第39話 古代魔法

 ギルマスと黒ローブの男達が、ギルド内を我が物顔で闊歩し、ギルドの中いた冒険達は、皆静かに道を譲る。


「偉そうな奴らだな……」


 全部で何人だ? 黒ローブの男がイチ、ニィ……八人か。それにルミなんとかをいれて全員で九人。


 何となくだが見覚えのある顔。

 こいつら……俺が召喚された時にいた奴らじゃ。


 ギルマスと男達が、ギルドの中央にある一番大きなテーブルを陣取ると、ギルマスが急に大きな声を出し「おいっ昨日の男は来ているか!」っとサラサを呼びつけ、言い放った。


 なんて目立つ呼び方をするんだ!?

 こんなふうに言われて、「はいっ、俺っす」ってノコノコと出て行くやつがいたら、教えてくれ。


 俺は静かにギルドを出て行こうとすると、一人の男が俺の手を取り「ここに居ますよ!」っと言いやがった。


「えっ!? なっ!?」


 次の瞬間。


 俺の周りにいた男達がざっと離れ、ギルマスと黒ローブの男達から丸見えになる。


「おまっ!? なんて事してくれんだよ」


 俺の手を握っていた男は、昨日の魔法師クルトンだった。


「魔法師長たちが、お前のインチキを暴きに来たんだよ。ククク……もうインチキは出来ないぞ?」


 このクルトンはアホうなのか? インチキだとしてもだ、ドラゴン二体に緑色の魔獣を殲滅したんだぞ?


 普通に凄いだろうが。 


 そもそもインチキするようなやつは、そんな事できないと思うがな?


 クルトンの野郎は、ニヤニヤと嬉しそうに、馬鹿にした目で俺を見てくる。


 ここまでバカだと、もう怒る気が失せる。


「そこに居たのか? こっちに来てくれ。魔法師長様に紹介する」


 ギルマスが俺に気づき、こっちに来いっと手招きしている。


 どう考えても面倒なことになりそうだし、行きたくないが……仕方ない。


「…………へーい」


 俺は返事をして、ギルマスがいる所に歩いて行く。


「この男が、召喚獣でさえ使えないような謎の魔法で、オークの集団を一瞬で殲滅したのです。中にはキングやジェネラルもいたと言うのに! その場に生えていた木々さえも、消え去ったほど」


「こやつが……」


 魔法師長様と言われている男が、舐めるように俺を見る。


 この顔は忘れもしない、あん時の白髭の爺さん! 


 俺を偽物ポンコツと言って、下民の紋をいれた事は、今でも忘れてねーぞ。


「お主が大魔法を放ったと言うのか? なんという魔法を使って、オークを殲滅したんだ?」


 爺さんが不思議そうに俺を見てくる。


 ってか俺の顔見ても、なんの反応もない……もう顔を忘れたのか?


 ひでぇ爺さんだ。

 

 返事を中々返さないでいると、早くしろっとアピールしてくる。

 相変わらず、せっかちな爺さんだ。


 ———なんて魔法? ええと何だったか? 


 「………確かテンペストって魔法だ」


「「「「「なっ!?」」」」」


 俺が魔法名を答えると、周りにいた爺さん達までもが騒つき出した。


 どうしたってんだ?


「何でお前が……古代魔法を使えるのだ!」


「……へっ?」


 古代魔法?


 座っていた爺さんが、椅子から慌てて立ち、俺の両腕を掴み体を揺する。

 ……またか、この爺さん距離感がバグってるんだよな。


『我が主から離れてもらえますか?』

「ヒィッ!?」


 我路が爺さんの首元に、日本刀の剣先を突きつける。


 口元は少し広角が上がっているが、目は全く笑ってない。


『我が主に、これ以上の無礼をするのなら、私も黙っていられませんね』


 我路はさらに剣先を近づける。

 そのせいで爺さんの首が微かに切れ、血がうっすらと流れる。


「はっ離れる!」


 爺さんは慌てて俺から離れた。


 そして僅かに切れた首をさすりながら「……じゃから、何で古代魔法を知っておるんじゃ?」ともう一度俺に言った。


 古代魔法って言われてもだな?

 本で見ただけなんだが……。


「はぁ……っ。あれだ。本に書いてたんだよ」


「「「「「なっ!?」」」」」


 俺が頭をボリボリっと掻きながらそう言うと、また騒がしくなった。


 …………一体何だってんだ?

 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る