第66話 三つ巴 (主人公視点に戻ります) (ざまぁ回)

「グルゥアアアァァァ!!」


 くしくも、怒れる毒竜ファーヴニルの咆哮が闘いのゴングとなった。

 

 超人魔王となり自分の力に酔いしれているアイスを倒すには、油断している今が最大のチャンスだ! 初手で俺とザックの最高の一撃をくらわせてやるぜ!


「ザック! 流星拳だ!」 


 ピーンとザックと何かが繋がる感覚!


『けり』のモーションで流星のエフェクトを発生させつつ······


「ザック!」


「ぷえっ!」

 

「アルティメットユナイトスキル、燃えろ体内宇宙コスモ発動!」

 

 流星のエフェクトの中にザックが飛び込み、更に俺が飛ぶ鳥へと進化したザックに騎乗する! 真のチョコ座の守護天使セイント☆おねえさんとなった俺達のスピードは音速を越えた!


 パンチの究極連打!


「真・チョコ座スチョコザス流星拳りゅうせいけん!!」


 ドオォーン!!! 


「ウォララララァ!」


 ズガガガガガッッッ!

 

 なんだと! 音速を越えるチョコザス流星拳を全て剣で弾き落としやがった!


「ふぅぅ、焦らせやがって! 今のがお前の奥の手かルイ? 残念だったなぁ、やはり俺はお前を完全に超えたようだ。い〜い気分だ。メカイデカでのお前は、俺達相手にこんな気分だったんだろうなぁ」


「お前みたいに魔王に与えられた力じゃないけどな」


「言ってろ! さあどうする!? もう終わりか!? 俺が畏れたお前の力はこんな物では無いだろう!? もっとお前の力を見せてみろ!」


 突如として、超人魔王アイスに向けて猛毒のブレスが襲いかかってきた!


 毒竜と化したファーヴニルだ!


 おお! アイスに尻尾を切られた恨みで俺と共闘してくれるのか!?


 猛毒のブレスがそのまま横薙ぎに俺にも向かう。


 ちっ、そう上手くはいかないか!?

 

 さっきエリクシルで治してあげたのは俺だよ!?

 テイムされてもいいぐらいだろ!?


 俺は装備の力で毒にはならないから、ブレスの衝撃波さえ耐え凌げば問題ない。アイスも同様のようだ。


 俺とザック対アイス対ファーヴニルの三つ巴の戦い。


 俺の勝利条件は超人魔王アイスをぶん殴って無力化させ、毒竜ファーヴニルの命を守りつつザックと二人で生き残る事。


 チョコザス流星拳が効かなかったからには、かなりシビアな戦いとなるだろう。なんとか突破口をこじ開けねばならない。


 呼吸を整え気を全身に漲らせる。おそらくステータスでは負けているのだろう。少しでも身体を強化して備えなければ、竜の尾をも斬るあの斬撃には耐えられないだろう。


「ザックは空から攻撃して俺の援護をしてくれ!」


「ぷえっ!」っと一鳴きしてザックが空へと舞い上がる。


 俺の拳とアイスの剣が壮絶な撃ち合いを始める。

 

 ドドドド・ドドドド!

 ジャジャジャジャ!


「ハァハッハッハ! 楽しいなぁ! なんだお前の拳の回転率は! 今の俺の剣速について来れるなんてどうなっているんだか! さあ、もっとギアを上げていこうか!?」


 俺はちっとも楽しくねーよ!

 むしろギアを落としてくれよ!


 ドムッ!


 撃ち合って若干の間合いが空いた隙に、アイスへとザックの魔法が炸裂した! 黒魔法の最強魔法と同等の攻撃力を誇るチョコザの固有魔法『チョコザの怒り』だ! 

  

 しかしアイスは平然とその場に立っている。奴の纏う赤黒く変色した鎧が魔法を散らしているように見えた。


 まさか、アイスの武装化アームドとは、魔法が効かないのか!?


「ザック! 他のも使ってみてくれ!」


 先程よりも一段階スピードのあがったアイスの剣撃が俺へと迫る!


 こなくそ! 必死に俺も拳を撃ち出すが、今度は撃ち負けてしまった!


 だが、ザックのチョコメットの小隕石の援護でアイスの追い討ちは防ぐことが出来ている。


 そして、魔法のマナエネルギーだけでなく物理を伴うチョコメットの様な魔法ならば多少はアイスにも効くらしい。今回は大人しく受けるのではなく、小隕石を切り刻んだうえで躱している。


 なるほど。超人魔王アイスに何ができて、何が出来ないか、少しずつ情報収集していくしかないな。


 と、そこで毒竜ファーヴニルの尻尾ぶんまわし攻撃がアイスと俺に飛び込んできた!


 難なく躱しつつ、再度尻尾をぶった斬るアイス。そして斬れた尻尾にエリクシルをかけて回復させる俺。


 ファーヴニルは少し逃げててくれないかな。それか俺にテイムされてくれない?


「なに!?」


 なんだよ!


 アイスにつられて俺もエリー達の方向を見る。遠目にだが、ローザが居ないことが確認できた。という事はカエル化に成功したのか!?


 みんな良くやってくれた!


「ローザは死んではいないようだな、またカエルか。忌々しい。まあ良い、死んでいなければネアがなんとかするだろう。あいつもかなりの実力者の気配を漂わせていたからな。こっちはこっちでもっと楽しもうかルイ!」


 ジャジャジャジャ!


 速い!

 更にギアを上げてきやがった!


 遅れて俺も八連撃パンチを繰り出す!


 ドドドド・ドドドド!


「ぐあっ!」


 今度はかなりこちらが被弾してしまった! カチモンの高い防御力でなければ、すでに今の激突で死んでいたかもしれない!


 と、そこへ空から黒い螺旋がアイスへと豪速で迫る! ザックのチョコリュードライバーだ!


 ギギィィン!


 迎え撃ったアイスの剣撃とザックの高速回転する嘴が鍔迫り合う! 隙あり!


 俺は飛び込んで、がら空きのアイスの腹にオーラパンチをぶち込む!


「オラァ!」


 ドドドド!


 なに! 剣を一瞬で片手持ちに変えて空いた左肘で、殆どがブロックされてしまった! まともに入ったのは一発だけか!?


 深追いはせず飛び退く、俺とザック。


 アイスはすぐさま回復魔法で自身のダメージを全回復させる。


 くっ、この万能勇者め!


 今のはかなりいい感触だと思ったんだがな!


 突然「ぷえ〜〜!!」と戦場一帯に轟く鳴き声が聞こえた! あの声はチョコだ! の合図だな!


 急いでスキル『ためる』を使い、出番に備えてアイスから大きく飛び退き構えを取る。


 チョコのスキル『チョコ・ラ・エービー』が来る!


 勝負は一瞬だ!


 視界がぶれる! きた!


「ホークト流拳盗断けんとうだん


 俺はカウンタースキルの『拳盗断』で突如目の前に現れたの、鋭い貫手を放つ右腕を叩き斬った!


「ぎゃああぁぁぁ!」


 ネアの悲鳴がこだまする!


 実際には俺がチョコとお互いの位置を瞬間移動で入れ替わったのだが。


 チョコの新スキル『チョコ・ラ・エービー(命名俺)』の効果だ。対象者AとBの位置を入れ替えるという奇襲に持って来いのスキルだ。おそらくゲームでは前列後列の瞬時の入れ替えを想定したスキルだったのだろう。しかし、その効果範囲は意外と広かったのだ。


「ルイちゃん!」


 エリーが調合薬『竜の力』を俺に振りかける!

『竜の力』は一時的にレベルを20も上げてくれる、とんでも薬だ。


 いくぜみんな!


 イーリアスが『暗黒』を、エリーが『ドレインチッス』を、そして俺がオーラパンチをネアにぶち込む!


「オラオラオラオラぁ!!」


「アイス・さ・ま」


 カシャーン!


 硬質なガラスが繊細に砕けるような澄んだ音をたてて、ネア=モースジードが光のエフェクトと共に消えていった。 

 


 

  ――――――――――――――――――――――――――――



 あとがき

 

 スペシャルサンクス 【花京院依道】さま

 

『チョコ・ラ・エービー』のスキル名のアイデアは、コメント欄にてカク友さんの花京院さまが呟いてくださった事で生まれました。名前からスキル効果の着想も生まれました。


 本作のコメント欄でもいつもお世話になっております。ありがとうございました♪


 いつも拙作をお読みいただき、応援してくださる皆様、誠にありがとうございます。


 今後ともよろしくお願い致しますm(_ _)m

  

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