第13話 女主人

 チョコザのチョコとザックという新しい仲間が増えた俺達だが、まずは二頭の事をもっと知りたいと思う。賢い生き物らしいが、そもそも言葉は通じるのか?


「よーし、お前達、俺の言ってる事ってわかるか? チヨコの実は好きか?」


 チヨコの実を一粒つまんでニ頭の前で振ってみると「ぷぇ〜」と鳴いた。


「チヨコの実は嫌いか?」


 今度は鳴かない。


「好きか?」


「ぷぇ〜」


「嫌いか?」


 鳴かない。


 言葉は通じるのかな?

 じゃあ次だ。

 勝手に名前を付けたけど······

 

「お前達って名前は決まっているのか?」


 鳴かない。


「決まって無いなら俺達で名前を付けても良いか?」


「ぷぇ〜」「ぷぇ〜」


「じゃあ色が濃い方のお前はチョコな。薄い方はザック」


「ぷぇ〜」「ぷぇ〜」


「チョコはオスか?」


 鳴かない


「チョコはメスか?」


「ぷぇ〜」


 チョコはメス。

 

「ザックはオスか?」


「ぷぇ〜」


 ザックはオス。


 これはもう、言葉が通じていると思ってよさそうだな。


「俺の名前はルイ。こっちはエリーだ。チョコ、ザック、これからよろしくな!」


「私は、エリー。チョコちゃん、ザック君よろしくね!」


「「ぷぇ〜!!」」


 ひときわ大きな声で鳴いてくれた。よろしくって事かな?

  

「俺達は旅の途中で、ここにはもう戻って来れないかもしれないけど平気か?」


「「ぷぇー!!」」


 平気らしい。野生のチョコザはたくましいな!


「乗せてもらっても良いか?」


 俺がザックに聞くと、「ぷえっ!」と返事が返ってきた。


 脚をたたんで乗りやすくしてくれたザックの背にまたがる。


「うおぉぉ!」


 俺は今! あのチョコザに乗っている!

 感動だぁ~!!


 エリーもチョコに乗ったな。

 では出発だ!


「よし! それじゃあ行こう! ザック、北、わかるか? 北へ進んでくれ! 出発!」



  


 速い! 速い! 


 景色が飛ぶように過ぎ去っていく!


 しかもさっきから2時間位走りっぱなしだ!


 これでまだセーブして走っているのだろうから末恐ろしいな。おっとエリーの方が先にバテてきたみたいだな。丁度いい、進路上に見えている水場で休憩しよう。


「チョコ! ザック! 休憩しよう!」


 水をガブガブと飲み、水浴びを始めたチョコとザック。楽しそうだ。俺とエリーはそれぞれの相棒にチヨコの実をあげる。あ〜かわいい。癒されるぅ!


 生チョコザの走力は十分見させてもらったから、次は戦闘力を見せてもらおうかな。


 チョコザは一説によれば、古の竜の末裔らしい。つまり亜竜種という事で、そこいらの野良モンスターよりも、格が上なんだそうだ。レベルではなく生き物としてのが上なんだという事だ。


 その為フィールド上で野良モンスターに襲われる事は滅多にない。戦闘をしたかったら、こちらからモンスターに接触する必要が有る。


 虫めがねで調べたレベルは、チョコが11、ザックが9だ。今の内に二頭のレベルも上げておきたい。


「チョコ、ザック。北に進みながら、モンスターを見付けたら倒していきたいんだけど、できるか?」


 俺がそう問うと「ぷえっ!」と元気よく返事が返ってきた。


「よし、じゃあ最初に俺とエリーの二人だけで戦うから、チョコとザックは見ていてくれ。その次はみんなで戦おう」




 休憩が終わり再び出発した俺達は、チョコザの索敵で、すぐにモンスターと接触した。


 戦闘開始!

 

 いつもの、歌って殴る作戦だ!

 

 エリーのかえるの歌により、コボルトアーチャーとコボルトウォーリアは三体がカエルとなり、残った一体から順に俺が殴り飛ばして倒していった。


 実に簡単なお仕事です。


 振り返ると、それを見ていたチョコとザックの目が点になっている。くちばしもパクパクとして羽はワナワナと震えていた。


「次は皆で戦おう。まず今の戦闘のように、敵をエリーがカエルに変える。それから皆でとどめをさす。チョコとザックはまだ無理をしなくていいからな」


 俺がそう言うと、チョコとザックはブンブンと首を縦に振った。エリーをみる目に心なしか怯えが混ざっているような気がする。


 まぁそうなるのも無理はないか、と俺は心の中で苦笑してしまった。本当に規格外なスキルだよな。かえるの歌は。



  

 先に進みながら、次々とモンスターを倒していくと、徐々にチョコザを含めた連携もうまくなっていった。


 歌う! 殴る! 蹴る! つつく! と沢山の戦闘をこなしていくと、俺はレベル28に、エリーはレベル23に、チョコはレベル17に、ザックはレベル16になった。


 野営をするのにちょうど良さそうな場所を見つけたので、今日はここで寝よう。寝床や食事の支度をするのに、エリーがチョコとザックに指示を出すと、二頭はテキパキとエリーに従っていた。


 二頭共、すっかりエリーに従順になってしまったようだ。


 恐るべし! 『魅惑の魔女』!


「チョコかザックはどっちか『チョコリュージョン』の魔法を使えるか?」


 俺がそう聞くと、チョコが「ぷぇ〜」と鳴いて、チョコリュージョンの魔法を使ってくれた。


 この魔法は周囲の一定範囲に簡易的な結界をはる魔法で、チョコザの固有魔法だ。あのチョコザの森にもはってあった、人除け、モンスター除けになる魔法だな。


 侵入者が現れると、術者であるチョコが即座に感知するので、今日は安心して寝ることができるかな。チョコザと一緒に寝れるなんて幸せだなぁ。


 

 

 

 

  


 


 

 

 

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