第31話 魔獣討伐 ③

「えっ!?」


 テンペストと唱えると

 嵐の様な突風が吹き荒れ、俺の真上に黒い真空の大きな渦が出来上がっていく。

 

 爆風のせいで立っているのがやっとなほどだ。

 ちょっと待てくれ、これヤバくないか。


 渦は轟々と風を集め、凄いスピードで大きな竜巻を形成していく。


「うわぁぁぁ! 何だあれ?!」

「ヤバいぞ! 逃げろ!」

 

 俺の頭上に広がる竜巻に気づいた冒険者達が、竜巻から逃れようと突風の中、散り散りに逃げる。

 離れた場所まで走っていくと、木々にしがみ付き身を隠している。


 気がつくと。

 その場には俺vs緑色の魔物達の絵図らが出来上がった。


 ギルマスや屈強な冒険者達は、竜巻を恐れ木々の隙間から、静かに俺と魔物の様子を見つめている。


 その間も竜巻は大きくなる一方。


 この竜巻どうしたら良いんだ? これ以上デカくなったらやばくないか?

 今でも恐ろしい大きさだが。


 もう上を見て、デカさの確認をするのが怖い。これ以上大きくなる前に、どうにかしたい。


 緑色した奴らに、飛んでけーっとか言ったほうがいいのか?


 なんてそう思った次の瞬間。


 頭上で渦巻いていた竜巻が、魔物に向かって一目散に飛んで行った。


 ドゴオオオオオオオオンッ!!


 耳をつんざくような轟音の後。

 目の前は爆風のせいで土煙が立ち上がり、何も見えなくなった。


「ゴホッ。稲荷大丈夫か? 吸い込むなよ」

「うゆぅ」

 俺は土煙を吸い込まないように、稲荷をジャケットで包むと、土煙を避ける様に座り込んだ。


 数分もすると、視界がクリアになってきたのか、再び騒がしくなってきた。


「あっあわっ……」

「……何だこれっ?」

「嘘だろ?」


 土煙はおさまったのか?


 俺は立ち上がって前を見る。

 


「…………マジかよ?」



 目の前の景色は、全く別の景色に変わっていた。


 緑色の魔物どころか、生い茂っていた木々も消え去り、ただっ広い平地がどこまでも広がっていた。





★★★




 呆然と立ちつくしていると。



「おいっ! お前は一体何をやったんだ!」

「え?」


 ギルマスが震える足を引き摺り、どうにかこうにか、俺の所にまで歩いてきた。


「何って? 風魔法だが?」

「魔法だって!? あんな厄災級がか!? 召喚獣を使っても、あんな事できないぞ!?」

「んな事言われたって……出来ちまったんだし」


「…………はぁ。信じられねぇ」っとブツブツ言いながら、ギルマスはぶっきらぼうに頭を掻いた。


「だから言っただろ? 俺は魔力なしじゃねーって」

「………計測出来ないほどの魔力。それが本当だなんて……信じられん」


 そう呟くと、その場にへたり込んだ。


 ん? よく見るとギルマスのパンツ……股間のところが濡れてねーか?

 もしかして気付いてねーのか?


「ククッ。ってかギルマスは、あの竜巻がかなり怖かったんすね?」


 俺がそう言うと、ギルマスは眉をピクリと動かし、顔を逸らす。


「………そんな事は……ない」

「そうっすか? お股が怖さを物語っているようだけど?」

「へ? 股? うわっ!?」


 やっと気付いたのか、慌てて恥ずかしそうに股間を隠す。


「こっ……これはだな!? 持っていた水を溢したんだ!」

「へぇ……ソウデスカ。クク」

「わっ笑うな! 水だと言ってるだろ! おいっ!」


 頭から湯気が出てるんじゃねーか? と思うほどに、真っ赤な顔で怒っている。

 全く怖くないけどな。


 流石にいたたまれなかったのか、冒険者たちに報告して来ると、逃げる様にその場を去った。


「あははっ。いい歳こいてお漏らしとか……プププ」


 アイツには嫌な思いさせられたからな。ちょっとスッキリしたわ。


 ん? 


 俺の左腕が光ってる?

 腕というか……サタンのタトゥーが光ってるのか?


「うわっ!?」


 いきなり目の前に、ステータス画面が現れた。


名前 乱道


レベル 31 up↑

種族 人族

力  C/SS up↑

体力 E/SS

魔力 SSS/SSS


スキル 召喚 D/SSS up↑

鑑定 E/SS

アイテムボックス E/SS




 《レベルアップしたので新たにサタンを召喚できます。さぁ名前をつけて召喚してください》


 え……レベルアップ?


 緑色の奴らを討伐したからか?


 左腕に描かれたサタンが、早く名付けろとでも言っているかのように光り輝く。


 …………名前ってコイツに?

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