閑話 一方その頃勇者パーティーは・・・その5
エリーとルイのパーティーが死霊魔王を討伐し、その背後には更に大魔王デスジードという存在がいるという事が確認された。
大魔王討伐では遅れは取るまいと心に誓った勇者アイスであったが、死霊魔王城を目指して北へ北へとレベルを上げながら進んで行くという明確な目標を見失う事となってしまった。
「勇者アイス様、死霊魔王は聖女エリー様に討たれましたが、先程お願いしました我が国の危険なダンジョンや、モンスターの制圧依頼は、そのままお願いできますでしょうか」
ヴィクトリア聖国のダンジョン・モンスター担当官が苦い顔をしながら勇者アイスに確認をしてきた。パーティーの前に、国によるクエストをいくつか受諾した件だ。
少し考えた後に勇者アイスは答える。
「その事については一度引き受けた以上任務は完遂しよう。但し、状況が変わった。ヴィクトリア聖国内の四箇所の目標依頼地点までの道中のモンスター討伐はしない」
「もちろん、依頼のみで結構でございます」
「チョコザを四頭俺達パーティーに支給してくれ。依頼のみを達成し、その後一度俺達はエンダーランド王国へと帰る。新たな情報が入った場合は、エンダーランド王国へと連絡を取っておいてくれ」
「かしこまりました。チョコザは選りすぐりのものを今日中に用意させます。依頼の件よろしくお願い致します」
その後、パーティーはお開きとなり、勇者パーティーもその晩は明日からの強行軍に備えて十分に休んだ。
翌日、勇者パーティーの四人は提供してもらった四頭のチョコザの内、三頭にそれぞれ跨り、黒魔道士ローザは勇者アイスの背中にしがみついた。チョコザに乗ったことがないから勇者様の後ろがいい、とのゴリ押しだった。
四人は一斉にヴィクトリア聖国の依頼地である西部へ向けて出発した。
「勇者様、どういう順番で行くんですか?」
ツヤツヤした潤った顔で黒魔道士ローザが尋ねてきた。
「北西の『海鳴りのダンジョン』から行こう。それからは、南に向かって順番に『ダイー草原の大きな牛』討伐、『大森林ダンジョン』制圧、『グレン山のはぐれ竜』討伐してエンダーランド王国入りすれば無駄が少ないだろう」
若干げっそりした顔で勇者アイスは答えた。
「流石勇者様! 目的に合わせた無駄のない選択です!」
勇者大好きの黒魔道士ローザがすぐさまヨイショをする。ローザにとっては本心なのでヨイショではないのだが······
「『ダイー草原の大きな牛』と『グレン山のはぐれ竜』といえば、長年討伐がなされていない有名なモンスターだからな。そいつらと真っ向勝負できるとは、俺の筋肉が喜んでいるぞ!」
「ゴライアは本当にバカ。モンスター相手に真っ向勝負なんてしないし! 怪物牛なんて隙あらばウチの魔法で丸焼きにするに決まってるっしょ!」
ローザがゴライアを馬鹿にしながら、跳ねたチョコザの動きに「きゃっ」と言いつつ勇者アイスに背後からより強く抱きつく。するとその度に豊かな何かがムギュッとなるのだ。
もしエリーがこの光景を見ていたら、あざとい行動に、益々ローザの事が嫌いになっていた事だろう。
「しかし、牛も竜も物凄く高い魔法耐性が有るらしいですよ。それ故に長年討伐を免れているのだとか」
白魔道士ネアが冷静に二人に告げる。
「し、知ってるし。真っ向勝負がバカバカしいって言いたかっただけだし!」
ローザがキレ気味に反発する。
そんなこんなで旅は進み『海鳴りのダンジョン』を攻略し、その後『ダイー草原の大きな牛』とはローザとネアがあらゆる補助魔法を前衛二人にかけまくっての真っ向勝負にて、アイスとゴライアがトドメをさした。
順調にクエストを進行していく勇者アイスパーティーは、その日は規模の大きな街に宿を求めた。久しぶりの高級な宿屋に喜ぶローザ。
「私は少し酒場で情報収集してまいりますので、皆さんはゆっくりしていてください」
ネアがそう言い残して階下の酒場へと降りていった。
「やたっ!」と拳を握り喜ぶローザ。大きな街に辿り着くと、最近はよくネアが単独で数時間、情報収集を行ってくれている。その間は勇者様を独占できるのでローザにとってはいい事尽くめだ。
クエストの旅は順調に進み『大森林ダンジョン』を制圧し、『グレン山のはぐれ竜』を激闘の末に討伐してエンダーランド王国入りする頃には、勇者パーティーの面々のレベルは以下のように上がった。
勇者 ∶アイス ∶レベル45→55
ナイト ∶ゴライア ∶レベル48→58
黒魔道士 ∶ローザ ∶レベル47→57
白魔道士 ∶ネア ∶レベル47→57
エンダーランド王国に入った勇者パーティーは、王都を目指してチョコザを駆ける。
王都の住民に歓迎されながら都入りし、王宮にてエンダーランド国王より歓待された。
「勇者アイスよ、よくぞヴィクトリア聖国との協定を果たして彼の国に平和をもたらしてくれた、国内にあっても同様である。その働きに深く感謝する」
国王直々の謝意に勇者アイスは、満足げである。
「パーティーの面々も勇者を助け、よく頑張ってくれた。ご苦労であった」
勇者パーティーの面々も笑顔だ。
「さて、大魔王の話は予も聞いておる。この大陸の外に魔王軍の新たな本拠地があるようじゃな。隣国モロダジャナ王国で飛空艇の開発が成功したらしい。先方に親書を送り、そなた達勇者パーティーにも飛空艇を融通してもらえるように予からも頼んでおこう」
「「飛空艇!?」」
初めて聞く乗り物の話に驚く勇者アイスパーティーの面々。
「うむ、飛空艇じゃ。なんでもオーパーツより再現した空を飛ぶ船であるそうじゃ。モロダジャナ王国の王都ジョワまでは、船で行くと良い。南にある港から船を出すように取り計らおう」
新たな冒険の予感に勇者アイスは喜びに打ち震えた。
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