初任務 6


 全員が息を飲み微動だにすることができない、動けば死を意識させられる。俺の首に腕を回している彼女は何の躊躇いもなく俺達を殺すだろう、全員動くなよと俺は願った。だがこの状況をなんとか好転させないと遅かれ早かれ全員殺される可能性が高いなんとかしないと・・・


「君はなにが目的なんだ?君がその気なら俺達が気づく前に全員殺せただろう?なにか要件があるじゃないか?」


 俺達を舐め回すように見ていた彼女の表情がピタッと止まり能面のような顔で俺の瞳を覗き込んできた、その瞳と眼が合った時俺は心臓が止まるかと思った彼女の瞳からなんの感情も伺うことが出来なかったからだ、ヨミとニルが化け物と言ったことがなんとなく理解できた。


「要件?要件?要件か〜そこの彼女の頭が欲しくなっちゃって〜ねぇ頭ちょうだい?駄目かな?お姉さん頭欲しいなぁ〜」


 彼女はニルを指差しながらニルの頭が欲しいと俺達にねだってくる、駄目だ会話が成り立つ気がしない。もちろんどうぞと言えるわけがない


「なによあんた!私の頭をあんたなんかにやるわけないでしょ!」


 ニル!バカやめろ!誰かニルの口を塞げ!やばいと思いすぐ彼女の顔を見ると笑っていた。こいつ俺達をからかっているのか!


 「僕はね〜君でもあんたでも化け物でもないんだよ?ちゃ〜んとロキっていう名前があるの、あと危機意識が足りない調子にのるな」


 ロキが指をパチンとならした、その瞬間ニルの片腕が半ばから断ち切られた、それも目撃しアイン、ヨミが即座にアーティファクトを使おうとしたらパチンと乾いた音が鳴り響いて彼女達の腕と足が宙を舞った、彼女達の悲痛な叫び声が辺りを包んだ


 「うるさいなぁ〜レイブンがそれぐらいで叫び声を上げるな!、ねぇ君もそう思うでしょ?そこで寝てる彼女をみてごらん叫び声も上げずに寝ているよ」


 俺はネムの方へと視線を向けると彼女を包んでいた布団が全て真っ赤に染まっている、そして見つからなかった枕はあるのに、見つからなかったのだ


「ねぇ〜彼女えらいよね〜ハハもう頭ないから叫べないか〜ハはハはあはは」


 ダメだ冷静にならないとこのままじゃくそ!ダメだ冷静になんていられないなんとかしないと!なにかこの状況を抜け出す方法はなにか、なにか!


「もう一度聞くなにが目的なんだ?俺達を弄ぶことか?」


 彼女は楽しそうに満面の笑みをしながら俺の方を見たそして俺の腕を引きちぎった


「ぐうぅぅぅ腕が俺の腕が!」


 激痛が走り地面を転げ回る、このクソ野郎俺の腕千切りやがった!転げ回る俺の身体を足で踏みつけ動けなくし見せつけるようにロキは引きちぎった俺の腕を咀嚼し始めた、全員が満身創痍だ・・・ニル、アイン、ヨミ、そしてネムすまないもうどうすことも出来そうにない、俺のような新人に配属されたばっかりにこんなめに合わせてしまってごめん。俺は自分の情けなさと不甲斐なさ部隊の仲間の事を思い自然と涙が流れてしまった・・


 「あれあれ?君泣いてるの?ふふふ笑える、うーん気分がいいし君に選択肢をあげよう、君のレイブン達は見逃してあげる、その代わり君は方舟に戻れない。いやならこの場で全員殺す、どうする?ロキちゃん優しいね〜」


 そんな事でニル達を助けてやれるならと思い俺は了承した


「そんなことでいいなら分かった、俺は方舟に戻らない」


 そう言った瞬間俺の意識は闇へと落ちていった。どうか無事に方舟へ戻ってくれと願いながら









 ロキは意識を落とした男を脇へと抱えながら移動しようとすると、ニルが剣を杖代わりにし立ち上がったのを見つけた、ロキは思ったついでにこの女の頭を持って行こうかと一瞬悩むが脇に抱えた男との約束もあるそれに約束の時刻まであまり時間もない、まぁ今度会ったらでいいかと思い彼女の脇を通り抜けようとした瞬間、闇の中をなにかが煌めいたロキはそれを辛うじて腕で受け止め、ニルの腹に蹴りを浴びせた彼女がはるか向こうのビルの外壁に突き刺さるのを一瞥し目的地へと歩き出した。


「うんうんなかなかマシな剣筋だったねぇ〜ロキちゃんには効かないけど〜妹ちゃんなだけあるなぁ〜あ!時間やばい!急ごう遅刻したら怒られるよ〜メシアちゃん怖いからなぁ〜」


 ロキは目的地へと急ぎながら脇に抱える男を見ながら呆れたように呟いた


「それにしてもノアは、いつまでもこだわるね〜僕には分からないなぁ」


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