第101話 さよならなのだ

 激しい戦闘が続いたが、パーティー全員の火力を集中して、ついに極熱魔王の最後の左竜頭ももげ落ちた。


 ソージーンの体は地響きをたてて倒れ、ピクリともしなくなる。



 

「やったな! みんなお疲れ様!」


「やったね! ついに死天王を三体も倒したよ!」


 言葉にしながら、俺の頭に違和感がよぎる。

 

 なんだ?


 何かがおかしい!?


 慌てて極熱魔王の亡骸なきがらを振り返る。


 しまった!


 まだ戦闘終了を示す、モンスターの消え去る光のエフェクトを見ていない!

 

 未だ消えずに残っていた極熱魔王の胴体の胸部分がガパリと開き、現れた口から極太のブレスが吐き出され、俺達に直撃した!

 

「「ぐああっ!」」

「「きゃあぁぁぁ!」」

「ぎにゃ〜!」

「「ぷぇ〜!」」

「 !!」


 くっ!


 か、体が動かない!


 慌ててステータス画面を念じて見てみると、瀕死状態を示すどす黒い血の色、ブラッドカラーでHPが2(※①)になっている! 行動不能状態だ! これではアイテムで回復する事もできない!


 パーティーメンバー全員が、誰一人動けていないようだ。


 まさかこれは、ラスボス、デスジードがラストバトル開幕と同時に使ってくる、強制的に瀕死状態にするスキル『心ない悪魔』と同様の攻撃か!?


 まずい!


 このままじゃ……全滅だ。


 


 極熱魔王のもげた首のあたりがウゾウゾとうごめいている。いつトドメの一撃が来るかわからない状況だ。


『いやしの歌』によるオートヒールはまだか!?


 誰も死なせたくない、一刻を争う状況に、ふわりと浮き上がった白い影が一つ。


「あとは頼むのデス」


 雪だるま君が自分の身体の中から『永久氷床えいきゅうひょうしょうのかけら』を取り出した。


「永久氷床!」


 雪だるま君が『永久氷床のかけら』を極熱魔王の体へと投げつける!


「さよならなのデス」


 ピキーーーーーーーーーン。


 決して溶けない氷に覆われた極熱魔王の身体は、その後粉々になり塵と消えた。


 そして雪だるま君の身体も、『永久氷床のかけら』無しではあっという間に溶けて消えてしまった。


 ゆ、雪だるまく〜〜〜ん!!


 


「雪だるま君……」


 いやしの歌によるオートヒールが効いて、行動できるようになると、皆で協力して直ちにアイテムと魔法を使って全員のHPを全快にまで回復させた。


 すすり泣く声が、しんと静まった室内にかすかに響く…… 


  


 ゴポリ


 ゴポゴボコボコ

 

 突然祭壇の間さいだんのまの周囲を流れていたマグマが、宙に浮いて先ほどまで極熱魔王の倒れていた所に流れ込んできた!


 な、なんだ!?


 どうなっているんだ!?


 全てのマグマが一箇所に集まったのちに、赤く輝きマグマが消えると、人間に近い見た目の、手足がありしっぽの生えた、異形の者が立っていた。身体の大きさは170cm位だろうか。右目が青く、左目が赤い。身体も右半分が青黒く、左半分は赤黒い。


「チチチチチ、我は氷炎両極であり、一つのエネルギーの化身双精霊そうジーンなり。まさか再びこの姿になる日が来ようとは。見事なり! だが我は火の大輝石に連なる者! この祭壇の間においては不滅の存在なり!」


「不滅だと!? 雪だるま君が自分を犠牲にしてまで双竜ツーヘッドドラゴンの巨体を滅してくれたというのに……」


「チチチチチ、死ね!」


 双精霊そうジーンの両手から氷と炎が竜のブレスのように次々に打ち出された!


 次々に打ち出された氷と炎をよけきれず、俺達の身体にぶつかるが、ダメージは受けなかった。しっかりと装備の力で氷と炎の属性吸収をしているようだ。


 不滅だなんて言っているが、倒す方法はないのか? 考えろ、よく考えろ俺! 何かギミックはないのか?


 ん!?


 このではって言ってたな?


 本来の祭壇の間との違いといえば……


「みんな! 火の大輝石に絡み付いている黒い鎖の魔法陣を先に破壊してくれ! こいつは俺が引き付けておく!」


「「はい!」」

「おう!」

「わかったにゃ」

「「ぷえっ!」」


 次々に打ち出される氷と炎に構わず、猛烈な勢いで双精霊そうジーンの元に飛び込みオーラパンチの4連撃を叩き込む!


 ドガガガ!


 両腕としっぽも使いガードする双精霊そうジーン

 

「チチチ! 貴様! エネルギー体である我にダメージを与えるとは、どうなっている!?」


 悪いな。


 オーラパンチは霊体であろうがエネルギー体であろうが、ダメージ二倍でぶん殴る事のできるステキスキルなんだよ!!


 猛ラッシュで押し込み双精霊そうジーンの行動を押さえつけている間に、仲間たちが一つ、また一つと黒い鎖を生み出している魔法陣を破壊していく。


「チチチチチ! き、貴様らぁ!」


 動揺しているのか?


 魔法陣狙いは正解のようだな!

 

 双精霊そうジーンが右腕を掲げ、その内の一本の指先に青と赤の光が混じりあっている。指先の光はみるみる内に大きくなり、白くバチバチと輝いていく。


 またさっきのとんでもない、攻撃か!?


 そう何度もくらってたまるか!!


「ホークト流○○○!」


 

  

 ――――――――――――――――――――――――――――



 ※①


 行動不能状態の三種類解説。

 

 HP2=『瀕死』

 時間経過による状態異常『瀕死』の自然回復可能(ゲームではバトル終了後なら行動可能だが、そのまま次のバトルを行うとバトル中は、また行動不能となる)。ポーション等のアイテム、魔法でHPを回復する事で『瀕死』状態を回復可能。 


 HP1=『仮死』

 時間経過では回復不可能(バトル終了後も蘇生しない限りずっと仮死状態のまま)。蘇生アイテムや蘇生魔法で蘇生(=『仮死』状態からの復活)可能。

 

 HP0=『真死』

 数秒後に身体を構成しているマナがほどけ、おおいなる源のマナへと光となって還っていく。

 蘇生不可能。

    


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