閑話  とある吟遊詩人の奮闘記・・・その4 (白紙世界地図画像あり)

 □月✕日

 

 突然、優しい声が私達の心に直接響いてきた。風の大輝石クリスタルが私達の心に語りかけてきているようだった。


 更に大輝石クリスタルからとんでもない事実を聞いてしまった。私が住んでいるこのズイーブト大陸は浮遊大陸だというのだ。言葉通りならこの大地は空に浮いているの!?


 そんな夢物語の様な事が本当にあるのだろうか。



 しかも······残り三つの大輝石もピンチらしい。助けに行きたくても大輝石のある場所は、海の底に、マグマの中に、地の底ですって!?


 それなのに、土の大輝石が力を失えば浮遊大陸は地表へと落下するって。


 そんな事になればビーギン村のお祖父ちゃんお祖母ちゃん、お父さんやお母さん、妹のリーナ弟のクリフ、村の皆や······ううん、それだけじゃない。このズイーブド大陸の人全員だ。全員の生命がなくなるのはわかりきったことだろう。

 

 いったいどうすれば······


  

 風の大輝石から暁の光に似た温かな輝きが発せられ、私の中に入ってくると不思議と焦る気持ちが落ち着いた。


 そうだ、この事を知っているのは私達だけ。それなら私がなんとかするしかない!


 私は独りじゃない。


 頼りになる凄い仲間もいるんだ!


 順番に一つずつ解決していけば、きっとなんとかなるよね!


 

 前もって教えて欲しかった、とルイちゃんに愚痴をこぼすと、私の為を思って黙っててくれたらしい。


 確かにそうだよね。こんな事、人伝に聞いても信じられないし、信じてしまったら怖くて何もできなくなっていたかもしれない。


 ルイちゃんの優しさに感謝しよう。

 


 宿に戻ると食事をして、お風呂の時間になった。ルイちゃんがなかなか上がってこないな、と思っていたら、またもやイーリアスさんとカサンドラさんがお風呂に突撃しに行ってしまった。遅れるわけにはいかない!


 お風呂ではルイちゃんが、湯船に浸かって締まりの無い顔でデヘヘとニヤけながら寝ていた。にやけ顔がなんか可愛い。


 起きたルイちゃんにまじまじと見られると、なんだかとても恥ずかしくなってしまった。意識しすぎなのかもしれない。


  

 □月□日


 朝のトレーニングの最中にある事に気が付いた。ひょっとしたら、ほんの少しだけど成長しているかもしれない!


 昨日の絞り込みによるドレイン効果があったのか、それまでのルイちゃんのゴッドハンドのおかげかはわからないけど······これにチヨコの実の効果が加われば、遂に私の時代がやってくるかもしれない!


 ノジャロ〜リ神様、ルイちゃんを私のもとにつかわしてくださり感謝致します!


 

 

 その後の話し合いで、まずは『飛空艇』を手に入れる事になった。


 飛空艇とは、空を飛ぶ船らしい。


 凄い!


 空を飛べるんだよ!?


 ああ、想像しただけで胸が高鳴る!

 

 あっ! 今一曲降りてきた! 旋律を忘れないようにしなくっちゃ!



 □月<日


 飛空艇に必要な『浮遊石』を取りに来た『レゴムの洞窟』で文字通り死にかけた。

 

 ミラーリングの魔法カウンターマホカゥンタが発動してよかった、とルイちゃんが言っていたけど、本当にそうだ。発動していなかったら死んでいたかもしれないと思うと、今も冷や汗が止まらない。


 ······ルイちゃんもイーリアスさんも装備の力で即死無効だからといって最前線でバンバン即死攻撃を受けていたけど、私だったら体より先に心が恐怖で死ぬかもしれない。


 二人は実にタフな人達だ。本当の英雄とは心がまず違うな、と心底感じた。


 英雄二人に、私は聖女。テヘ。


 肩書だけでも皆と肩を並べられているかな。そうだと良いな。もっと頑張ろう。



 □月>日


 飛空艇に必要な最後のパーツ『古代の歯車』って、あの死霊魔王城の私には全くわからなかった隠し部屋の宝箱から取ったやつだよね。ルイちゃんの空想の世界の体験での情報の力って凄いなって改めて思ったよ。



 飛空艇技師のシュドゥさんがルイちゃんに飛空艇の名前を決めて良いと言ってしまった!


 これはまずい気がする!


 案の定『ゴーイングエリー号』だなんて言い出したよ。すぐさま却下したけど。


 思えばルイちゃんの名付けセンスは出会った時から変······独特だったな。


 パーティー名を決める時だって、始めは『ルイとゆかいな仲間たち』とか言っていたし、即却下したら『エリーを守り隊』なんて言うし。


 ルイちゃんによると、そういうのが『テッパン』? 何だとか。ルイちゃんの元いた世界の人達ってへ······独特な事ばかり言うんだね。


 ザックも危なかったよね。自信満々に『ザコ』なんて名前を付けようとするから、可哀想で見ていられなかったよね、あれは。

 

 そういえば最近では破邪の剣の事を、呼ぶのが長いからって『はっつぁん』って呼び出し始めたんだよね。これもまたへ······独特な呼び名だけど、これについては私も内心では破邪の剣はじのつるぎって呼んでるから人の事は言えないかもしれない。

 

 ルイちゃんによると、『はっつぁん』には『くまさん』って相棒が必要だから、もう一本知性ある武器インテリジェンスウェポンが何処かに落ちていないかな、なんて言っていたけど、痴性ある武器インテリジェンスウェポンは二振りも要らない!


 探さなくて良いからね!!




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 閑話にお付き合いいただきましてありがとうございます。


 第二章『仲間をもとめて』も引き続き応援よろしくお願い致しますm(_ _)m


 まだ何も描き込まれていない世界地図を近況ノートにアップ致しました。


https://kakuyomu.jp/users/okigen/news/16818093082384958736


 丸く囲われているところが、第一章までの舞台である浮遊大陸ズイーブドです。


 これからこの白地図が埋まっていくかと思うと、作者はワクワクです♪皆様の物語世界の想像の一助になれば幸いです。

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