メシア
とある廃墟のビルの屋上で複数の人影が集まっている、そこへ1人の人物が大きな荷物を携えて訪れた
「間に合った〜!セーフ!セーフだよね?メシアちゃん!ロキちゃん思うんだ待ち合わせ場所ちょっと遠くないかな?久しぶりに全力疾走したよ!」
メシアと呼ばれた女性はロキが携えている荷物を見ながら微笑んでいた、ロキは安心したどうやら怒ってはいないようだ助かったとふぅ〜と安堵のため息を吐き出すといつの間にか自分の見ている景色がくるくると移り変わりそして地面から見上げる形になっていた、油断した怒ってないと思って安心してしまった。これ本気で怒ってるやつだ
「ロキそれはなんですか?片腕がありませんが?それが死んだら面倒が増えるだけです。私は言いましたよね?ちゃんと連れてこいと・・・」
いやいやちゃんと連れてきたじゃん!多分まだ生きてる!ロキちゃん止血したから!もうここから身体元に戻すの大変なんだから本当にやめてほしい、身体をなんとかこっちの方に動かして〜と、あ!こっちです身体さんこっちこっち!
「もうメシアちゃん!首斬るのやめて!片腕はなんだろ?そのほうが面白そうだったからつい取っちゃった!あーうそうそ止めて止めて両手足を斬ろうとしないで!ちゃんと任務の対象者なのか確認のため調べたんだよ」
危ねえ危ねえ頭を繋げる前に手足を切られたら頭を拾うのも一苦労だよ、どうしてこうすぐに他人の身体をスパスパ斬るかな
「ロキ貴方馬鹿ですか?はぁ〜貴方に任せた私が愚かでした。これなら彼女にお願いすればよかった、それでそいつはどうだったんですか?確かめたのでしょう?」
メシアは自分の側に控えている彼女をちらりと見て、ロキへと尋ねた
「うーん僕の得意分野じゃないから?たぶん?メシアちゃんが自分で確かめなよ!違ったら適当に捨てればいいじゃん!あ!でも顔はイケメンくんだから僕が頭だけ腐らないように処理して部屋に飾るよ!」
ロキの言い分に納得したのかメシアはそれに近づき傷口をぺろりと舐めた、しばらくして周囲に笑い声が木霊する。ロキは驚いたメシアがこれほど笑っている姿など今まで一度も見たことがなかったからだそれほど感情をさらけ出す事がないのだ
「くふふふふなるほどなるほどそうですか、ノアこれが200年かけて出したあなたの答えですか」
そのまま屋上の縁へと歩いていき方舟がある方向を見つめながらメシアはただ静かに呟いた、だがその言葉は風に攫われだれの耳にも届くことはなかった。
ある日孤児院に資源開発省から知らせが届いた、シスターは自室でその手紙を読みながら深い深い溜息を吐き出した、こうなることは覚悟していただが覚悟していても悲しいものは悲しい、先日のように彼がこの孤児院に来た時を思い出す、幼くしてこの孤児院に来た彼はなんの感情も表に出さない子だった美味しいものを食べても、転んで怪我をしても、風邪を引いて苦しい時も、どんな時でも感情を出さなかった、でもとても優しい子だった、自分より小さい子の面倒をよくみて、自分のおやつを分けてあげて、気づいたら孤児院のみんなから好かれていた。
そんな彼が感情を見せるようになったのは私が彼を助けるために怪我をしてしまった時だったのを覚えている、たしか高い木に猫が登ったのを助けようとして自分が落ちてしまったんだそれを側にいた私が身を挺して受け止めた時に怪我をした、彼は私の怪我を下手くそな手付きで包帯を巻きながら「ごめんねシスター痛い?僕はシスターが受け止めてくれたから大丈夫だったよ、ごめんなさい無茶をして」と泣きながら謝ってきた彼は他人のために泣ける素直な子なんだと安心した、彼が初めてここに来て感情を表に出してくれたそれが私は嬉しかった。
この知らせをみんなに教えるのは心苦しい、でも特に懐いていたルミスにはしっかりと言い聞かせないといけないだろう、彼が旅立ってしまった事を・・・
ニフルがデスクで書類を作成していると上司から呼び出された、何事かと思い上司の執務室へと向かいドアをノックし入室すると何人か呼び出したようだ横目でちらりと呼び出された人物を見ていくと全員同期で配属された軍学校の人達だった、そして上司から告げられた言葉に動揺した「君達の同期が1人亡くなった資源開発省に配属された人物だ」と告げられると動揺していた者は冷静になっていった。
彼、彼女らは貴族だ平民がどうなろうが知ったことではないのだろう、それどころか優秀だった彼が死んで喜んでさえいるようだった、私はあまりのショックに目眩がしフラフラになりながら自分のデスクまで戻ってきた、だが何も仕事が手につかない、あの彼が死んだ?信じられない!いつも私をからかってきて、馬鹿にして、でもなにかと困っていると助けてくれて、どんな難しい課題も涼しい顔して軽々とこなしていた彼がそんな簡単に死ぬはずない!彼になにがあったのか調べないと・・・・・ちょうど自分の側を通りかかった同期の人間に自分の仕事を押し付けて私は実家へと急いだ。
ノアは自室でアルバムの眺めていた、今から1世紀以上昔の古い写真が所狭しに挟まっている。この時は皆いつも笑っていた、仲がいい友人達に囲まれ実に幸せそうだだがある時期を境に友人達が1人また1人といなくなっていった、あの事件さえなければどうなっていただろうか?幸せな日々を過ごせただろうか?分からないただ今のようにはなっていなかっただろう、ノアの憂鬱な気持ちを表現しているかのように彼女の部屋の窓を弱々しく雨がたたいていた。
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