第21話 常人エリー
教皇聖下との謁見の後で
今日の内に今後もパーティー活動をするうえで、大事な話をしないといけないしな。この話をしたらひょっとしたらエリーは嫌がるかもしれないけど、避けては通れない。
「エリー、大事な話があるんだけどちょっといいかな?」
「大事な話? なんですか?」
「今日貰った、『金の髪飾り』と『白金の髪飾り』はもの凄くレアなアイテムなんだ。おそらく『白金の髪飾り』の方は世界に二つとない代物だ。あったとしても、せいぜい後一つだろう」
「えー!? そんなに凄い物をいただいたんですか!?」
「『金の髪飾り』は魔法防御力が高く、更にスキル発動時のMPの消費量が通常時の半分になる。『白金の髪飾り』は魔法防御力が高く、更にスキル発動時のMPの消費量が1になる」
「······もの凄い性能ですね」
「そうなんだよ。それでね、この二つはエリーと俺にお揃いで一つずつって事でくれたんだと思うんだ。デザインも同じだし」
「そうだね」
「でも、俺達のスキル発動時の消費MPは、元々少ない。このアイテムは、MPをバカ食いして強力な魔法を使う魔法職が装備することで、真価を発揮するんだ。だからこの二つは、個人の物という事じゃなくて、パーティーの持ち物という事にしてくれないかな?」
俺がそう提案すると、エリーは少し考えた後で了承してくれた。
「わかりました。そういう事なら、パーティーの持ち物という事にしましょう。ルイちゃんの言う事はもっともだし」
「ありがとう。ごめんね、エリーから取り上げる形になっちゃて」
「ううん、平気だよ。ルイちゃんが私の事を大事にしてくれてるのは伝わってるから。あっ! でも最初に一回だけでいいから、今だけはお揃いでつけてみようよ! 私が金の髪飾りでルイちゃんが白金の髪飾りね!」
「そうだね。じゃあつけてみようか! 俺は今装備しているこのチャイナリボンの方が、ジョブに合っているから後で元に戻すけど、エリーは魔法職がパーティーに二人増えるまで、その金の髪飾りをつけてた方が良いよ。防御力も高いから」
「じゃあ、それまでは付けていようかな。せっかく貰ったしね」
そう話い合いながら、お互いに髪飾りを付けてあげる。
「わぁー、ルイちゃんは何をやっても似合うね。おろした髪に白金の髪飾りが映えてお人形さんみたい! すっごく可愛い! つやつやの黒髪の触り心地もするするしてて凄く良いし······うんこれは良い。こうしていると守ってあげたくなる感じの、可愛い女の子だね」
「エリーの水色の髪に金の髪飾りがプラスされると、凄く大人の色気を感じるね。めちゃくちゃ似合ってるよ! どこかの国のお姫様だって言われたら、みんな信じると思うよ。あ、もう本物の聖女様か」
「ふふっ、ありがとうルイちゃん。ルイちゃんに褒められると凄く嬉しいよ。······聖女かぁ」
エリーの長いまつ毛が少し震えている。褒め方を失敗したかな。
「ごめん、嫌だった? からかっているわけじゃないんだよ? むしろ凄いなぁって。同じパーティーの人間として、エリーが大勢の人に認められて、尊敬されているのは凄く誇らしい気持ちなんだよ」
「大丈夫、嫌ではないんだよ。でも私にそんなだいそれた二つ名に相応しいことが出来るとは思えなくて······アイス君と旅立ったばかりの頃にね、サーンヒ村っていう村がモンスターの襲撃をうけている所に遭遇したことがあるんだよ」
「そうなんだ」
「急いで村に駆け付けて、皆も私も力の限り奮闘したけど、間に合わなくて守りきれずに、村人に死者がでてしまったの。まだ小さな五歳ぐらいの男の子とそのお母さんだった。今でも夢に見るし、その度に自分の力不足を感じるんだよ」
エリーの涼やかな切れ長の目から、ぽろりと涙が零れ落ちてきた。初めて聞いたエリーの後悔の話だ。ずっと悩んでいたのだろう。慰めてあげたくて俺はエリーをぎゅっと抱きしめた。
「エリー、人間の手の届く範囲には限界があるんだ。全てを救う事が出来るなんていうのは、それこそ神の御業以外にはないんだよ。だからね、間に合わなかったり、力不足だった事を必要以上に気に病む事はないんだよ」
「うん······でもね、ジャイアントタートルと戦った時も、リッチと戦った時も、いつもルイちゃんはたった一人で、恐ろしいモンスターを目の前にしながら戦っているじゃない? そんなルイちゃんを見ていると、私はやっぱり力不足だなぁと思えてしまって」
「俺が前衛のジョブだから前に出ているだけだよ。エリーもしっかりとリッチのキルゾーンに入っていたんだからね。それにあの戦いはエリーが次々と召喚されるアンデッド達を即退治してくれていなかったら、リッチに集中できなくて、俺はやられていたかもしれない。二人だから倒せたんだよ」
「そうなのかな······」
「そうだよ。それに聖都でのゴースト戦は、俺は何もする暇がなかった。エリーが大司教様と共にあの大量のゴーストをやっつけて聖都の民を護ったんだ。だからこそエリーは聖女に相応しいと皆が思っているんだよ」
「うん······」
まだ納得できないのかな? 相当な活躍をしているのに自分じゃわからないものなのかな? 勇者パーティーで評価されていなかったのが、尾を引いているみたいだ。俺は自分のステータスを開示しながらエリーに問いかける。
「エリー、ステータスを見せてくれる?」
「どうぞ?」
「ここを見て。俺とエリーのレベルは二人共46だ」
「そうだね」
「初めてエリーにあった時は、俺のレベルが24でエリーは11だった。エリーを仲間に誘う時、レベルが低い間は俺が護るとも言った」
「そうだったね」
「途中からは足手まといどころか、エリーがいないと不安になる位になるとも言った。今エリーは、俺にとってまさにそういう存在だよ。一方的に俺が護ってあげるような相手じゃないんだ。レベルでも俺に追いついて、共に並び立つ頼りになる相棒だ」
「······」
「それでも不安なら、これからも一緒にもっと強くなって力を付けていこう! そうすれば手が届く範囲はもっと広くなってより多くの人を助ける事が出来る!」
「ありがとう、ルイちゃん······」
震えるエリーをもう一度抱きしめてあげて、震えが止まるまでそのままでいた。
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