第71話 ステーキ

「はい! つきました。ここが肉料理お勧めのお店突貫亭とっかんていです」

「ここが……」


 キャロに連れてこられた店は、赤い屋根が特徴の煉瓦で建てられた店だった。

 店の外にいるのに肉の香ばしく焼けた良い匂いが……。


「ここのステーキはソースが絶品なんですよ! ささ、中に入りましょう」


 キャロが鉄で出来た大きな扉を開けて、俺たちを中へと案内する。


「おうキャロじゃねーか! 久しぶりだな。今日はまた大勢引き連れて珍しいな」


 

 入ってすぐにカウンターにいた、熊みたいな見た目の大きなオッサンが話しかけてきた。

 キャロと仲がいいのか、俺たち物珍しそうに見てくる。この人がお店の店主みたいだな。


「へへへ、僕の大切な人たちなんです。クマオーさん今日はイッチバン美味しいステーキを下さいね」


 クマオーって、見た目のまんまじゃねーか。


「ほう、キャロの大切な人か。じゃあ今日仕入れてきた最高の肉を出してやるからな」


「わぁい! クマオーさんありがとう。ささっ、席について待ってましょう」


 キャロがそう言って俺たちを奥の席に座らせた。


 美味い肉か、これは楽しみだな。名物のラーメンはちょっと期待外れだったからな。

 今度こそ期待したい。


『なんだかうんまそうな匂いがするでちねぇ』

「おお? 琥珀、ケーキはもう良いのか?」

『この肉の香ばしい香りを嗅いだら口が肉でち』


 そう言って琥珀は、ヨダレを啜りながら腹をパンパンっと叩く。


 琥珀よ、お前は本当に召喚獣なのか? その姿は着ぐるみで中におっさんが入ってねーか?


『本当にい良い香りがしますね。肉とソースの香りがマリアージュしてて食欲をそそりますね』


 琥珀と違って我路は感想までイケオジだな。マリアージュなんて恥ずかしいセリフ言うやつに初めて会ったぞ。我路も違った意味で召喚獣らしくない。そもそも人の姿な訳だし、獣ってのもおかしいよな。召喚……人?

 

 召喚人しょうかんびと、またの名を召喚人イケオジだな。


『らんちゃ、にきゅ』

「はは、稲荷も楽しみか」


 嬉しいのか稲荷は俺の膝の上に座りながら足をパタパタと揺らせる。


 稲荷は大分言葉を覚えた。もう俺の言ってる事なら何でも分かるだろうな。やっぱりこいつは賢い。

 決して親バカじゃないぞ。


「はいお待たせー! クマオーの特別ステーキだ。うんまいぞー」

『ふわわわっ! うんまそうでち!』

「うゆ!」


 テーブルに分厚い肉が乗った皿が並べられていく。それを見て琥珀と稲荷がヨダレを垂らす。

 だけど、皿が普通の皿なのが残念だな。俺の中では鉄で出来た皿で、ジュウジュウって目の前で焼かれてるのが、ステーキって感じだからな。

 今度鉄の皿も作ってみるか。絶対その方が美味しいと思うんだよな。

 

「食うか!」


 分厚いステーキを切って口に入れると、甘い肉汁とソースが口の中に広がる。


「うまっ!」

「でしょ? クマオーさんのステーキは絶品なんですよ」


 キャロが自分の事のように得意げに話す。


『旨いでち』

『うま! うま!』

『ほう……これは想像以上に美味しいですね』


 みんながステーキを食べて美味いと口々に話す。

 分かる! 俺の想像を遥かに超えてステーキはうまかった。

 この店に毎日通いたいくらいだ。


 美味い飯も食ったし、次は稲荷の謎を解明しにいくか。


 突貫亭を後にして、俺たちは資料研究所に向かった。



★★★



あとがき


クマオーの名前……熊獣人…クマ、クマオ、クマオー!

こんな感じで決まりました。名前を考えるのが苦手なんです。


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