初任務・・・

 緊張のあまり眠る事が出来ないと思っていたら爆睡していた。体調は万全、顔もいつも通りイケメン、笑顔も爽やか、ふぅ〜どうやら俺は今日も完璧らしい。おっとそろそろ時間か司令室に行かねば。颯爽と司令室に向かった、司令室は方舟の外壁に近い資源開発省の施設にある。ここで今日の任務を受けて出撃するのだ、司令室に到着して中に入ると部隊メンバーが待っていた。俺が入室してすぐクロト司令が入室してきた。


「どうやら全員揃っているようだな、本来は司令部所属のサポーターが伝えるのだが今日は特別に私から任務を伝える。今回お前らに向かってもらう場所は、方舟から半日ほど離れた廃墟に向かってもらう。この廃墟は昔、都市だった場所だ。そこに先日量産型のレイブンで組んだ部隊を送ったのだが連絡が途絶えた。その部隊の生存確認に行ってもらう。発見したら回収し帰還しろ以上!」


 なにかしら部隊に問題が発生し未帰還になっている部隊の確認か、なにが起きたのか確認しろと、量産型レイブンは簡素な装備しか実装されていないが、通常のウォーカーなら問題なく撃破出来るはずだ、となると上位個体か?用心して取り掛かったが良さそうだな。全員で司令に敬礼をし、司令室を出る。


 方舟の外へ出るためのカタパルトへと向かいながら部隊メンバーとミーティングする、情報のすり合わせをしておいたがいいだろう、情報の認識不一致は問題が発生した際不要なトラブルを起こすことがあるからな。


「歩きながら聞け、今回の任務はただの部隊の生存確認ではない、方舟から半日という近い距離にレイブンの部隊を壊滅できるなにかがいる可能性が非常に高い。実際生存は絶望的だと考えている。半日の距離ならなんとか撤退戦しながら方舟まで逃げてくることが出来るはずだ、それが不可能だったということはそれだけの問題が発生したということだ。全員気を引き締めて向かうぞ。」


 全員が頷いたがヨミが少し首を傾げているのに気づいた、どうしたのかと発言を促す。


「少尉はレイブンに少し勘違いをされています。私達レイブンは基本的に方舟を危険に晒す行為を行う事が出来ません。これは、方舟に兵器を向けることもそうですが、ウォーカー達を方舟に近づける事も含まれます。なので半日の距離から方舟への撤退戦は、行動の選択肢に含まれないのです。ですので多分その場での徹底抗戦に踏み切ったのではないかと思います。」


 俺は驚いた、まさか自身の生存を優先しないとは、考えてみたら彼女達は方舟を守護するために作られているのだから当たり前の話しなのかもしれないが、それでも普通は自分の命を一番大事にするものだろう。この認識は正しておかないといけないだろう。本能的に無理かもしれないが。


「君達には出来るだけ自身を一番大事にしてほしい、たとえ外で俺が危険になっても自身を顧みず守らないと約束してほしい。本当は守って欲しいけど、うん本当守って」


 どっちですか?と飽きられた眼差しを向けらていると方舟の外へ出るためのカタパルトに到着した。特殊なボールの中に搭乗席があり外壁から外へと射出するのだ。不思議と中は全く振動がなく着地することができるらしい。不用意に外壁を開け締めしないための技術のようだボールは自動で方舟に戻るらしい。



「じゃあ行くぞ、外に出たら周囲を警戒しろ。問題がないなら目的地に向かって移動を開始する」


 カタパルトから射出されどうやら外に到着したようだ、乗り心地?うん三半規管がやばい、吐きそう。俺が青い顔をしていると部隊メンバー全員が離れた。君達酷くね?顔を青くしながら指示を出す


「周囲を警戒・・・・・大丈夫そうだな、各人武装の確認をもう一度しろ!問題ないな?行くぞ」


 俺が顔を青くしながら歩きだすと前を斥候のアインが前方、右側にネム、左側にニル、後方にヨミが配置についてくれた。事前に決めていたフォーメーションだ。ヨミが広範囲の探知能力を持ち、アインが精度の高い短距離探知を持っているためこの配置にした。今のところヨミの探知に動体反応はないらしいから大丈夫だろう。ウォーカーの中にはステルス系の奴も居るらしいが、全部気にしたら前に進めない、最低限の警戒をして進もう。それにしても方舟から初めて外に出たが・・・・太陽の眩しい光、植物と大地の匂い、なにか生物としての本能に刺激してくるのを感じる。方舟のどこか画一的な建物の景色と違い、俺はこの自然豊かな大地に感動を覚えた。


しばらく周囲を見渡しながら何事もなく歩いていると・・・


「ちょっとあんた何顔青くしてるのよ!情けないわね!もうちょっとしゃきっとしなさいよ!そんなんじゃ守ってあげないんだからね!」


 わおわおツンツンさんあなたツンツンさんですね!守ってくれるんでしょ?なんだかんだいいながら守ってくれるんでしょ?自分知ってるんだからね!はぁーなんか元気出てきた。よし頑張ろーっと気合を入れた瞬間、俺の頭の横をなにかがかすめて行った。その直後、激しい衝撃と爆風が背後から俺の身体を吹き飛ばした


 クソ!全員の探知に反応なかったのか、ステルス系が居るのは知っていたが早々に出会うとはついてねー、だが今の狙撃で居場所が分かったはずだ、探知範囲が広いヨミに確認しようと地面に転がった身体を起き上がらせ、周囲を見渡すどうやら全員無事なようだと安心する


「全員無事か?敵襲だ!ステルス系のウォーカーだ!探知を掻い潜って来やがった。ヨミ!今の射線から探知出来たか?」


 ヨミの右側に黒い渦のような物があり、その渦にヨミの右手が突っ込まれた。そしてその手に現れたのは赤黒い血管が纏わりついている漆黒のハンドガンだった。まるで命を宿しているかのように脈打っている


 レイブン専用兵装「アーティファクト」だ。その種類は千差万別で一つとして同じ物はないという。ヨミ専用のアーティファクトがこのハンドガンなのだろうと思っていると射撃体勢に入ったヨミのハンドガンに隙間なく眼が現れギョロギョロと周囲を見渡している、その動きが突如止まり視線をある方向に集中させた


「大丈夫もう位置はわかった狙撃する、この「ヨモツイクサ」からは逃げられないシネ」


 彼女の身体から黒い煙のようなものが溢れ出し、その手に持つ銃身に集まっていくのが見えた。彼女が指に力を込めただが銃声の音は響かない引いたのが分からないぐらい静かだった俺は彼女に見惚れていた、その立ち姿や幻想的な光景に眼を奪われて戦場を一瞬忘れてしまったそのせいで仲間の罵声が聞こえていなかった。


「少尉!伏せろ!!!少尉!!少尉!!!!」


 次の瞬間、激しい爆音と共に先程より強い衝撃で俺は吹き飛ばされ、地面を転がり意識を落とした。


 

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