廃墟を一匹の猫が足音を立てず小走りに進んでいる、どこか目的地があるのだろう周囲に目もくれず進んでいたのだが、猫の行く先を獅子型ウォーカーが塞いでいた、猫はウォーカーがいることに気づいていたがそれでもその足を遅めることはなかった。


 獅子は自分に近づいてきている存在に気高い雄叫びをあげ猫を自分の巨体で潰そうと突進を開始した、近づきつつある獅子に恐れることもなく進む猫と獅子がぶつかる直前に猫が可愛らしく「ニャン」といいながら猫パンチを眼の前の空間へと放つと不自然に獅子が吹き飛ばされた廃墟のビルを次々と突き破りようやく止まると猫から距離を離されてしまった。


 獅子は驚いた自分がこのような仕打ちを受けたことが今まであまりなかったからだ、だがそれと同時に怒りが湧き上がってきた、あのような矮小な存在に自分が手傷を負わせられた事に、獅子の身体から稲妻がほとばしり始めた全力であの小さき存在を殺すと決意した獅子は自己強化する魔法を使用し一瞬で先程の場所まで戻りまだその場にいた猫へと空を切り裂くような雷を数えきれない程落とした、そのようすを遠くから見ると雷の豪雨が降り注いでいるのがよく見えただろう。


 魔法の影響で周囲のビルは跡形もなく消失し地面には数多くのクレーターが出来上がり土埃が酷く舞い上がっている、獅子は己の勝利を確信し雄叫びを上げ死骸を食らってやろうとゆっくり自分に手傷を負わせた存在へと近づいていく、この辺りだなと立ち止まり土埃が風に流されて行くのを待っていると徐々に見えてきた、息を飲んだ、なぜならまるで日向でくつろぐような格好で自分の身体を優雅に毛づくろいをしていたからだ。毛づくろいが終わりこちらを見た存在と眼が合った瞬間逃げた自分では決して勝てる存在ではないと理解してしまったからだこのままでは食われる容赦なくなんの慈悲もなく自分がいままで相手にしてきたように!

 魔法を使用し稲妻のような速度で遠くはるか遠くまで逃げた、これで大丈夫だ、また新しい場所で自分より弱い存在を倒しそれを糧としてもっと力をつけてやると意気込んだ獅子は自分が居た廃墟の方へ一度振り返り、去ろうとしたら聞こえるはずのない「ニャン」という言葉を最後に意識を落とした




 猫の瞳が怪しく輝いていたがふっといつもの瞳へと戻った、軽く自身についた土埃を落とし尻尾をフリフリすると足取り軽く目的地へ向け歩きだした。ニャンニャンと鼻歌を歌いながらごきげんそうに歩き目的地へと到着した猫は先程仕留めた獅子から摘出したクリスタルをある人物へと渡す


「マスターこれだけですか?全然足りませんよ?これじゃいつまで経っても計画が進みません!もっと気張って頑張って下さい!もっと大物を狙いましょうよ!あの一度遭遇したドラゴン型ウォーカーとかどうです?すごい魔力蓄えてますよきっと、なんなら私があの人に手伝ってくれるようにお願いしますから!」


 猫はニャニャニャンと言って顔を横にふるそしてあの人に手伝ってのところでシャーと威嚇した、よほど嫌なんだなと丸い瓶底メガネをかけ白衣をきた女性は苦笑いをした、まだ必要な量には全然足りてないこのままだと何年かかるか分からないマスターの目的を叶えるためにもやっぱりあの人に連絡しようと考えた。それはそうと・・・


 「マスターお風呂沸かしといたんで入ってきていいですよー綺麗な毛並みが土埃で台無しです。」


 猫は耳をピンと立て意気揚々と風呂場へと尻尾をフリフリしながら風呂場へと歩いていった、風呂場の方から「にゃ〜ん」と蕩けたような鳴き声が聞こえてきた。今のうちに連絡を入れておこうと彼女は通信機を手に持ち部屋を出ていった



 浴槽に浮きながら猫はこれまでに経験した事を思い出していた、にゃ〜んと蕩けるような声を上げながら。

 

 猫は廃ビルの一室で目覚めた、だが自分がなぜここにいるのか、自分が何者なのかさえ分からなかった、周囲はまだ暗く辺りを伺うことが出来なかった。ようやく日が昇ると自分の近くに古びて曇った鏡があることに気がついた、その鏡で自分の姿を見た時にああ猫だなと不思議と分かった。なぜそう分かったのか考えたが記憶に霞がかかったように何も思い出せなかった、考えても分からないのでとりあえず異様に空腹を感じているこの身体の欲求を満たそうと食べ物を探すためにこの場所から離れようと移動を始めた。


 廃ビルを出ると温かい日差しが眩しく感じ眼を細めた、ようやく目が慣れてきて周囲を見ると生き物の気配は何も感じない、崩れたビル、所々アスファルトが剥げた道路、錆びた自動車、全てが朽ちていただが自然の空気、太陽の光、剥げたアスファルトから伸びた草木を見て猫はどこか感動しているようだった。猫は困惑したなぜ自分は感動したのだろうか?首をコテンと傾げてニャ〜ンと鳴いてみたがやっぱり分からない、考えたからだろうかさっきより空腹感が強まっている気がした。


 食べ物を探しながらしばらく辺りを歩いていると草花が密集している場所にでた自分の背丈より少しだけ大きい草花なにかガサゴソと音が鳴り響いている、身を屈め恐る恐る進んでいるとネズミだろうか?なにか小さな生き物が側を通った反射的に飛び退いてしまったが獲物がいると分かった瞬間本能のなせる技なのか身体を伏せて次の機会を逃すまいと待ち構えた。


 どれだけ待ったのか分からないがそれほど時間は経っていないだろう、ガサっと自分の直ぐ側で音がした瞬間地面から跳躍し、前足でその小さな生き物を捉えた、すぐにその頭にかじりつき息の根を止める、その際生き物の血が自分の口の中に入った瞬間咳き込むように全て吐きだ

した、あまりにも不味いまるで土のようだとても食べれるようなものじゃないショックを受けて悲しげな鳴き声を上げた。


 あまりの空腹でフラフラになりながら歩いている、道中様々な生き物を口にしてみたがどれも同じだ土の味しかしない。歩くのも疲れてしまい柔らかそうな草の上で横になったこのままだと餓死してしまうかもしれないと頭をよぎったが歩き疲れた疲労で瞼が重くなりそのまま眠りそうになったその時鼻をくすぐるいい香りがどこからか風に乗って運ばれてきた。


直感で食べ物だと分かりその匂いの発生源を求めて猫は再び歩き始めた。









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人滅「Noah's Ark」 真下ハジメ @mashita-hazime

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