第64話 VSネア・ローザ戦 (エリー視点)
「アァ〜ハッハッハ! ゴライア、エリーあなた達は愚かですね。その仮面を外せばアイス様が元に戻るとでも!? 無駄ですよ。一度装備したらその仮面は外れません。その仮面はアイス様の魂と融合していますからね。すでにアイス様は超人へと進化を遂げています。不可逆なのですよ」
ネアの嘲笑は私の精神を大きく蝕んだ。アイス君を元の人間に戻すことは本当にできないのだろうか?
一縷の望みをかけて破邪の剣の方を見たが、
いつの間にかネア、ローザ対イーリアスさん、チョコ、私、ゴライア君、そしてアイス君対ルイちゃん、ザックという組み合わせで闘う事が決まってしまった。
「エリー!」
ルイちゃんがスッと近づいてきて、私に耳打ちしてきた。
「プランBを主軸に成り行きで。足りなさそうならあのハメ手を使ってくれ。難しい事はぶっ飛ばした後で考えよう。大丈夫、エリー達ならやれるよ!」
ルイちゃん!
ありがとう! 心の震えが止まったよ!
そうだ。私は何人もの魔王や邪神を倒して数多くの世界を救って来たという
プランBを主軸にだね! 私がこちらでの戦いを勝利に導いて、アイス君を取り戻す! ついでにローザも助けてあげる! ようし! やってやる!
「グルゥアアアァァァ!!」
くしくも、怒れる毒竜ファーヴニルの咆哮が戦闘開始の合図となったようだ。
先ずは無言でアイテム『オーロラカーテン』を使用する。オーロラカーテンは魔法を反射する『リフレクト』の魔法と同じ効果を味方全体に付与するアイテムだ。別名『魔道士殺し』。ただし、効果時間が短いのが玉に瑕だ。
「イーリアスさん! チョコ! プランBです!」
「承知!」 「ぷえっ!」
そして、今のうちにゴライア君から情報を得る。
「ゴライア君! ローザの装備を教えて! 特に状態異常耐性系の装備! あとゴライア君のステータスを見せて!」
「む、ステータスオープン! 見ていいぞ。ローザはアンクレットにカエル、沈黙、毒耐性効果、ブレスレットに麻痺、混乱、魅了耐性効果が有る物を装備しているはずだ」
「了解! うわっなにこれ!? ゴライア君のステータス、システム外スキルのオンパレードなんだけど! 凄い! ナイトのスキルもあと一つでコンプリートなんだね!」
システム外スキルの生える人は、凄くレアで、そういう人のみが第三職業を得る事が出来るって、ルイちゃんが言ってたっけ。いや、その考察は今じゃない! このスキルとこのスキルを適切に使えば······よし!
「ゴライア君は私の護衛で前衛をお願い! イーリアスさんとチョコはネアの牽制!」
「応!」 「ぷえっ!」 『今度は実剣でぶった斬ったる! 儂の純情を弄びよってからに!』
カエルも沈黙も効かないから今優先するのは、これだ! ローザは以前から火、氷、雷の順に魔法を使うのが好きだった。
ローザが詠唱を終え、火系極大魔法ファイザムを撃ってきた! 巨大な業火が私達に迫る!
私達に当たったかと思われた瞬間、『オーロラカーテン』の効果で輝く光の膜を形成し、魔法の業火を跳ね返した!
ローザのファイザムは全てが跳ね返りローザの元へと返っていく!
「えっ!?」
ローザが呆気にとられ、直撃するかと思われたが、魔法との間にネアが飛び込み、羽を広げてその場で豪速でスビンすると、ファイザムの業火は空へと弾かれた。
「まったく、油断しすぎです。おそらくリフレクトでしょう」
あれだけの業火を受けたのに、ネアにダメージはほとんど入っていないようだった。飄々としてローザに小言を言っている。
しかし私は思考を止めず、最善の手を取り続ける。
インベントリから『フェニックスの尾羽』と『毒消し』を取り出して人数分『氷吸収薬』を調合する。
「『調合』! みんなこれを飲んで!」
仲間たちに使用させると、すぐに次の調合へと移る!
「ローザ、『リフレクトにはリフレクトを』ですよ」
ネアがリフレクトの魔法を唱え、ネア自身とローザにも光の膜が形成された。
私は状況を見ながら、その後も『雷吸収薬』、『火吸収薬』と次々に調合していく。
「さぁ、準備が整いました。好きな攻撃魔法を私達自身に使うのです」
ネアの言葉に促され、ローザが極大氷魔法ブリザザムを使う! ローザ達の光の膜に反射した極冷の波が次々とこちらに襲いかかってくる! 一度リフレクトで跳ね返った魔法は二度とリフレクトでは跳ね返らない!
ブリザザムの極冷波が私達に衝突した!
「きゃあ!」
かなりの魔法の威力に、思わず悲鳴が出てしまう。しかし、見た目は派手だが、氷魔法のマナはすべて『氷吸収薬』の効果で吸収され、ダメージはまったく受けずにむしろ私達のHPを回復させてくれている。
この『調合』の効果は初見では、相手には気づかれにくいはずだ。
私は粛々と自分の強みを押し付ける作業を続けていく。
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