前に乗ってくれ!」
「はいっ! 皆さんこれを!」
ダズーが自らのインベントリから魔導無線機を取り出すとエリーに渡した。
「これで離れていても連絡が取れます!」
おっ!
便利だな、ありがたい!
「ルイちゃん、絶対にムリはしちゃダメだからね!」
「ああ、気をつけるよエリー。よし、もう豆粒ほどしか見えなくなっている! 急ぐぞ! ザック頼む!」
「ぴえぇ〜!」
うおぉぉー!
速い!
速い!
速い!
「ルイさん、ザックの本気、凄く速いね!」
「そうだな! 振り落とされないようにしっかりと掴まっててくれよ!」
そう言いながらも、ダズーが落ちない様に俺の片腕を安全バーのようにして後ろから抱きしめる。ダズー君はビクンとして縮こまってしまった。
……俺のは元をたどれば大胸筋なんだから、気にしちゃダメだぞ。
北にあるジョアーク帝国へと近づきながら、竜騎士ケインとさらわれたアルファの乗る飛竜との距離は、ぐんぐんと縮まっていく!
更に加速するザック!
「良いぞザック! 『アイレスランドの祠』の双子の精霊、セイとレイも言っていたが、大空はお前のものだ! 本気を出せる状況なら、お前より速い奴なんていやしないぜ!」
「ぴえぇ!」
得意げに鳴くザック。
風をきり、風と一体化したかのような飛行速度を生み出すザックの勢いは止まらない。
豆粒大だった竜騎士ケイン達の姿はみるみる大きくなってきた。
大陸の陸地が前方に広がり、まもなくジョアーク帝国領に入るかと思われた頃に、ついに飛竜ローゼに乗る竜騎士ケイン達の後方にピタリと張り付いたザックと俺達。
その事を感じ取ったのか、竜騎士ケインは短槍を手に取りアルファに近付けると残酷な一言を告げてきた。
「何もするな、それ以上近付けば女を殺す」
ぐっ!?
「おい! 騎士様ともあろうお方が、か弱い女の子を人質にとって逃げるなんてやっていいのかよ!」
「確かに騎士道に反する行為だが……今はこうしなければいけない……くっ……そう俺に告げている」
くそっ! ゲームクリアのキーパーソンたる、時魔道士アルファを人質に取られたこの状況では手を出せない!
なんとか隙をつくことができれば良いのだが……
俺とダズーがヤキモキしながらもいっこうに状況が好転しないまま、飛竜と不死鳥の飛行は続く。
ついにジョアーク帝国首都リギラウの上空まで来てしまった。
ブォーン! ブォーン! ブォーン!
俺達が帝都の上空に入った途端に、警報が鳴り響き、蜂の巣をつついたかのように帝国兵がわらわらとあふれ出した。
地上にも、そして飛行機能を持つオーパーツ装備に身を固めた航空魔導部隊が上空にも次々に展開していく!
人質を取られて後を追うしかできない俺達が戸惑っている間に、飛竜は一番大きな建物に下降を始めた。
ジョアーク城だ。
後を追う俺たちの前に、次々とオーパーツ装備のエリート帝国兵が押し寄せてくる。
一人一人は俺の実力からすれば大したことがない奴らだが、群れて来られると流石に時間が取られてしまう。
そうこうしている内に、ジョアーク城の発着場に降りた飛竜ローゼ。そしてアルファを人質として連れたまま竜騎士ケインは、建物の中に消えて行った。
「ダズ〜!」
「アルファ〜!」
慌てて追いかけるが、ますますあふれ出したエリート帝国兵の群れに、流石にそれ以上近付くのが難しくなった。
「くそっ! まんまと逃げられてしまった!」
「ルイさん! このままじゃ無理だよ。いったん引き上げよう! 僕に考えがある!」
……今はダズーの言葉に従ったほうが賢明か。
「ザック、すまん。いったん上空に高く飛んでくれ!」
「ぴえっ!」
返事をしたかと思うと、全てを振り切って誰も追ってこれない高さまで、天高く飛ぶザック。
そしてそのままダズーの誘導の元、敵兵の追跡をまいて、帝都の外れから寂れた倉庫へと侵入した。
コンコンコン。
コココンコン。
「合言葉は?」
扉の中からの問いかけに、ダズーが答える。
「ボタンとのばら。ダズーです」
少し間があいた後、ガチャリと扉が開いた。
そのまま中に入るダズーのあとに続き、俺とザックが見張りに目礼をして入っていく。一番奥の部屋に入ると、ゲームで見覚えのある三人の男女が座っていた。
「ルイさん紹介するね、レジスタンスのリーダーのフーリオさんと、弟妹のサリアさん、ガオさん」
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今年一年、本作にお付き合いいただき誠にありがとうございますm(_ _)m
いつも応援していただき、心より感謝申し上げます。来年もよろしくお願いいたします。
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