第43話 琥珀無双
「暑いな……」
空を見上げると、太陽によく似た星が二つ並んで浮かび、力強い日差しで燦々と照りつけてくる。
元の世界では一つしか無かった太陽が二つ。その二つが織りなす力強い日差しが、ここは異世界だと物語っている様だ。
俺たちは城下町イスカンダルを出て、大きな広い平原にまで歩いて来た。
この場所にも小さな魔獣はいるんだが、弱い魔獣なのか襲って来ない。
「なぁ? こんな場所まで移動してする事か?」
「何を今更? 広い場所でないと、我が召喚獣が召喚できないでしょう? 街で召喚獣を出すと壊してしまいますからね?」
「……そりゃそうだがな」
いつの間にやら、俺とルミ野郎の周りには、大勢の人で人集りが出来ていた。
ギルドにいた冒険者達だけでなく、街の人達まで集まって来ている。
手に串焼きを持ち、食べながら見ている奴も居て、まるでお祭り騒ぎだ。
中には俺とルミ野郎のどっちが勝つかと、賭けまではじまる始末。
「では勝負と行きますか。ええと確か、あなたは乱道と名乗ってましたか? 乱道が私達の前で平伏し、もう二度と嘘はつきませんといったら、許してあげてもいいですよ?」
「へーソレハお気遣イアリガトウ」
ルミ野郎はニヤリと口角を上げてシタリ顔で笑う。俺が土下座するとでも思ったんだろう……だがな?
「さっさと
「……っ! 馬鹿な男だな。いつまでその威勢が続くのか見ものだな」
ルミ野郎は羽織っていたローブを脱ぎ、大袈裟に投げ捨てる。
「「「「おおーっ!!」」」」
観客達からはルミ野郎の聖印を見て、大歓声が巻き起こる。
大歓声を聞いたルミ野郎は、嬉しさが隠しきれてないのか、鼻の穴がピクピクと広がっている。
お前この歓声が欲しくて大袈裟にローブを脱いだな?
『さぁ! らんどーちゃま。行くでちよ?』
「行くでちって、琥珀どうする気なんだよ?」
『どうするって、あいつの聖印を消して奪ってやるでち』
「なるほどな。消して奪うのか……って!? は?」
『だからぁ。
そんな事が出来るのかよ!?
『らんどーちゃまのレベルが上がった事で、ワレの新たなる力が解放されたんでち』
琥珀はマシーン姿なのに、フンスっとふんぞり返っているよう。
「マジで?! 琥珀すげえじゃねーかよっ」
『ふふふっそうでち。さぁ行くでちよ? あいつが詠唱し終える前に、聖印を消して奪うでち』
「りょーかいだ!」
俺は足に力を入れると、前に向かって思いっきり蹴り上げた。
すると体が飛ぶように動き、ほんの一瞬でルミ野郎の懐に入り込んだ。
ルミ野郎はカッコをつけ、両手を上に掲げて詠唱していたので、上半身がガラ空きだ。
俺はすぐさま胸に描かれていた鳥の聖印に、琥珀を当てた。
すると聖印から神々しい鳥がふわりと羽ばたき現れる。
次の瞬間。タトゥーマシーンの中へと、吸い込まれるように消えていった。
「はっ!? え?」
詠唱の途中で、鳥が現れたかと思ったら忽然と姿を消したので、ルミ野郎は何が起こったのか理解が追いついてないようだ。
口をあんぐりと開け、物凄い間抜けな顔をしている。
「ブッッ……ククッ」
『間抜けなお顔でちね。プププ』
ルミ野郎は聖印が消えた事には、気づいていないようだ。
それよりもいきなり目の前に現れた、俺に対して驚いている。
俺が現れた所為で、詠唱が中途半端となり、鳥が 消えたと思ったのか、逃げるように慌てて離れると、再び詠唱を始めたので、また同じように近づき、今度は亀の方も消してやった。
亀の聖印も鳥の時と同じ様に、フワリと一瞬飛び出るも、すぐさま琥珀の中へと、吸い込まれるように消えていった。
「琥珀すげえな……」
『ふふふっそうでち? ワレは凄いんでちよ!』
琥珀のドヤり顔が、タトゥーマシーン姿なのに見えるようだ。
亀を奪うと、俺は一旦ルミ野郎から離れた。
ルミ野郎は再び詠唱を始めるが、詠唱を終えても鳥が現れない事に首を傾げている。
ふと……爺さん達の方を見ると、ワナワナと真っ青な顔で震えている。
どうやら聖印が消えたことに気付いたようだ。
クククッもう遅いがな? お前達の大召喚士様は終わりだ。
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