第65話 VSネア・ローザ戦② (エリー視点) (ざまぁ回)

 私は次々と調合を続けていきながら戦況を見ていた。


 ローザは力が滾々こんこんと湧き出てきているのか、かなりハイになっていて、奇声を上げながら様々な極大魔法を放ってくる。


 だが、そのほとんどが私達にダメージを与える事が出来ていない事には、まだ気付いていないようだ。


 ネアはイーリアスさんとチョコと戦っているが、あのイーリアスさんをしても、追い込みきれておらず、まだまだ余裕をうかがわせている。まだ様子見しているのだろうか。かなり不気味だ。


 必要な防御系の調合は一通り終わったので、隙を見て反撃だ。『ワームのぬけがら』と『目薬』を調合して······出来た! 『ファストドリンク』!


『ファストドリンク』は効果時間は短いが、時空魔法『ファスト』と同様の効果が得られる。素早さが倍以上になる私達の切り札その一だ。


「ゴライア君これを使って!」


 前衛のゴライア君にローザの魔法の隙を付いてファストドリンクを使用してもらう。


「さっき見せてくれたあのスキルを使って、ローザのアンクレットを狙って!」


「おう!」


 ローザが放った魔法の爆発で都合良く視界が悪くなっている。ゴライア君が猛スピードでローザへと突貫していく!


 私も喉にマナを集中させ、いつでもスキルを発動できるように準備をした。


「『会心率アップ』! 『一点集中』!」


 爆発の煙がはれた所に、ローザへと肉薄したゴライア君のシステム外スキルの『一点集中』が炸裂した!


 状態異常耐性効果のあるアンクレットがどうなったかまでは確認出来ないが、ゴライア君の会心の一撃に賭ける!


「かえるの歌!」


 ボワン!


 やった!!


 アンクレットの破壊に成功し、見事にカエル化したローザをゴライア君が鷲掴みにして戻って来た。


「ゴライア君やったね!」


 ゴライア君から受け取ったローザカエルに思いっきりデコピンをしてやってから、インベントリから取り出した虫かごに閉じ込める。


 後は、ネアだけだ!


「ローザ······せっかくの『疑似超人薬』を飲んでいるのに、何をやっているんですか······このままではアイス様に怒られてしまいますね。ローザは返してもらいますよ」


 ネアがドンッと空中に飛び上がり、私の方に急降下して来た! 長く鋭い爪を束ねた貫手を私に向かって振り降ろす! いけない、避けきれない!


 ドガッ!

  

「そうはさせんぞ、ネア!」


「ゴライア君!」


 ゴライア君が盾で私を庇ってくれた! 危なかった!


「ゴライア······あなた素早さがだいぶ上がっているみたいですね。先程から魔法を使ったわけでもないのに、色々と不思議な事が起こっているのはエリーが何かしているのでしょうか」


 そう言いながら、私を狙って次々と連撃を繰り出してネアが襲い掛かってくる!


 ドガガガッ!


 しかし、ゴライア君が全て受け止めてくれている。ほんの数ヶ月前だけど懐かしい頼もしさだ。だけどゴライア君の盾や全身の鎧がみるみる内にボコボコにされていく。


「エリー、追放する時にお前を庇ってやれなくて悪かったな。だが今は、我が妻の代わりに命をとしてお前を守ろう!」


 今そんな事を言わないでよ······涙が出ちゃうじゃない。


 守られてばかりではいられない。必中で暗闇くらやみ効果がある薬を調合してネアに投げ付ける!


 だが、効果があるようには見えなかった。ひょっとしたらネアはルイちゃんのいう所の、状態異常の効かない『ボス耐性』持ちなのかもしれない。メカイデカでの戦闘の時にネアだけカエル化しなかったのも、そのせいなのかな!?


 ならば切り札その二『ドレインチッス』だ!


『おとめのチッス』と『ワームのぬけがら』を調合して出来るこの『ドレインチッス』は薬師くすし最凶の攻撃手段!


 防御無視の必中で大ダメージを与え、与えたダメージ分のHPを回復できるという、私の念願の優れモノだ!


 この距離なら使える!


 その無駄に大きい化け物じみた胸を吸い取ってやる! くらいなさい!


「ドレインチッス!」


 ヂュッインッ!


「ぎゃあああ!」


 ドレインチッスをくらったネアが、たまらず叫び声を上げて距離を取る。ちらりとネアはアイス君の方を見たが、またこちらに視線を戻す。その目は怒りに燃えていた。


「まさかこの私に一撃でここまでのダメージを与えてくるとは······もう遊びは終わりです。アイス様には怒られてしまうかもしれませんが、全員始末してしまいましょう。『潜影せんえい』!」


 えっ!?


 ネアの身体がドプリと影に沈んで消えてしまった!?


「エリー! 後ろだ」


 私は突然突き飛ばされて、その場を離れる。


 ズガッ!


 イーリアスさんだ! 私を押し退けて、私の背後に現れたネアの攻撃を盾で受け止めてくれたようだ。


「なんとか間に合ったな」


 先程までネアと対峙していた所から、チョコとこちらに駆け付けて来ていたイーリアスさんの仮面越しのくぐもった声が、安心したように伝えてきた。


「おのれ! 邪魔立てを! 全員恐怖に慄いて死になさい! 潜影邪手せんえいじゃしゅ!」


 再びドプリと影に沈んでは死角からの攻撃を連続で繰り出してくるネア。なんとか急所への攻撃は躱しているが、先程調合薬を飲んで物理攻撃力に対し大きく防御力が上がっているにもかかわらず、どんどん私達のダメージは蓄積していく。


 仲間たちでお互いに死角をカバーし合えていてもこれだ。なんと恐ろしい攻撃なのだろう。このままではじり貧だ······ちらりとルイちゃんの方を確認する。遠目にだが、まだ切羽詰まった状況では無さそうだ。


 なんとか次のネアの攻撃を予測して、あのハメ手で倒したい。ゴライア君に庇われながら、『竜の牙』と『ポーション』を調合して、切り札その三の『竜の力』を作り出す。


 そうだ! わざと隙を作れば······


「チョコ! チョコとルイちゃんで! 合図した後三歩離れてを使った後、続けてチョコメットを使って!」


 チョコが「ぷえっ」と頷くと、「ぷえ〜〜!!」と戦場一帯に轟く大音量で鳴いた。


「何をする気か知りませんが、先に死になさい!」


 ニュッと影から現れたネアの一撃がチョコに当たるかと思われた瞬間、チョコの姿が消えた!


 

 


 


  


  

 

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