第25話 破邪の剣
ぬ、抜けた!
台座ごと!
こ、これじゃあ鈍器にしかならない!
「る、ルイちゃんの力がおかしい······」
突然の鈍器出現に、エリーも
仕方ないな、正規のルートで行くか。インベントリから『聖魔石』を取り出すと、はめてくださいと言わんばかりの『破邪の剣』の柄頭のくぼみにはめ込んだ。
すると『破邪の剣』の
これで大丈夫なはず。
「エリー、試しにエリーも抜いてみたら?」
「ルイちゃんでも抜けなかったのに、私に抜けるとは思えないんだけど······」
エリーは、そう言いながら剣の柄に手をかけると、するりと破邪の剣を引き抜いた。
「え!?」
「おー!! さすがは聖女エリーだね!」
······なんてな。
『聖魔石』をはめるというギミックで破邪の剣は抜けるようになるのだ。そしてこの破邪の剣のアイテムのフレーバーテキストには
『破邪の剣』
聖と魔、二つの力をエネルギー源として、あらゆる呪いを一太刀にて斬り捨てる伝説の騎士剣。
突然、俺の頭に声が響き渡る。
エリーも驚いているところをみると、俺達二人に聞こえているみたいだ。
『ふあー! 良く寝た! おっ! 今度の所有者は、かわいこちゃんか。 やったぜ! 欲を言えばボン・キュッ・ボンの方が良かったんやけどなあ〜!』
エリーが掴んでいた破邪の剣をポイッと投げ捨てた。
「なんですかこの剣は! 私、二度とこんな剣触りません!」
破邪の剣、ファーストコンタクト失敗である。
エリーに見放されてしまった。
やれやれ。ゲームだとただひと言、インテリジェンスウェポンとだけ書いてあったけれど、中身はセクハラおやじだったみたいだな。
代わりに俺が破邪の剣を拾い上げて話しかける。
「残念だけど、俺もエリーも騎士剣は装備できない。お前を装備するやつは多分男だ」
『そ、そんな! 殺生な! て、転職! お嬢ちゃん、転職しいや! お嬢ちゃんなら合格や!』
「残念ながら、騎士に転職する予定はない。もうしばらくはインベントリの中で寝てるんだな」
『ま、またんかい! わしはこう見えて博識なんやで! 道中しっかりとわしを握っとってくれたら、色んな事を教えてやるさかい、インベントリはあかん!』
「使いもしない騎士剣を握りしめてどうしろって言うんだ? じゃあな、おやすみ」
『ま!······』
そう言って破邪の剣をインベントリに収納した。
ふー、騒がしいやつだったな。
こいつの主になる予定のイーリアスは大変だな。
「喋る剣なんてあるんだね。びっくりしたよ!」
エリーがたった今の出来事を
「そうだね、俺もびっくりしたよ」
俺がびっくりしたのは、剣の中身がセクハラおやじだった事だけどな。
ん!? ひょっとしたら俺も人の事は言えないのかもしれない······
俺なんか、もろに揉んでいるんだが良いのだろうか? きっと、暴言をはくようなことが有れば、俺も幻滅されるんだろうな。言葉には気を付けよう。
「さっきの剣が破邪の剣なんだよね? あんな剣で本当に魔王の呪いを解くことができるの?」
エリーが不安になるような事を聞いてくる。
うーん、本物のはずだから呪いを断ち切れると思うんだけど、一応本人に確認してみるか。
「多分大丈夫だと思うんだけど、心配なら本人に聞いてみようか」
インベントリから破邪の剣を取り出した。
『ぷはぁ~! インベントリはあかんって言ったやろ!』
「しょうがないじゃないか、俺達は装備が出来ないんだから。そんなことよりも、破邪の剣は本物だよな? ちゃんと呪いを断ち切る事ができるか?」
『おう! まかしとけ! 呪いを切ることは朝飯前や! 何ならそれがわしのメシになるんやで!』
「そうか、わかったありがとう。じゃあまた後でな」
『ま!······』
素早くインベントリへと収納した。こいつに喋らせてエリーの機嫌が悪くなると困るからな。
「本物みたいだね。呪いを断ち切るのは朝飯前だってさ」
「そうだね。それなら良かったよ」
他にも何かないかと、台座をあさると、破邪の剣が刺さっていた更に下から小さなミニチュアサイズの木の舟が出てきた。
『ドアの箱舟』を手に入れた!
よし!
レアアイテムゲットだぜ!
『ドアの箱舟』をうまく使えば、モンクの強さを更にもう一段階引き上げることができる。
「チョコ、ザック、レベリングは必要無いから、移動だけに集中して
「ぷえ? ぷぇ〜!!」
二頭のチョコザの顔が「え? いいの?」みたいな表情になり、更に、にやりとしたような気がした。
野生のチョコザの本気走り。
甘く見ていた俺は、この後少し後悔する事となった。
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アララット山、麓到着時点からワイバーンキング討伐後のルイパーティーのレベルです。
モンク ∶ルイ ∶レベル49→61
吟遊詩人 ∶エリー ∶レベル49→61
チョコザ ∶チョコ ∶レベル38→53
チョコザ ∶ザック ∶レベル38→53
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