第22話 熱い想い

 聖都セイダードで一夜を過ごした俺達は、『破邪の剣』の情報を元に、東のアララット山を目指す。


 出発前の大司教との挨拶の時に、エリーは大司教との別れを惜しみ涙し、俺はアルティメットユニゾンスキルの情報を根掘り葉掘り聞いた。


 街で物資の買い出しを終えると、チョコザに跨り、いよいよ出発だ。チョコザの脚でも、おそらく10日以上はかかるだろう。途中でチョコとザックのレベリングもしたいからな。


「よし、行こう! 出発だ! ザック、東へ頼む!」





 チョコザでの旅は以前と同じように、早めに野営スポットを見付け、その周辺のモンスターを安全とレベリングの為に狩るというスタイルで行くことにした。


 その日の夜はエリーも落ち着いていたので、アルティメットユニゾンスキルについて聞くことにした。


「エリー、大司教様にも聞いたけど、アルティメットユニゾンスキルを発動する条件って何かわかる?」


「えーっと、感覚的なことしかわからないんだけど······大司教様とレクイエムの効果を高める為に、何度も二人で練習をしたり、詩や曲の考察をしていたんだよね。そうしたら馬車の旅の最後の日に、闇夜に急にポッと火が灯る様な感覚で急に出来る様な気がしたんだよ」 


「ほうほう、大司教様も似たような事を言っていたね。急に閃く感じなのかな」


「そうなの。大司教様も全く同じタイミングで閃いたみたいで、二人で顔を見合わせて今のはなんだ!? ってなったんだよね。でもアルティメットユニゾンスキルができるのは確信的な感じだったよ」


 ゲーム的な表現をすると、特定のスキルについて、熟練度を上げる事、そして複数人で何かのきっかけを作ることにより、電球に光がピカッと灯るように技を閃くと言うことかな······他にも何か要因が有るのかな?


 その対象者同士の親密度とか?

 

 エリーと大司教は接している期間こそ短かったが、かなり師弟の仲が良さそうだったしな。推測の域を出ないから、色々と検証していくしかないだろうな。楽しみが増えたとも言えるな。


「そう言えばルイちゃん『破邪の剣』ってなんなの?」


「ああ、まだ説明してなかったね。全ての呪いを断ち切るという『破邪の剣』という剣があるんだよ。それを使ってある人にかけられた魔王の呪いを断ち切りたいんだ」


「へー、ひょっとしたらルイちゃんの大事な人?」


「うーん、俺のっていうよりかは、今後仲間に加えたいと思ってる、凄腕の騎士の大事な人だね。その人のお母さんが魔王の呪いで石に変えられちゃっているから、その呪いを解いてあげたいんだよね」


「仲間に加えたい人······女の子?」


「えー? 男だと思うけど、そう言われてみればどっちなのかな? いつもフルヘルムの兜を被っているから、はっきりとはわからなかったな。前に空想の世界で何度も魔王討伐を繰り返したって話をしたことがあったと思うんだけど、覚えてる?」


「覚えてるよ」


「実はそいつは、魔王軍に協力したらお母さんの呪いを解いてやるっていう条件のもとで魔王軍の門番みたいな事をしていてね。最初は敵対してたんだけど、何度も戦う内に強敵ともとも強敵ライバルとも呼べる関係になったんだよね」


「へー」


「最後には俺達まとめて魔王の罠にかかってしまって異次元に飛ばされたんだけど、そこから脱出する時に、異次元のボスを倒す為に自ら自爆して俺を助けてくれたんだ。一度目の魔王討伐では共闘したのはそれきりなんだけど、とにかく熱い想いのするやつだったから、二度目以降はどうしても仲間にしたくって」


「凄い人なんだね」


「そうなんだよ。だから原因であるお母さんの魔王の呪いを解いてあげることが絶対条件なんだ。そいつは自分でも破邪の剣の噂だけは知っていて、門番みたいな事をしながら一縷いちるの望みをかけて、刀狩りをしてたね」


「刀狩り······」


「そうなんだよ。初めは、剣をコレクションするのが趣味なやつなのかと思っていたんだけど、理由はちゃんとあったんだ。そしてそいつはめちゃくちゃ強い。はっきり言って死霊魔王ゴルゴンダよりも強いと思うよ」


 なにせ奴との初戦闘はいわゆる「負けイベント」だ。ゲーム時代ではクリア特典として二周目以降になると「負けイベ」設定が無くなる。


 設定が消えたことによって倒すことが可能になるんだが、そいつの圧倒的な力はもの凄くて、死霊魔王ゴルゴンダを余裕でボコれる位強くなって、ようやく勝てるようになるんだ。


「そいつを仲間にする為には、一度そいつをこてんぱんにやっつけてこちらの力を示す必要があるんだ」

 

「破邪の剣を渡してあげれば仲間になってくれないの?」


「残念なことに、そいつは世界中の名刀・聖剣・魔剣の偽物ばかりをつかまされてるような、間抜けな一面もあるやつでね。すっかり疑り深くなっちゃって、初対面ではまず話を聞いてくれないんだよ。だから一度は戦う必要があるんだ」


「そうなんだね。死霊魔王ゴルゴンダよりも強いかもしれない人と戦って勝つ······気合を入れて私達も強くならなきゃいけないね」


「あぁ、一緒に頑張ろう!」


「その人のお母さんの呪いも解いてあげたいしね! その人の名前はなんていうの?」


暗黒騎士ダークナイトイーリアス」

 

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