第32話 サタン召喚


 サタンに名前……?

 このサタンのタトゥーは、初めてトライバルタトゥーに挑戦したんだよな。懐かしいな。


 サタンをどうアレンジして、トライバル模様を作ろうか悩んだよな。

 カッコ良くしようかとか、流行りっぽいのを入れようか、民族っぽいのにしようかっと悩んだなぁ。


 結局。我が道を突き進み、その時の閃きで作ったんだよな。


 ——我が道? ……みち……我路わがみち

 我路ガロ……おおっ。我路か! ……いいな。決めた。


「サタン。お前の名前は【我路ガロ】だ」


 そう言うと、琥珀の時と同じように腕が輝き……!?


『我があるじ乱道様。私に素敵な名前を与えてくださりありがとうございます』


「へ?」


 目の前には、長めの白髪を後ろで緩く縛った、赤い目の紳士が立っていた。

 その姿は蝶ネクタイをし燕尾服を着ていて、白の手袋をはめた右手には日本刀を握りしめている。

 ハッキリ言って、男の俺が見てもカッコイイ。


「お前がサタン?」

「はい。今は我路でございます」


 そう言って白髪の紳士は綺麗にお辞儀する。


 サタンのキャラと違いすぎねーか!?

 何だよこのイケてるおじ様は!? 

 俺はもっと違うのを想像していたぞ!? よくある悪魔っぽいやつな?

 カッコよくて紳士とかズルすぎねーか?


『なんでしょう?』


 俺がジッと見ると、我路はニコリと優しく微笑む。


 うん、俺が女ならイチコロだな。


 琥珀の力はタトゥーだった。なら我路の力は?

 

「……それで我路、お前の力は何なんだ?」


『私の力は剣舞です。乱道様の右腕となりましょう。後はそうですね? 乱道様の身の回りのお世話などもお任せください』


 イヤイヤどうせなら、身の回りのお世話は、メイド姿の綺麗なおねーさんを召喚したい。

 などと考えていたら、我路の表情が険しくなる。


『乱道様? どうやらユックリしていられないようですね?』


 そう言って何もない空を見上げる。


 ユックリ出来ない? 何が言いたいんだ?

 緑色の気持ち悪い魔物は全て消え去ったし……他に何が……?


 なんて考えていたら。


「なっ!?」


 稲荷と初めて出会ったような振動が!? 空気が震えている!


「これは!?」

 

 次の瞬間。


 時空が歪み、目の前に大きなドラゴンが二匹現れた。

 その上には武装した男が乗っている。

 

「がうううっ!」


 稲荷が身を乗り出し男に吠える。


「稲荷?」


 コイツら突然現れたぞ!? 

 さっきまで何も居なかったのに、まるで何処かから転移してきたような……。


 ギルマスや冒険者たちは、この大きなドラゴンに驚き、急いで逃げて行く。

 俺に討伐勝負だと、偉そうに言っていたクルトンの野郎は、真っ先に走って逃げていた。

 あの野郎め。逃げ足が一番じゃねーか。


『乱道様、ここは私の力を使いますか?』

「我路の力?」

『はい。私の力を使えば、身体強化や剣術が使えるようになります。こんな奴ら瞬殺です』


 身体強化に剣術? どっちも俺には無縁な感じだが、瞬殺だって!? かっこいいじゃねーか。


 我路と話していたら、ドラゴンに乗っていた男が急に飛び降り、俺の前に立つ。


「おおっ! 九尾の狐! 早速見つけることが出来るなんて! ラッキーだな」


「はっ?」


 男はそう言って、俺の腕に抱いている稲荷を見て、ニヤついている。


 この男は稲荷を知っているのか?

 何で?


「がううううっ!」


 稲荷は男に向かって牙を出し吠える。


 この男と稲荷……どんな繋がりがあるんだ?

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