第102話 火の大輝石 (第三部完結)

 双精霊そうジーンが右腕を掲げ、その内の一本の伸ばした指先に青と赤の光が混じりあっている。指先の光はみるみる内に大きくなり、白くバチバチと輝いていく。


 またさっきのとんでもない、攻撃か!?


 そう何度もくらってたまるか!!


『ホークト流水映心すいえいしん!』


 バシュゥゥーー!


 近距離で打ち出された双精霊そうジーンの指先からの瀕死砲撃は、全てを避けきる事はできなかったが、多少の違和感があるだけで特になんともなかった。


 水映心すいえいしんはレベル80で覚える見切りスキルだ。一度戦ったり、見た相手の技を水鏡に映した影のごとく自分の中に読み取り、完全に見切ることができる。


 たとえ敵の特殊攻撃をその身に受けても、特殊効果は発動しない。敵も味方もだが、スキルって凄い!


「ば、バカな!? 氷と炎どちらも極限まで極めた者のみが扱える究極の攻撃『心ない悪魔マドローミ』が効かないだと!?」


 双精霊そうジーンは驚愕の表情で、一瞬行動が止まるが、再び俺との激しい殴り合いが続く。


 ツーヘッドドラゴンモード程の馬鹿力では無いが、相変わらず防御無視の貫通攻撃なので、くらうとかなり痛い。だが、こちらを気にかける余裕のでてきたらしいシーラとザックから、ダメージを受けると即座に回復魔法が飛んできて援護してくれるようになった。


 

「ルイちゃん! 黒い鎖の魔法陣は全て破壊したよ!」


 よし!


 受け主体から切り替えて、この連撃で決めてみせる!


 オーラパンチの連打だ!


「オラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」


「グゥアチチッ!!」


 俺の左右のオラオラをもろに受けた双精霊そうジーンはふっ飛ぶ事もできずに、その場にガクリとくずおれた。


 カシャーン!


 硬質なガラスが繊細に砕けるような澄んだ音をたてて、双精霊そうジーンが光のエフェクトと共に消えていった。


 今度こそやったか!?


 それぞれの役割を終えたパーティーの皆が集まってきた。また不意打ちを受けるわけにはいかないので、陣形を敷き警戒をとかずに全周囲を監視し続ける。




 

 火の大輝石がひときわ強く輝くと、とても力強い熱のこもった声が心に直接響いてきた。


『光の戦士達よ。良くぞ極熱魔王を倒してくれました。あの魔法陣によって、世界の源の一つたる私の力が吸い取られ、この星に生きる生命は危機に瀕していました』


 火の大輝石からの柔らかな光が祭壇の間の天井を照らすと、なにか白い粉がふわりふわりと舞い落ちてきた。


 そっと左の手のひらで受け止めると、冷たい。


 雪の結晶の一粒だった。


「なごり雪……か」


 雪だるま君……


 はっ!?


 俺は慌ててインベントリから二つ目の『永久氷床のかけら』を取り出して、溶けて消える寸前の雪の結晶に押し付けた。


 雪の結晶が次々に増幅していき、『永久氷床のかけら』を取り込んで、さらに大きくなっていく。


 大きくなった雪は二つの丸い大玉となり、重なった!


 上の雪玉には顔があらわれ、どこからともなくあらわれた青いバケツが頭にかぶさる!


「ただいまなのデス」 


「「「雪だるま君!」」」

 

 皆で口々に喜びの声をあげながら雪だるま君に抱きついた。冷たいよ、雪だるま君。でも心はあたたかい。


 共に戦った雪だるま君の生存が嬉しくて、涙が溢れてくる。


 涙でよく分からないが、泣いているのは俺だけじゃないようだ。良かった、本当に良かった。

 



 

『火の力を宿す、火の大輝石を解放してくれたあなた達の名前を教えてください』


 火の大輝石に問われて俺達は名乗っていく。


「俺はモンクのルイ!」


「吟遊詩人のエリーです」


聖騎士ホーリーナイトイーリアス」


「シーラでっす!」


「ミーニャですにゃ」

 

「ぷぇ〜!」


「ぷぇ!」


「チョコザのチョコとザックね」


『ルイ、エリー、イーリアス、シーラ、ミーニャ、チョコ、ザック。改めて感謝をします。ありがとうございました。そして雪の精霊雪だるまよ、よくぞ身をていして悪しき精霊を打ち破ってくれました』


『しかし、世界の危機はまだ続いています。何者かがこの世界の根源的な力を宿す、残る一つの大輝石を封じその力を吸い取っているのです』


『土の大輝石は世界の中心にある洞窟の奥深くにあり、世界の安定に力を尽していましたが、今はその活動がほとんど止まっています』

 

『火の大輝石は世界のあらゆるエネルギーの源です。あのまま吸い取られ続けていたら、星そのもののエネルギーまで枯れ果てていた事でしょう』


『光の戦士達よ。どうか土の大輝石も救ってください。土の大輝石も重要な役割を担っています。まだ余力が少ない為わずかですが、火の大輝石の力をあなた達に分け与えます』


 燃え盛る炎の様な、熱き輝きが火の大輝石から発せられた。 


『活性と浄化の加護です。この力も使って、どうか世界を崩壊から救ってください』


『雪だるまよ、あなたは一度存在が揺らいだため、精霊として力が不安定になっています。今すぐ雪の精霊の郷で力の回復につとめた方が良いでしょう。転送して差し上げます』


 火の大輝石から発せられた赤い光が雪だるまを包む。 


「さよならなのだ」


 雪だるまの姿が不意にかき消えた。


 ……雪だるま君、語尾、間違えてるよ……

 

 


『あなた達が出た後に祭壇の間に守護結界をはり直し、力の回復をはかります。光の戦士の道行きに幸あらん事を』


 光がやみ、火の大輝石からの声も聴こえなくなった。どうやら話は終わったようだ。

  

 あまりぐずぐずしていると、帰り道を考えたら適応桃の効果時間も怪しくなる。ソーア大火山のお宝のメイン『火神の胸当て』を宝箱から忘れずに回収したら、急いでビーダッシュで帰ろう。




 飛空艇ミューズ号に乗り込みながら次の進路を考える。 

  

 ソーア大火山での戦いでレベルが上がり、もう少しでミーニャのレベルがカンストするから、転職も考えないといけないな。シーフの組み合わせ先は良いのが色々あるが、一番良いのはやはりかな。仲間の育成って、自分の時より心が躍るよな。今から楽しみだ。


 せっかく和風文化の火の国にいるので、神社に戦勝祈願してからレベルカンストと転職の旅に出るとしよう。


 


 『第三部 美少女モンクと死天王』


  ―――― 完 ――――




 ―――――――――――――――――――――――――――――

 


 以上で第三部『美少女モンクと死天王』は終わりになります。死天王も残すは後一人のみとなりました。海月魔王戦、極熱魔王戦はいかがでしたでしょうか?


 今後の予定としましては、人物紹介や間話を挟んでから、第四部『美少女モンクと大魔王』を投稿開始します。


 本作もカクヨムコンテスト10に参加致します!


 そこで読者の皆様にお願いがあります。

 

 カクヨムコンは一次選考として読者選考がありますので、ここまで共に拙作を盛り上げていただいた皆様に応援していただけたらと願っております。


 具体的には星☆の評価と作品フォローが重要になってきますので、まだ評価をいただけていないお方には、是非評価をいただけましたら大変嬉しく思います。


 第三部まで完読してくださっている皆様のお力で、読者選考突破に導いていただいて、まだ出会っていないより多くの読者様に拙作をお届けできましたら幸いです。 

  

目次のページ

https://kakuyomu.jp/works/16818093077952549761


のレビューから、作品への☆☆☆評価をする事ができますのでよろしくお願いたします。

 

 作品、作者のフォローや、

 応援♡もいただけると本当にうれしいです。


 応援コメントも随時お待ちしております♪

 執筆の励みになりますので、よろしくお願い致します♪    


 第四部は、勇者サイドのお話、ミーニャの転職、死影衆や死天王最強の男とのバトル、皇帝率いる帝国との戦い、あるキャラの・・・、伝説の武器集め、そしてラストバトルとイベント盛り沢山でお届け致します。


 目安にしている10万字だと終わらないので、第四部はおそらく15万字位になると思います。

 

 それでは第四部でまたお会いできる日を楽しみにしております。

  

 いつも応援していただき誠にありがとうございますm(_ _)m  


 最後までお読みいただきありがとうございました! 

  


 

 


 


 

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