第42話 琥珀の新たなる力

「なっ!? なんだその不思議な魔道具は!?」

「奇妙な形をしておる……」

「あの虎のような生き物は、何処に行ったのだ!?」

「急に姿が消えた……!?」


 琥珀がタトゥーマシーンの姿にいきなり変化したので、その変化に追い付けない爺さんたちや冒険者たちは、いきなり登場した琥珀のこの姿に驚いている。


 どうやら琥珀イコールタトゥーマシーンの図が考え付かないようだ。


 まっそりゃそうか。

 姿が変わるとか、普通は想像もつかないよな。


 俺だって理解にくるしむと思うしな。


「生意気言っていた、あの妙な虎は何処に行ったんだ?」


 ルミなんっ……めんどくせえな。

 コイツはルミでいいや。ルミ野郎は琥珀がいなくなったので、キョロキョロと辺りを見回している。


 琥珀を探してるんだろうな。


「……なんだ。私が怖くなって、尻尾を巻いて逃げたのだな。あははっ口だけ達者な奴め」


 ルミ野郎は嘲笑って琥珀をバカにする。


 それを聞いた琥珀は。


 ルミ野郎の高笑いに、腹を立てプルプルと震えると。


『なっ! ワレは逃げてなどいないでち! 琥珀DXタトゥーマシーンに変化しただけでち』


 マシーン姿でブンブンと上下に暴れる。


「わっこら! 琥珀!?」


 急に激しく動くもんだから、俺は右手に持った琥珀に振り回されそうになる。



「お前はなにをやってるんだ?」


 そんな俺の姿を、バカにしたように見るルミ野郎。


 クソッ。


「さっきの奇妙は虎は急に居なくなった。飼い主のお前が責任とって、凄い力とやらを見せてくれよ? まぁそんな力があればだが、ククッ」


 今度は俺の力を見せてみろと、ルミ野郎が馬鹿にしたように言ってきた。


 クルトンといい何なんだ? 


 そんなにしてまで、人を下にみたいのか? 俺にはよく分からねえ感情だな。


 ……ったく。何が楽しいんだか。


 そんなつまらねぇ感情に、いちいち付き合ってられっかよ。


 俺が呆れたようにルミ野郎を見ていると、意気揚々と気持ち良さげに話を続ける。


「皆様、よく聞いてください。この男は、自分で聖印を書くような男ですよ? そんな男が古代魔法を使えるなんて私はそうは思えません。きっと別の誰かのした事を、さも自分がやったかの様に言っているだけかと」


「「「「………!!」」」」


 ルミ野郎のその言葉に、爺さん達やギルマスが、目丸くしてお互いを見合っている。


「まさかと思うが……ギルドマスターよ? この男が魔法を発動した時、近くに居なかったんじゃ……? ちゃんと確認しましたよね?」


 髭の爺さんが、そう言ってギルマスをジロリと睨む。


 ギルマスは爺さんの言葉に、動揺が隠せず生唾を飲み込んだ。


 そりゃそうだろうな。

 だって離れたところから見てたもんな。


 ワイバーンに至っては、真っ先に逃げ俺が討伐してから、ノコノコと戻って来やがったしな。

 お前見てねーもんな。


「そっ……それはそのう……」


「まさか!? 見ていないのか!?」


 ギルマスは、何とも気不味そうな顔で頷く。


「…………はっ。なんて事だ。我らはとんだ茶番劇につき合わされたって事か。わざわざ出向いて来て……居たのは偽物ポンコツ男」

「古代魔法をその偽物男が使えるとかおかしいと思ったんじゃ……」

「またその男に騙されたのか……」


 白髭の爺さんを筆頭に、魔法師長と呼ばれている黒いローブを羽織った爺さん達が、呆れたように俺を見る。


 何を勝手な解釈をしてるんだ? 


『乱道様……コイツらは馬鹿なのでしょうか? 何故そんな解釈になるのでしょう?』

 

 爺さん達の話を、黙って聞いていた我路が、不思議そうに首を傾げる。


 ほんとそれな。多分こいつらは異次元の考え方をしてるんだろうな。


 想像するにコイツらは、一度自分達が偽物ポンコツ認定した男が、やっぱり凄かったなどどと、思いたくないんだろうな。


 ……ったく。しょうもないプライドだぜ。


『らんどーちゃま。早くやってやるでち!』

 

 そんな中、琥珀だけが闘志をメラメラと燃やしている。


 やってやるって……何をする気なんだ琥珀よ?


「これ以上この偽物男が調子に乗らないよう、お仕置きが必要ですね。その役目私に任せてくれませんか?」


 ルミ野郎が俺をお仕置きするとか大声で言い出した。


 勝手に言ってろ。


 そのルミ野郎の言葉に賛同したのか、爺さん達も「おおっそれは良い。折角だから召喚士様の召喚獣も、お披露目したら良いですね」っと口角を上げて話す。


「よし! 偽物男よ、街の外に出て私と勝負だ!」


 …………何を言ってるんだこの男は。勝負って……お前さっき、お仕置きとか言ってただろ?


 急に正当化しやがって。


 本当はそんな話に乗ってやる程、俺は親切じゃねーんだが。

 今回はかなりバカにされたし、なにより琥珀が乗り気だからな。


 この変な勝負受けて立ってやるよ。

 いやいやだけどな?

 お前の言う事を聞くんじゃねぇからな。

 琥珀のためだ。



「……….分かったよ」


『勝負でち!』

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