第72話 資料研究所

「ここが資料研究所になります!」


 キャロに案内されて到着した資料研究所は、想像をはるかに超えて大きな建物だった。

 なんて言うんだろう……外国にある、古い美術館のような厳かな外観。


「なんて言うか……デケェな」

『格式が高そうな研究所ですね』

「ウユっ」


 稲荷を胸に抱いた我路が、資料研究所をほうッと声を漏らし見つめている。


『らんどーちゃま、ここで何をするでち? なんだか高そうな建物でち』

「んん? 稲荷の謎を調べに来たんだよ」

『稲荷の……何か見つかるといいでちね、じゃあワレもマントを羽織って……よいしょっ』


 琥珀はマントとシルクハットをアイテムボックスから取り出し着用した。

 それっていつも怪盗コハクごっこをしてる時に着てるセットだろ。

 なんでそれを今着用するんだ。


『これでワレも紳士でち』


 なるほどな、琥珀からしたら厳かでなんだか高そうな見た目の建物だから、紳士っぽいと思う服装を着たのか。

 ったく。なんというか……おバカで可愛な。


「キャウウン♪」


『ちょっ!? 銀狼!? ワレのマントを返すでち!』


 銀狼にマントを奪われ追いかけっこをしている。

 何やってんだか。


「琥珀、銀狼、遊んでないで中に入るぞ?」

『遊んでないでち! 銀狼のやつがっ』

「キャウ♪」


 俺にそう言われると、慌ててついてくる琥珀に銀狼。

 銀狼は全く理解してないようだが。


 中に入ると、どこを見ても本、本、本のオンパレード。

 

「すげえ本の量だな」

「はい。ここには獣人国にある全ての本が保管されています。ここに置いてない本はないと思います」


キャロが歩きながら得意げに話してくれる。

 確かにこの本の量、期待できそうだ。


「じゃあさ? 古い文献とかも置いてたりする?」

「もちろん! 乱道様はどんな本をお探しで?」

「種族についての本だな。幻獣族について書いてある本を探してるんだ」

「……幻獣族。ですか。太古に滅んでしまった種族ですよね。それだと、かなり貴重な資料となりますので、王族しか入ることが出来ない資料庫にあるかと」

「ってことはだ、キャロなら入れると?」


 俺がそう言うと、キャロは少し得意げに顎を上げてニヤリと笑う。


「えっへん! ボクはこう見えて王族ですからね。では資料庫へ向かいましょう」

「さっすがキャロ!」

「貴重な資料を置いている場所に稲荷や銀狼を連れて行って何かあるといけないので私はあそこで待っていますね」


 気がきく我路が、稲荷と銀狼を抱いて奥にある休憩できる場所へと歩いていく。


 ……イケオジ!! 気が利き過ぎだろ。


「我路ありがとな。じゃあ頼むぜ」


 キャロはさぁついてきて下さいと言うと、中央にある大きな階段を上がっていく。

 三階まで上がると、長い廊下を歩いて、一つの扉の前に立つ。


「この王族しか持っていない魔道具が扉の鍵になっていまして、これを使わないと中に入れません」


 キャロが首から下げていたネックレスを俺に見せると、扉にかざした。

 するとガチャンっと音がして扉が開いた。


「さぁ、中に入りましょう」

「おう!」


 中に入ると、なんて言うんだ。古本屋の匂いがする。

 いかにも古い本がありますって雰囲気だ。


「ええと……種族についての本は確かこのあたりで……あった。これです!」

「まじか! どれどれ!」


 キャロの所に走っていく。


「これとか……種族について書かれいると……痛っ!?」


 キャロが本を取ろうとすると、透明の見えない壁が邪魔して本が取れない。


「なんで!? さらに封印しているの!?」

「目の前にるのに本が取れないとか……って!」


 俺も取ろうとするが透明の壁はびくとしない。


 二人でどうしようかと項垂れていたら……


『にしっしっ! らんどーちゃま? ワレのことを忘れてないでち? こんな封印ワレの力を使ったら簡単に解けるでちい!』


 琥珀が鼻息荒く得意げにドヤりながら、マシーンの姿に変身した。


 ———そうだった! 琥珀の力で封印も解けるんだった! それでエセ王国からお宝を頂戴したんだったよな。


「そうだったな琥珀!」


 俺は琥珀を握り締め透明の壁に触れた。

 強い振動の後バリンっと大きな音がした後、封印が解けた。


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