第39話 死霊魔王ゴルゴンダ (第一部完結)

 なんとかこの局面を打開する方法はないかと考えながら、再び『けり』を放とうとした瞬間、エリー、チョコと何かが繋がった!


「エリー! チョコ!」


「はい!」「ぷえっ!」

 

「「アルティメットユナイトスキル、『主の翼を』発動!」」

  


 俺は背中を丸めつつ、そのまま橋へと背中から転がり込み、天へと『けり』の流星のエフェクトを発生させた。


 エリーを背に乗せたチョコが俺の足の裏に飛び乗ったタイミングで、チャクラの癒しの生命エネルギーをチョコに分け与えると、倒立の腕の力も利用して天高くチョコザを射出する!


 ぐんぐんと上昇を続けながら、俺のチャクラのエネルギーをチョコヒールに練り込んだチョコが自身の周囲に癒しの複合空間を形成する! 


 天頂へと達したチョコとエリー!


「天空より吹き荒ぶ慈愛の歌をなんじに与えん! 天空愛嵐歌スカイラブタイフーン!」


 エリーの歌に合わせたチョコの「ぷぇ〜」というハーモニーが合わさる事によって、チャクラ、魔法、歌という三つの異なる癒しの力が溶け合った究極のアンデッド浄化の歌が完成した。


 チョコがロングブリッジの上空、天高くをゆっくりと旋回しながら、少しずつ滑空しつつ降りて来る。騎乗しているエリーとチョコからの、滑空中繰り返される慈愛のハーモニーにより、次々と光のエフェクトを発生しながら浄化されていくアンデッド達。


 その光景は、まるで神か天使の降臨かのような壮厳さがあった。




 地面にふわりとチョコが着地した時には、一体のアンデッドも残っていなかった。


 まさに究極のスキルだったな。


「エリー、チョコ、おつかれ! イーリアスとザックもありがとう!」


「「ぷぇ!」」

 

「ルイちゃん! やったね! ゴジョオンの街を守りきれたよ!」


 エリーが涙ぐんで喜んでいる。

 

 ロングブリッジ防衛戦の一番の立役者はやはりエリーだろうな。最初から最後まで大活躍だったし、うん、間違いない。


「私との戦いでも使っていたが、アルティメットスキルとは何なのだ?」


 イーリアスが不思議そうに俺に聞いてきた。

 

「よくわからないけど、なんかピコーン! って閃くんだよ」


「さっぱりわからんな」


 いずれイーリアスとも閃くことがあると嬉しいな。


 推しとのアルティメットスキル······グフフ。

 よだれものですな。


『わしの活躍を忘れとったらあかんで!』


「おお、破邪の剣もお疲れ様! よくやってくれたな!」


『せやろ! 今回吸い取った力で、わしも随分とパワーアップしたんやで!』


「おおー! それは凄いな! 後でじっくりと検証してみよう! 今はそれよりも······もちろん休憩した後でなんだけど、このまま魔王城に突入しないか?」


 俺の問いかけに対して、皆無言だ。あまり乗り気ではないようだ。


「今なら、俺の経験上の予測だが、おそらく魔王城には死霊魔王ゴルゴンダしかいないはずだ。全ての罠も、先に進む為のギミックも解除されていると思う。アンデッドの大軍を一度に放出した事で起こる最大のチャンスなんだよ」 


「むう、敵がゴルゴンダのみというのは、確かにチャンスだな」


「そうかもしれませんね、ルイちゃんの言う通り最大のチャンスなのかも······行きましょう! このチャンスを活かして魔王という禍根を断ち切りましょう!」


「「ぷぇ!」」


 皆で頷き合う。決定だな。


「じゃあまずは休憩しよう。休憩しながら死霊魔王対策のレクチャーをするから、皆よく聞いていてくれよ」


 皆で車座に座り、食べ物や水の補給をする。ステータスやアイテムの確認もして······ではレクチャー開始だ。


「まず死霊魔王ゴルゴンダは魔道士タイプの敵だ。だから前衛がいない状態というのは、奴にとっては致命的だと言える。基本的な作戦は、俺が貼り付いてヘイトを稼ぎ、できるだけ魔法を使わせないように立ち回る。ダメージを与えるのは、主に俺が行う」


「イーリアスは、多分『黒の剣』が効くから、MPを根こそぎ吸い取って、魔法が使えなくなるようにして欲しい。回復手段を持っているかもしれないから、空になったと思っても使い続けてくれ。自分のタイミングで『暗の剣』も使ってもらって大丈夫だ」


「エリーは、さすがにかえるの歌は効かない筈だから、奴自身もアンデッドだし、レクイエムを主に使ってくれ。隙があれば、すばやさの歌も頼む。基本的にはリッチ戦と似たような立ち廻りでいいと思う」

 

「チョコとザックも基本的にはいつも通りだ。戦闘開始からしばらくは、ゴルゴンダの強力な魔法が飛んでくると思うから、チョコはエリーを乗せてとにかく回避に専念して欲しい。ザックもいつも通りサポートを頼む。余裕があれば俺達にもチョコヒールを頼む」

  

「俺とイーリアスは装備のおかげで、魔法を食らっても深刻なことにはならないはずだ。ゴルゴンダもゴースト系のモンスターを召喚してくることが有るから油断はしないように。······と、こんなところかな」


 皆の顔を順番に見てまわると、どの顔も決意に溢れている。


 いざ、敵の本丸に突入だ!





 思った通り魔王城には誰もいない。チョコザに乗って、次から次へと部屋から部屋に駆け回っては宝箱を開けて回る。お宝回収は、どんなに急いでいてもやらなければならないのだ!


 ほら、ここにも隠し部屋があって、レアアイテム入りの宝箱を回収した。


「少しは城のことを知っていた私よりも詳しいなんて、ルイはとんでもないな。まさか前世は泥棒ではあるまいな?」


 俺のお宝回収のあまりの迷いのなさに、イーリアスがあらぬ疑いをかけてくる。

 

「違うよ! 何度も空想の世界でこの城に来たことがあるだけだよ」


 ファンサシリーズの中では伝説のトレジャーハンターと呼ばれてもおかしくない程の宝箱回収率だがな!


 例え他人の家の箪笥たからばこであろうとも、遠慮なく頂戴しているぜ!





 城中をぐるぐるまわって、ついには玉座の間へと辿り着いたが、ここにもゴルゴンダはいない。


 知っていたけどね。


 玉座の背後のイカしたタペストリーをめくり、たいして隠す気のなかった隠し階段で、地下へと進む。





 地下空間の最奥に死霊魔王ゴルゴンダは俺達に背を向けて立っていた。


 そこは整えられた祭壇のようなところだが、空気が邪気によりよどんでいるのがわかる。ゴルゴンダの背後には高さ三メートル程の大輝石クリスタルが空中に浮いており、下半分は輝きを失って黒く変色していた。


 よく見ると大輝石の周囲には魔法陣がびっしりと埋め尽くされており、そこから半透明の黒い鎖のようなものが何本も大輝石へと伸びていた。


 ゴルゴンダは何かを一生懸命やっており、こちらに気付いていないようだった。


 まさかの先制攻撃のチャンス!


 仲間に合図を出した後、静かに『けり』を放ち流星のエフェクトと共に、ゴルゴンダの後頭部へと飛び蹴りをかます。


 ゴシャッ!

 

 戦いのファンファーレだ!


「ヒブッ! と、突然、どこから現れた!? なぜ死んでおらん!? 我が配下はどうしたのだ!?」


 魔王は『こんらん』している。

 

 ようやく俺達に気付いたゴルゴンダに怒涛のラッシュをくれてやる!


 ドドドド・ドドドド!


 追い付いたイーリアスもMP吸収効果のある『黒の剣』でゴルゴンダに斬りつける!


 ザシュ! 


 ドドドド・ドドドド!

 

「おのれ! 離れろ! デスフレア!」


 ゴルゴンダの放つ、状態異常攻撃を内包した、恐るべき大爆発が俺達に降り注いだが、俺とイーリアスには対して効かず、そのまま殴り続ける!


 ドドドド・ドドドド! ザシュ!

 

 ドドドド・ドドドド! ザシュ!

 

 レクイエムの光も飛んできた!


「グッハァ! はぁはぁ、えーい、離れろ! お前達どこかおかしいぞ! 本当に人間か!? デスフレア!」


 魔王は魔法を唱えた。しかし、何事も起きなかった。


「何故、魔法が発動せん!? デスフレア!」


 しかしMPが足りない!

 


 すばやさの歌が効いてきた!


 そろそろトドメだ!

 オーラパンチの四連撃のラッシュだ!


 オラオラオラオラ!

 オラオラオラオラ!

 オラオラオラオラ!

 オラオラオラオラぁ〜!!


「······ま、まさかこの死霊魔王ゴルゴンダがここまで一方的にやられるとは」


 あれ!?


 瀕死みたいだが、まだ倒せなかったか?


 どうやらゲーム的に言うと、名言フェーズに突入したみたいだな。


「だが我を相手に苦戦するようでは、お前達に未来などない!」


 超魔屍鬼には苦戦したけど、ゴルゴンダは軽くボコってるけどね。 

 

「我は大魔王デスジード様の死天王の一人に過ぎん! ファファファ! 絶望したであろう! しかも!」


 しかも?


「我は死天王の中でも最弱!」


 自分で最弱って言っちゃった!


「ファファファ! この残酷な事実に絶望せよ!」


 お前がな。


「大魔王デスジード様に栄光あれ!」


 急に身体が黒く光りだしたので、慌ててトドメの一撃をいれる!


 オーラパンチで光る拳に全力をこめて殴る!


「オラぁ!!!」


 カシャーン! 

 

 硬質なガラスが繊細に砕けるような澄んだ音をたてて、死霊魔王が光のエフェクトと共に消えていった。 

 

 静寂が地下空間に訪れる。


 大輝石の周りの、魔法陣と鎖もいつの間にか死霊魔王と共に消えていた。


「やったな!」


 イーリアスが喜びの声をあげる。


「「ぷぇっ! ぷぇ〜!」」


 チョコザも喜びの舞を踊っている。


「······死霊魔王は、魔王軍のトップでは無かったんですね······ルイちゃんの望みもまだ叶わない」


 エリーは死霊魔王の残した言葉にショックを受けているようだ。


「そうみたいだね。でも、上に死天王や大魔王がいるというのなら、そいつらをぶん殴りに行けば良いだけさ! エリーなら、いや、俺達ならきっと大魔王も倒せるはずだ!」


「······そうだね! よし! やってやるぞぉ!」


 エリーが吠えた。

 闘う聖女様の決意に満ちた顔は美しい。




『光の戦士達よ』


 突然頭に声が響いてきた。


 破邪の剣とはまったく違う、とても優しい声だ。


『良くぞ死霊魔王を倒してくれました。あの魔法陣によって、世界の源の一つたる私の力が吸い取られ、この浮遊大陸、そして世界は危機に瀕していました』


 どうやら大輝石クリスタルから直接俺達の心に声が届いているようだ。


 エリーが驚いた顔で俺を見ている。


 うん、ごめん。知ってた。


 


『風の力を宿す······』


 大輝石クリスタルの話は続いていく······





『第一部 美少女モンクと死霊魔王』


 ――――完――――




――――――――――――――――――――――


 〜あとがき〜


 これにて第一部が終了となります。


 死霊魔王は倒せましたが、ルイは最大の目的である失ったモノをまだ取り戻せておりません。


 必然的に物語はまだまだ続いていきます。


 ここまでお読みくださり、誠にありがとうございます。


 第二部は閑話と人物紹介を挟んでから投稿致します。第二部、第三部のラスボス戦は、奇襲の成功した死霊魔王戦とは一味違い、マジバトルで熱い闘いとなっております。(お笑い要素もあり)


 引き続き、応援していただけますと、嬉しく思います。

 

「面白かった!」

「続きが気になる!」

「今後どうなるのっ・・・!」


 と思っていただけましたら


目次のページ

https://kakuyomu.jp/works/16818093077952549761


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 面白かったら星3つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちで、もちろんOKです!

 

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 執筆の励みになりますので、よろしくお願い致します♪    

 

 それでは、閑話や第二部でまたお会いしましょう。


 最後までお読みくださりありがとうございました!

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