第80話 水の勇者

「我が名はケオルグ。ギャマンガエル人の水の勇者ケオルグだ」


 いよっ!

 待ってました!


 彼こそは皇帝コムゲーンとは違い、勇者らしい勇者なのだ。人呼んで最強のカエル。水の大輝石解放イベントの為の最終兵器カエルなのである。


 水の勇者ケオルグを仲間にして海月魔王クラーゲンと闘うのと、ケオルグ無しで闘うのとでは難易度が全く違ってしまう。おそらくこの世界でも人生は一度きり(俺は二度目だけど)。コンテニューはできないので確実に倒せる方を選びたい。


「お前達が風の大輝石に導かれた光の戦士で間違いないか?」 


「そうだね。風の大輝石は俺達が解放した。水の勇者ケオルグ、さっきは助けてくれてありがとう。俺の名前はルイ。パーティーリーダーを務めている」


「エリーです」


「イーリアスだ」


「シーラだよ! カエルさんお友だちになってください!」


「「ぷえ〜!」」


「チョコザのチョコとザックだよ」


「今、水の大輝石は海月魔王クラーゲンの魔の手によって大変な事になっている。風の大輝石を解放したその力を見込んでお前達に頼みがある。俺と一緒に水の大輝石を解放する手助けをしてくれないか? 俺にはどうしてもやり遂げなきゃいけない理由があるんだ」


 ケオルグが共闘を呼びかけてきたので、俺達はパーティーの皆でそれぞれ顔を見合わせると、全員がこくリと頷いた。皆を代表して俺がケオルグに答える。


「水の大輝石がピンチだと言う事は、風の大輝石から聞いている。勇者ケオルグが水の大輝石を解放するというのなら、こちらからも共闘をお願いしたい。もし良かったらケオルグの事情を聞かせてくれないか?」


「そうだな、光の戦士とは情報を共有しておいた方が良いだろう。話せば長くなるのだが……実は俺はつい先日まで200年間冬眠していたのだ。俺は元々は今は亡き水の王国の勇者だった。そして海月魔王クラーゲンは水の王国の一神官にすぎなかったのだ」


「当時の水の王国の末の姫であり、水の巫女でもあったメアリーと俺は恋仲だった。ところが水の巫女メアリーに横恋慕したクラーゲンが強引にメアリーをさらってしまう事件が発生したのだ」


「直ちに俺をリーダーとした捜索隊がクラーゲン討伐に出向いたのだが、あと一歩という所まで追い詰めた時に、クラーゲンが邪神の一部を召喚したのだ。あらかじめ奴がマーキングしておいた水の王国の殆どの民の生命を贄としてな」


「なんて非道な事を……」


 エリーが過去の水の王国の民の事を憂いて涙している。ケオルグの話は続いていく。

 

「クラーゲンは邪神の一部を取り込む事によって強大な魔王へと進化した。だが歴代の水の巫女の中でも水の大輝石との親和性が随一のメアリーと、水の大輝石に認められ水の勇者として覚醒した俺が、辛くもクラーゲンから邪神の一部を追い出し倒す事に成功した」


「しかし、そこで力を使い果たした俺とメアリーに、クラーゲンが襲いかかってきた。そして奇跡が起きた。水の大輝石から光が溢れたかと思うと、水の大輝石の中にメアリーが取り込まれたのだ。魔王といえども、大輝石に危害を加える術は無かった」


「残された俺はクラーゲンを討つべく最後の力を振り絞って攻撃したが、敗れてしまった。そして俺の命を刈り取ろうとクラーゲンが俺にとどめをさしに来た時に、もう一度水の大輝石から光が溢れ、俺の体は遥か遠くの、ここ水の巫女の祠の石室の間へといつの間にか飛ばされていた」


「そして水の大輝石の力で時が来るまで眠る様にうながされ、200年の時が過ぎたという訳だ。眠っている間に水の大輝石が色々な情報を夢という形で教えてくれてな、先ずはいつの間にか俺の手元から消えてしまった聖剣『コンフロント』を取り戻さねばならない」

 

 俺はゲームの知識としてあらかじめ今の話を知ってはいたが、改めて当事者であるケオルグから聞くと、クラーゲンの奴とんでもないな。えげつない事をやってやがる。


「ケオルグの事情はわかった。改めてこちらからも全力で協力しよう。水の巫女メアリーと水の大輝石を必ず助け出そう! 先ずは聖剣を取り戻せば良いんだな?」


「ああ、そうだ。聖剣の気配は最奥の間から感じている。そこまで共に行こう」 


 水の勇者ケオルグが仲間になった!


 


 先程倒した人喰い宝箱が水属性吸収効果のある『スクール水着』をドロップしたので、これはシーラに装備してもらった。


「わーい、水着だ! みんなとはちがうけど、この水着もかわいくていいね!」


 はい、シーラ可愛い!

 可愛いは正義!

 

 この可愛さはいずれ成長したら拝めなくなる幼女限定だから、写真にとって残しておきたいぐらいだ。この世界に写真は無いので、残念だけどしっかりと記憶に焼き付けておこう。

 

 因みにスクール水着もネタ装備枠で、云々かんぬん、以下略。


 制作スタッフよ! ありがとう!



 最奥の間へと向かう途中の隠し部屋で『サンゴの腕輪』を手に入れたので俺が装備した。これも水属性吸収効果があるものだ。


 エリーの目がなんとなく非難めいているけど、俺はカチモン装備を崩すわけにはいかないのでバトルでは水着は着ないよ。


 ……ごめんね。

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