第26話 ○○大会開始!?

「チョコ、ザック、レベリングは必要無いから、移動だけに集中してでナイヤチ村まで戻りたいんだけど、頼めるか?」


「ぷえ? ぷぇ〜!!」


 二頭のチョコザの顔が「え? いいの?」みたいな表情になり、更に、にやりとしたような気がした。


 野生のチョコザの本気走り。


 俺は少し甘く見積もっていたのかもしれない。





「きゃぁ~あああああ〜〜〜〜!!!」

「ひゃあ〜〜〜わわっ! わわわわ!」

 

 さっきからエリーの悲鳴がずっと続いている。



 今まで俺達が、チョコザに乗って移動していた時のスピードが安全運転モードだとしたら、今回の本気走りのスピード、コーナーリング、ジャンプは暴走族モードと名付けるのが相応しいだろう。


 走り初めて3時間位経ったか? 先程あっという間にアララット山を下山し終えたところだ。


 その間、常にジェットコースターに乗っているような状態だったのだ。


 お! 水場を発見!


「この先の水場で休憩にしよう!」



 

 ガブガブと水を飲むチョコとザック。

 

 飲み終わると、水浴びをしている。これはいつもの事だな。熱くなった身体を冷ましているのかもしれない。

 

「エリー、大丈夫?」


「だ、だだ大丈夫」


 俺は少し楽しくなってきたところだけど、体力おばけの俺を基準にしたら駄目だよな。


「無理しないで。 チョコに言って少しスピードを落としてもらおうか」


「山道が終わったから、なんとかなると思うよ。駄目だったらチョコに言うね」


 そんなこんなで、チョコザの最高速にも少しずつ慣れてくいくエリー。


 うちのエリーは逞しいね。 


 さすがに暴走族モードで散々走って、夜も野宿するのはきつかったので、宿屋が有りそうな村や町でちゃんと寝ることにした。




 

 これを繰り返す事、はや五日。

 

 あっという間にエンダーランド王国入りした俺達は、今日はメカイデカの街に泊まることにした。

 

 せっかくだから、誰か知り合いがいるかと、冒険者ギルドに顔を出すことにして、ギルドの扉をギギィっと押し開いた。中に入ろうとすると、先客の酔っ払い達の幾人かと目が合い、どっとギルド内がわいた。


「うおぉ! ルイちゃん、エリーちゃんおかえりー!」


「エリーちゃん聖女就任おめでとう!」


「ルイちゃんリッチ討伐すごすぎるぞぉ!」


「エリーちゃん、聖国での冒険譚を歌ってくれぇぇぇ!」


 なんだなんだ!?

 

 先日の、ヴィクトリア聖国でのリッチ討伐と聖女就任の話は、もう国境を越えて伝わっているのか?


「おお! 我が妻ルイよ! 探したぞ! さあ、まずは肉体美を競い合おうではないか! その後はレスリングにて雌雄を決しようぞ!」


 うわっ!?


 なんか変な奴がまじってる!!


 誰がいつ、お前の妻になったんだ!?


 肉体美を競い合うって、一体何をする気なんだ!?


 雌雄しゆうを決するレスリングって大人が夜にやるやつか!? それだとお前がムキムキのオスなのは分かりきってるんだから、俺がメスにされちゃうじゃないか!!


 絶対にお断りだ!!!


 

「ふおぉぉぉぉ! 脱衣クロスあうッ!


 一瞬でブーメランパンツ一丁になった変態無仮面ゴライア

 

 ギルド内があまりの出来事に静まり返っているぞ!


 ゴライアが、前世でいうところのボディビルダーのようにポージングをとり始めた!


 リラックスポーズからの〜ダブルバイセップス!!


 おおっ! キレてる!


 ラットスプレッドからのぉ〜サイドチェスト!!


 し、仕上がってるねぇ!

 

 筋トレが趣味の俺としては、茶髪のイケメンマッチョのポージングは中々見応えがあるぞ!


 見るだけならな! 


 でも前世の感覚からすると、その筋肉の鍛え具合はちょっと羨ましいぐらいだ。肉体美を競い合うってそういう事なのね······じゃあ次は俺の番か!?


 俺だって脱いだら凄いんだぜ!?


 腹筋がくっきりと出るような、ボディビルダータイプの筋肉の付き方ではないが、見た目の可愛らしさを全く損なわないのに、中にはみっしりと筋肉が詰まっている。この素晴らしいバランスがに理解できるかな? 

 


「ふざけるな!!」


 勇者アイスの大声がギルド中に響いた。


 

 あっぶね。


 チャイナドレスのボタンに、手が伸びかけていたところだった。


 そうだぞ! この変態め! あやうくつられてしまって、俺もやり始めるところだったじゃないか!


「む、アイスよ、俺はふざけてなどおらんぞ。こうやってルイに、求愛しておるのだ! よく見てみろ。あの顔は、満更でもない表情をしておるぞ!」


 し、してねーし! 


 俺はお前の筋肉は確かに凄いと思っているけど、エリーの事を追放しやがったお前ら四人の事は大嫌いだし!


 か、勘違いしないでよね!!


 

「ゴライア、お前じゃない。お前は好きなようにやって、早いところ脳筋仲間をうちに引っ張ってこい! 俺が言っているのはエリーだ!」


 俺の隣にいるエリーは、急に勇者アイスに名前を出されてビクッとしてしまっている。


 今度はなんなんだ?


「エリー! 随分とふざけたまねをしてくれたな! 俺達のパーティーにいた時には、あからさまな手抜きをして、俺達に余計な苦労を押し付けやがって! そのくせ、俺達のパーティーから勝手に出て行ってからは、救世主に、英雄に、聖女だと!?」


 はあ!?


「なぜ幼馴染である俺のパーティーにいる間に、本気を出して活躍しなかった! ふざけたまねをしやがって! だがまあいい! 俺は寛大だからな。今なら心を込めて謝れば許してやるから、今すぐにルイを説得して俺の所に戻ってこい!」


 はあ???


 チョット、ナニイッテルカ、ワカンナイ。



 勇者アイスがエリーの前にずかずかと近寄って来たので、エリーを下がらせ、代わりに俺がエリーの前に移動して勇者アイスの視線から庇う。今すぐにこの頭のおかしな勘違い野郎に、ひとこと言っておかなければ!


「ふざけているのはお前のほうだ! エリーはお前達のパーティーから役立たずだって追放されたんだろうが!」




 ――――――――――――――――――――――――――――



 明日、日曜日は午後の更新となります。

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