初任務・・・3

 ネムがきぐるみを着て楽しそうな笑顔を浮かべている、その手には古びた樹の枝?指揮棒のようなものを持っている。彼女はそれを楽しそうに振りながらなにか歌を口ずさんでいるようだが俺の耳にはなにも聞こえてこない。酷い眠気を頭を振って必死に振りほどきながらなんとかネムの近くから離れると不思議と眠気がなくなった。不思議に思っているとアインが説明してくれた。


「少尉あれがネムのアーティファクトです。所謂ゲームでいう状態異常を周囲にばらまくんです。いつの間にかに状態異常になっているから恐ろしいアーティファクトなんですが、使用するのに大量の魔力を使用するので身体の負担が大きいんです。だからネムはいつも寝ているんですよ。それにネムは回復魔法も使用できるのでなおさら魔力を温存して、万が一に備えているんです。」


 まさかいつも寝ているネムがそんな優秀なレイブンだったとは驚いた、それに回復魔法まで使用できるとなるとレイブンの中でも希少だ。魔法は人類が使用することが出来ない、魔導金属を身体に宿していないからだ、自身の魔力を魔導金属に流し込み魔法を発動させるようだが、ただ魔導金属に流し込むだけでは駄目らしい、身体に魔導金属を宿すと自然と自身の資質に合った魔法文字が魔導金属に刻み込まれそれに魔力を通すことで初めて魔法を使用することが出来るらしい。資質がないと魔導金属を宿していても魔法文字が発現せず魔法を使えない。魔法が使えないレイブンが量産型レイブンとなると話を聞いたことがある。


 アインが俺から離れネムのそばに行くと彼女と一言二言話しそのままウォーカーの方へと歩いていくのが見えた、彼女の右手にはうっすらと青く透明な短剣のようなものを握っているのが分かる、アインの姿が突然目の前から消えた次の瞬間音もなく2体のウォーカーが両断されていた。俺が驚いているとアインがこちらに手招きをしているのが分かった、何か合ったのかと思い彼女の方へ急いで向かった。


「少尉こちらを御覧ください、これがウォーカー心臓部のクリスタルです。綺麗でしょう?このクリスタルは魔力を多く内包しています、ウォーカーの動力源のようなものです。まだ美しく光り輝いていますが、クリスタルを破壊すると内包していた魔力が空気中に放出され魔力がなくなるとただの石ころと変わらなくなります。それとこちらも見てください」


 アインに見せられたウォーカーのクリスタルはたしかに美しかったが次第に光を失いただの石ころに変わってしまった。それよりも驚いたのは・・・・


「まさかこれ!そんな馬鹿な!ウォーカーに脳があるのか!しかもこの形大きさまるで人間の脳のようだ・・・」


 だがたしかにウォーカーの正式名称が魔導機械生命体・・・ウォーカーは生命体、機械ではないのだ。生物として分類されているだがなぜここまで人間に酷似した脳を持っている?


「少尉ウォーカーは様々種類がいます、昆虫型、鳥獣型、今まで戦闘が記録されているウォーカー全てにこれと同じような脳が確認されているんです。サンプルを回収し遺伝情報を確認したところ人間だと判明しています、ウォーカーは人なのです。人の意識があるとはまだ分かっていませんが、少尉は知っておいた方がいいだろうとクロト司令から言われました」


 俺は愕然とした座り込んだ、人と敵対するウォーカーがまさか人間だとは思ってもいなかった、混乱しながらもクロト司令はなぜこの情報を俺に打ち明けた?情報漏洩の心配?いや誰も信じないこんな話、いくら考えても分からなかった。しばらくその場で頭を悩ませたが解決策など無い今は消息を絶った部隊を確認しなければと雑念を振り払うかのように頭を振り立ち上がった。


「すまない少し、いや大分驚いたとりあえず任務に集中しよう、ヨミ周辺にレイブンの反応はあるか?」


 ヨミが瞳を瞑り意識を集中させている、しばらく待っていると瞳を開き見つけたと呟いただが表情が芳しくない


「少し離れたところに微弱だけどレイブンの反応がある、だけどなんか変なんです、レイブンの周囲にウォーカーもいるようなんだけど戦闘をしている様子が感じられません。少尉どうしますか?」


 たしかに奇妙だ、だが発見したのなら確認するほかないだろう、十分注意して向かおう


「向かうしかないだろう、それが今回の任務なのだから。罠の可能性が非常に高いが出来るだけ注意して向かおうフォーメーションは今までどおりで行くぞ」


 全員が頷きヨミが探知した場所へと向かい始める、シスターがよほどのへまをしない限り大丈夫と言っていたがこのメンバーならなにか問題が発生しても対応出来るだろう。






 俺はこの時引き返して置くべきだったと後悔することになる




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