第14話 ジャイアントタートル
日の出を迎え、朝が来た。目が覚めると、チョコザのザックに抱え込まれていた。天然の羽毛布団さいこ~!
ほとんど同時にザックも起きたようで「ぷぇ!」っと鳴いて挨拶してきてくれた。
「おはようザック!」
もう一度ザックにしがみついて、胸のあたりに顔をうずめて深呼吸する。スーハースーハー······あ〜、めっちゃいい匂いがする。お日様の匂いにチョコの匂いを少しだけ足したような、爽やかでほんのり甘い匂いだ。
これは癖になるな。
朝の儀式に、チョコ吸いも取り入れよう。
エリーとチョコも起きたみたいで、俺達と似たような事をやっていた。うん、そうなるよね。チョコザの魅力には抗えない。
朝の準備を終えると、早速北に向かって出発だ。昨日の夜みんなで予定を話し合った通り、ここからは北へ向けて移動メインで進む。野営に適した所に着いたら、寝る時の安全確保を兼ねて、周囲のモンスターを狩ってレベル上げをする。
昨日のペースを基準にすると、このサイクルで進んでも後5日位で、今いるエンダーランド王国と、ヴィクトリア聖国との国境の街メカイデカに着くことだろう。
メカイデカではイベントが有るはずなので、俺の、というよりかは、エリーの最強装備が手に入るはずだ。
「それじゃあ出発しよう!」
野を越え山を越え川を渡って、やって来ました、国境の街メカイデカ! 旅の道中エリーはもちろん、チョコとザックともたくさん話しをして、絆レベルがだいぶあがったぜ! (※注1)
本物のレベルも、俺はレベル35に、エリーはレベル31に、チョコはレベル26に、ザックはレベル25になった。
メカイデカは、街に入る時に通行税が必要だったこと以外は、ごく普通の街だった。
さっそく冒険者ギルドを探す。道端のやおやのおっちゃんに聞いたところ、中央ど真ん中の役所の東隣りの建物だそうだ。お礼に果物をたくさん買って、みんなで美味しく食べた。
冒険者ギルドの建物に入っても、活気が感じられず静まりかえっていた。あれのせいかな? と思いながら、クエストボードを探すと、やはり緊急依頼でジャイアントタートルの討伐があったので、その紙をはがしカウンターに並んだ。
周囲から粘つくような視線を感じるが、無視して待つこと数分、順番がきたので受付のお姉さんに依頼書を差し出した。
「この討伐依頼をお願いします」
「受注要項に書いてあるとおり、その依頼はレベル35以上となっております。失礼ですがレベルはおいくつですか?」
お姉さんがもっともな疑問をぶつけてきたので、ステータス表示のレベルを見せてあげる。ちょうど昨日の狩りでレベル35をクリアしたところだ。
「失礼致しました。今メカイデカは突如として現れた、ジャイアントタートルが国境の一本道を塞いでしまい、大変困っております。どれだけ集中攻撃してもびくともしない為、高ランク、高レベルの腕に覚えのある方にはどんどんチャレンジしていただきたいのです」
「これって期限はありますか?」
「期限も、失敗した時のペナルティーもありません。ジャイアントタートルは深追いはしてこないので、無理だと思ったら命を大事にして逃げてください。」
こいつを倒した時にドロップする戦利品を、他のやつにゆずるつもりはないからな。たとえ三日間徹夜してでも俺達が倒してみせる!
「わかりました。では準備をしてから早めに討伐に向かいます」
カウンターを離れて振り返ると、粘つく視線の主達がこれみよがしに、ささやきあっている。
「調子にのったガキが粋がってるが、すぐにあの硬さに泣いて帰ってくるだろうぜ」
「そうだな、明日の朝には面白い光景が見れるんじゃないか? たった二人で何ができるっていうんだ」
おっと、二人きりじゃなく、表にはチョコとザックもいるんだぜ。あいつらは頼りになるからな。まあ、好きなだけ品定めしてくれ。
なにせこっちにはエリーがいる。俺の力と体力もだいぶとんがってきたしな。
建物脇の
道の先には、山の一部分がそこだけぽっかりと無くなっているような、急斜面のすり鉢状のところがあり、そこを塞ぐかのようにジャイアントタートルは鎮座していた。
「エリー、チョコ、ザック、作戦を説明する。まずはダメ元で良いから、『かえるの歌』を何回か歌ってみてくれ」
「わかりました」
「たぶん効かないと思うから、その後は『すばやさの歌』を連続で何度も重ねがけしてくれ。その後はひたすら『ちからの歌』を歌ってこちらも何度も重ねがけだ。一定時間で効果が切れると思うから、これを何度も繰り返す」
「了解です」
「チョコはエリーを乗せたまま、ひたすら敵の攻撃の回避につとめてくれ」
「ぷぇ〜!!」
「ザックは俺の援護だ。タイミングをみて俺に近付き、チョコヒールで回復してくれ。攻撃は俺がやるから、絶対に敵の攻撃をくらわないように回避に専念してくれよ」
「ぷぇ〜!」
「ジャイアントタートルはとにかく硬くてダメージが通らない上に、攻撃力も高いから俺以外ではもたないと思うから、皆はとにかく回避だ」
「ぷえ!」「はい」
「ひっくり返って高速回転しながら連続攻撃をしてくることもあるから要注意だ」
「はい!」「ぷえ!」
「エリーの歌の援護があれば、多分丸一日ぐらいで倒せると思う」
「そ、そんなにかかるんですか!?」
「ああ、嫌になるぐらい硬いからな。だから各自チヨコの実と水分の補給はしっかりやるように!」
よし!
チョコザにまたがり、ジャイアントタートルにむかって、大地をかける!
巨大ガメ狩りだ!
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(※注1・・・そのようなステータス、レベルはゲームのファンサ5にはありません。主人公の主観です)
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