第77話 エリーの家族
「エリー姉ちゃんおかえり!」
村長宅の前では、エリーによく似た美少女と美少年が待っていて、出迎えてくれた。
エリー達がお互いに駆け寄って抱き合っている。
俺達が追いつくと、エリーが二人を紹介してくれた。
「みんな、紹介するね。私の妹のリーナと弟のクリフだよ」
「すげぇ! 聖女パーティーだぁ! エリー姉ちゃん聖女って呼ばれてんだろ? ビーギン村では毎日魔王退治の話で持ちきりだぞ!」
「ちょっとクリフ! 少し落ち着いて、ちゃんと挨拶しなきゃダメよ! 皆さん始めまして。妹のリーナです」
ちょっとだけちっちゃいエリーが、弟君をたしなめて、挨拶してくれた。この娘が妹のリーナちゃんか、エリー三姉弟は皆美形だなぁ。クリフ君は日本のショタ好きには、たまらんであろう美少年だ。アイドルみたいにキラキラしている。
「始めまして、弟のクリフです」
クリフ君の少し頬が紅潮した、はにかんだ笑顔にズキュンと胸を撃ち抜かれる。なにこの子、めっちゃかわいい! やばいな、心まで女体化しちゃいそうだ。くそぅ、のじゃロリ女神め、こんな所に罠を張るとはやってくれるな!
だが断わる!
俺はあくまで女の子が好きなのだ。男には惚れたりしないぞ! 少し落ち着かねば。
「リーナちゃん、クリフ君、始めまして。パーティーリーダーのルイです」
「イーリアスだ。二人共よろしくな」
「カサンドラです。よろしくお願いしますね」
「始めまして! シーラです! わたしとお友だちになってください!」
「「ぷえ〜!」」
「チョコザのチョコとザックだよ」
俺達の挨拶にクリフ君が更にポッとなっている。キッズ笑顔対決は一勝一敗の引き分けかな。
そのまま家の中にも案内されて、エリーのお祖父さんお祖母さんお父さんお母さんを紹介され、互いに挨拶をした。
エリーのお父さんとお母さんは美男美女のカップルだった。仲睦まじそうで羨ましい限りだ。そしてお母さんもお祖母さんも、エリーにそっくりで、その年齢になったらこうなるんだろうな、というのが見て取れた。
エリー……ひょっとしたら俺達は、無駄な努力をしているのかもしれない。いや、俺達は遺伝子に打ち勝つことが出来るかの大勝負をしているのだ!
努力はきっと報われる! 明日も頑張ろう!
エリーの家族は、ハーブと塩気を程よく効かした絶品自家製腸詰めや、脂ののった鳥の丸焼き、採れたてシャキシャキ・パリパリのサラダ等ご馳走を用意してあたたかく俺達を迎えてくれた。
こんなにも美味い腸詰めが世の中にあったなんて! パリッとかじると、封印を解かれた肉汁が口の中で暴れ出す。肉の旨味が舌を溶かしそうだ。絶品料理をつまみに、大人達皆で乾杯しながら呑んだ
エリーのお父さんとお祖母さんに、エリーの子供の時のエピソードを披露してもらったので、お返しに俺達の冒険でのエリーの大活躍を話した。俺たちの歓迎の宴は大層盛り上がり、そのままお言葉に甘えて数日泊めてもらうことになった。
ビーギン村では吟遊詩人エリーによるコンサートが行なわれ、本人から語られる英雄譚に大盛り上がりだった。
エリーはいつの間にかゴライアから勇者パーティーの冒険の様子も聞き出しており、そちらの歌も臨場感たっぷりに歌いあげていた。勇者アイスと騎士ゴライアもこの村の英雄だ。特に『グレン山のはぐれ竜』退治の歌は大人気だった。
「エリー姉ちゃん、この銀色に輝くチョコザがロングブリッジで空を飛んだ神鳥って言われているチョコザなの?」
「ぷぇ?」
クリフ君が目をキラキラさせて聞いてきた。
「そうだよ〜! 私の相棒でチョコって言うんだよ。でもあの時は特殊なスキルで空を滑空したから、本当の意味で飛ぶと言うと少し違うかな。本当に空を飛べるのは、こっちの黒チョコザのザックだよ。ルイちゃんの相棒チョコザなんだよ」
「ぷえ〜!」
「凄いなぁ! 艶がある真っ黒な羽根でかっこいいなぁ。良いなぁ僕も空を飛んでみたい!」
「おっ! やっぱり空の旅は憧れるかい? 男の子だねぇ。一人じゃ危ないからダメだけど、俺が一緒に空へ連れて行ってあげようか?」
「良いの? やったぁ! ルイ姉ちゃん、ありがとう! よろしくね!」
「よし、じゃあザック頼むよ。クリフ君は俺の前に座ってくれ」
ザックに跨がりクリフ君を前に座らせると、右腕で手綱を握り左腕で安全バーよろしくクリフ君をしっかりとロックして、ザックに空へと飛び立ってもらった。
「うわぁ〜! 凄〜い!」
ぐんぐん上昇して人が小さく見えてくる。クリフ君の歓声があがる度にザックもご機嫌で「ぷえっ!」と鳴いた。程よい高さまで上昇すると村から離れて周囲をぐるりと一回りしてから再び村へ着地した。
しばしの遊覧飛行を体験したクリフ君は感動したのか、それとも飛行体験が怖かったのか顔が赤くなっている。
「クリフ君大丈夫? 高く飛びすぎて少し怖かったかな?」
俺が彼の顔を覗き込みながらそう尋ねると、ますます顔を赤くして、「うん、大丈夫」と首を振った。
大丈夫なら良いのだろう。「次は私も!」と、待ち構えていたリーナちゃんがうずうずしていたので、今度はリーナちゃんを前に座らせて遊覧飛行を楽しんだ。
夕食の後、クリフ君に呼ばれて外に散歩に出かけた。
「エリー姉ちゃんから聞いたんだけど、ルイ姉ちゃんはゴライア兄ちゃんに結婚してって言われてるの?」
「ゴライアのやつには言われているけど、俺にその気はないよ」
「そっかぁ、良かった。じゃあ大きくなったら僕が腕輪を贈るから待っててね」
そう言い残して、クリフ君は家へと駆けていった。
腕輪? なんの事だろう?
家に帰った俺はエリーを呼び出して、もう一度外に出ると、「ちょうど良いから付いてきて」と言うエリーの後を付いて行きながら、つい先程あった事を話した。
「あちゃー」という言葉を発しながら、しばらく歩き続けるエリーの後を追っていくと、村外れの少し開けた所に出た。目の前には湖がある。
「ここは星がとても綺麗に見える所なんだよ」
そう言って空を見上げるエリーにつられて上を見ると、確かに満天の星がまたたいている。湖にも反射しており、幻想的でとても綺麗だ。天地の間には俺とエリーしかいない。
「うちの村の風習では、腕輪を贈るっていうのはプロポーズのサインなんだよ」
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