第9話 宝箱

 クエストアイテム『青いチャイナローズ』を手に入れた俺達は、ナイヤチ村へとやって来た。


 今回はゲームと違って、吟遊詩人のエリーもいることだし、まずは村人の様子を確認してから、チャモ爺さんの所へと向かった。今回もエリーには、黙って様子を見守るように、あらかじめ伝えておいた。


 カンッ カンッ カンッ


「すみませ〜ん! お爺さんいますか〜! ルイで〜す!」


「おお、ルイさんか、鍵は開いておるよ。入りなさい」


「おじゃましま〜す!」


 ドアを開けて家に入ると、いつもの場所にチャモ爺さんが座っていた。

 

「お爺さん、これが約束の青いチャイナローズです」


 そう言って青いチャイナローズを取り出すと、チャモ爺さんに手渡した。


「なんと! 幻と言われて、どこに生えておるかもわからんのに、こんなに早く持って来てもらえるとは、ありがたい事じゃのう。そちらのお嬢さんはルイさんのお友達かな?」


「はい。つい最近ルイさんとお友達になりました、エリーといいます」


「そうかそうか、ルイさんもお友達が増えて良かったのう。もし良かったら、二人共一緒に婆さんの墓参りに着いてきてくれんかのう?」


「良いですね。お花は沢山有るし、皆でお婆さんの所に行きましょう」



 

 北のはずれにある墓地に着くと、チャモ爺さんがお婆さんのお墓に青いチャイナローズを供えて話しかけた。


「ユーリアよ、どうじゃ、見たがっておった青いチャイナローズじゃぞ。そこにおる若い頃の婆さんにそっくりなお嬢さんがな、見つけて来てくれたのじゃ。ありがたいのぉ」


 そう言って涙ぐむチャモ爺さん。お墓の上が、心なしかキラキラしている。きっとお婆さんも喜んでいるのだろう。


「そうかそうか、婆さんもルイさんを気に入ってくれたか。それは良かった。それでは機会があればまた来てもらおうかのぉ」


 まるで本当に目の前にお婆さんがいるかのようにお墓に話しかけている。よっぽどお婆さんの事を愛していたんだね。ウルッときちゃうよ。


「さて、それでは帰るとしようかの。二人とも良かったら今日は家に泊まっていきなさい。この間は、婆さんの事を話足りんかったからのぉ」


「それではお言葉に甘えて、泊まらせてもらいますね」




 チャモ爺さんの家で夕食をとり終わってくつろいでいると、ドアノッカーが、けたたましく鳴らされた。


 ガンッ ガンッ ガンッ


「村長! 大変だ! 野盗団が現れた! やつら多分あの凶悪な赤蛇団の奴らだ。かねを寄越せって言ってきている! 金を出さなきゃ皆殺しだって······どうしましょう!?」


「なんと! わしが交渉するしかあるまい。すぐに行くぞぃ! お嬢さん達は危ないからこの家の奥に隠れていなさい!」


「わかりました」

 

「え!?」


 慌てて出て行くチャモ爺さんと村人。これからお金の交渉が始まるのだろう。


 家に取り残されて、エリーと二人きりになってしまった。


「ちょっとルイちゃん! なんで助けてあげないんですか!? こんなに良くしてもらっているのに!」


「ん~~、やる事があるからね。大丈夫だよ。交渉してお金を払うんだから、すぐに酷い目にあわされたりはしないはずだよ。さぁ言われたとおり奥に隠れていよう」


 俺はそう言うと、暖炉の前に立ち中をのぞき込んだ。そしてそのまま奥に行く。火は元々ついていない。真っ暗な中、突き当たりを左に曲がると隠し部屋(ただのお爺さんとお婆さんの寝室)に出た。隠し通路だ!


 ゲーム知識で知ってたけど。


「な、何をやってるんですか??」


「言われた通りに隠れてたら、こんな隠し通路に、隠し部屋を見つけちゃった! ど〜しよう!?」


 そう白々しく言ってのけた俺は、めざとくタンスたからばこを発見!


 すべての宝箱は開けるのがお約束なのだ!


 何が出るかな〜♪


『チャイナドレス』を手に入れた!


 き、キタぁ〜!!


 よっし!!


 2個目の女モンクの最強装備ゲット!!


「ど、どろぼう······」


「何を言っているんだエリーは? ダンジョンで宝箱を見付けたら、宝箱の中身の所有権は開けた者に有る。そんなの常識だろ?」


「こ、ここはお爺さんの家なのに·····」


「隠し通路の先はダンジョンと同じさ」


「わ、私も一緒に謝ってあげるから、お爺さんにごめんなさいしに行きましょう」


「大丈夫だって! 絶対に喜んでくれるから!」


 そう言って、俺は身に着けている装備をとき、代わりに『チャイナドレス』を装備した。


 よっし!!


『チャイナドレス』のアイテム説明欄には「お婆さんの形見のドレス=魔防+1 物理防御力は体力に完全に依存する」としか書かれていない。


 装備するとキャラクター外観の服装が、チャイナドレスに変化するだけのネタ装備······かと思われていたが、先人の検証の結果、体力の数値が物理防御力としての値となる事がわかったのだ。


 つまり今の俺の体力のステータスは139なのでチャイナドレス物理防御力は+139になるのだ。そうなると物理防御力の算定式は体力+装備品の物理防御力なので、139+139=278となる。


 今後は常に体力+体力が物理防御力となるのだ。


 しかも······体力はレベル99までレベルと共に上昇していく。


 はい、ぶっこわれ〜。


 最終的にはラストダンジョンで手に入る最強防具を遥かに超える、成長していく防具。それが『チャイナドレス』! プログラマーがアイテムテキストの解釈を間違ったのだろう、とネット上でささやかれていた。


 ちなみにこの隠し通路の入口の暖炉、今日のこのタイミング以外では常に火がついていて通り抜けできない。この機会を逃すと二度と入手できないのだ。

 

 鏡に映る、チャイナドレスにチャイナリボンを身に着けた自分の姿を確認する。自分で言うのもなんだけど、超絶かわいい。さすがは女神サマ仕様の造形だ。

 

「チャモ爺さんも絶対にこの姿を気に入ってくれるはず! さあ、準備は整った。野盗共をぶちのめしに行くとしますか!」


 

 ―――――――――――――――――――――――――――― 


名前∶ルイ=コンノー

性別∶女

年齢∶15歳

職業∶モンク

レベル∶26


HP∶1083/1083

MP∶63/63


力  ∶131

体力 ∶139

素早さ∶107

器用 ∶78

知性 ∶26

精神 ∶27

運  ∶38


装備

 右手∶=素手

 左手∶=素手

 頭∶=チャイナリボン 物防+1魔防+1

 体∶=チャイナドレス 魔防+1

 足∶=革の靴 物防+7


 アクセサリー①∶むしめがね(対象のレベルを調べることができる。見ることができるのはレベルのみ)


 アクセサリー②∶なし


スキル∶チャクラ、オーラパンチ、カウンター、けり


所持金∶108,050シグ 


アイテム∶特殊なアイテムのみ抜粋


 運のタケノコ✕8、おたまのしっぽ、毒ガエルのつの✕18、ガマグチ✕4


 

 ―――――――――――――――――――――――――――― 


 

名前∶エリー

性別∶女

年齢∶16歳

職業∶吟遊詩人

レベル∶20


HP∶340

MP∶142

  

力  ∶37

体力 ∶52

素早さ∶53

器用 ∶79

知性 ∶59

精神 ∶59

運  ∶30

 

装備

 右手∶=たてごと

 左手∶=なし

 頭∶=羽飾りの帽子 物防+5魔防+3

 体∶=革のドレス 物防+10

 足∶=革のブーツ 物防+8

 アクセサリー①∶なし

 アクセサリー②∶なし


スキル∶すばやさの歌、ちからの歌、かえるの歌

  

  


  

 


  


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る