第44話 紋が消えた!?

「だだっ大召喚士ルミエール様! かかっ体に描かれている紋が消えています!」


「ないっ!? 紋が無い!?」


 爺さん達がルミ野郎に慌てて駆け寄り、聖印が消えた体をペタペタと触っている。


 その表情があまりにも必死で、見ていると思わずこの緊迫したこの場面で笑っちまいそうになる。


『プププッ間抜けな奴らでちね』


 琥珀はいつものぬいぐるみ姿に戻っており、ニチャァっと小馬鹿にした笑みを浮かべて、爺さん達の間抜けな姿を見ている。相変わらずというか……。


 焦る爺さんたちの言葉を聞き、ルミ野郎が自分の体を見て目を見開く。


「なぁああああああああああっ!?」


 広場にルミ野郎の絶叫が響きわたる。


 どうやらルミ野郎は、やっと紋が消えた事を理解したのか、奇声を発した後、膝からガクリッと崩れ落ちた。

 それを爺さん達が必死に、宥めている。


「おいおい? 勝負の途中に乱入は頂けねーなぁ?」

 

 消えた紋に焦る爺さん達にワザと「何してるんだ?」っと何も気づいてない素振りで話しかけると。


「おっ! お前! お前がその奇妙は魔導具で何かしたんじゃろ!」

「そうじゃ! 急に聖印が消えるなどありえん。お前が何かしたとしか! 考えれん」

 

 焦る爺さん達は、プルプルと震える手で俺を指差し、お前のせいだと言ってくる。


「……仮に俺の所為だとしてもだ? 今は勝負の真っ最中だぜ? そこに爺さん達が途中で乱入するって事は、そのルミ野郎の負けを認めるって事だよな?」


「…………なっ?! あっ?」


 そう言うと、アワアワと困る爺さん達。

 見ていたギャラリー達からは、ブーイングの嵐だ。


 まっそりゃそうなるわな。


 だって俺達はまだ勝負らしい事、何にもしてねーんだから。


「あっ、そそっ……そうだ! 太ももに描かれていた狼の紋は!?」

「そうだ! それも消えたのか!?」


 爺さん達がそう言うと、戦意喪失していたルミ野郎の顔が、花が咲いたようにパァッっと分かりやすく明るくなる。


「そうだ! 私にはまだ銀狼の紋が!」


 ルミ野郎は大勢の前で恥ずかしげも無く、真っ黒のワイドパンツを脱いだ。

 すると狼の紋が太ももに現れる。


「よかった……これは消えていない」


 まっそりゃそうだよな。俺消してねーし。


 消えてなくて良かったと、安堵するルミ野郎を見て琥珀は『ククク。その紋も奪ってやるでちかね~?』っと短い手でどうにか腕組みをして威張っている。


 琥珀よ? お前可愛い顔して中々の悪だな。


『らんどーちゃま? あの狼も奪うでち?』


 キュルンとあざとく俺を見る琥珀。言ってることは鬼こえ~けど。


「茶番はもう終わりだ! 私の最強である召喚獣、【銀狼ぎんろう】を見せてあげましょう」


 ルミ野郎は高らかに笑うと、詠唱を始めた。ふんどしのような黒いパンツを履いただけの姿で……。


 お前……それは……恥ずかしくないのか? それもどうかと思うぞ?

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