第30話 魔獣討伐 ②


 一番隊の先頭を、ギルマスがみんなを引き連れ歩く。


 性格に難ありだと思うが、一応Aランク冒険者らしい。


 その隣を筋骨隆々の男達三人が、偉そうに闊歩している。


 このメンバーで、過去に冒険者チームというのを組んでいたらしい。

 今はソロでそれぞれ活躍していると、聞いてもいないのに、大声で自慢しながら歩いていた。

 そんなに凄いんなら、全てギルマスにお任せしますよ。


「うゆう!」


 稲荷が俺の肩に乗り、森をキョロキョロ見ている。

 この森が懐かしいのか?


「稲荷? なんかあったら俺から離れんなよ?」

「うぃ!」


 稲荷がにちゃあっと笑う。……ったく言ったこと、ちゃんと理解してんのか?


 本当はギルドで留守番して欲しかったんだが、稲荷が俺から絶対に離れなかったので、仕方なく連れてきた。


 まぁ本来の姿に戻れば、天災級の九尾の狐だからな。

 全く心配ないんだが、今の姿は小さな幼子だから、ついつい心配してしまう。


「いたぞ!!」


 稲荷を撫でていたら、前を歩くギルマスが、急に声を荒げる。

 魔獣の登場か?


 急いでギルマスがいる所まで走っていくと……!


 緑色した人型の魔物が、こっちに向かって気持ち悪い笑みを浮かべながら、ユックリと歩いて来ていた。


 何匹居るんだ!? 目視できるだけでも二十はゆうに超えている。


 正直言って気持ち悪りぃ集団。

 体長だって余裕で二メートルを超えている。

 今からこんな奴らと戦うのか?


「オークにあれは……オークジェネラル!?」

「ちょっと待て!? キングも居るぞ!」


 緑色の魔獣はオークと言う魔物らしい。

 服を着ている奴や、頭に王冠を被っている奴がどうやら強いみたいだな。


 鑑定してみると、王冠を被っている奴が、オークキングで一番強いな。

 って言ってもキングでAか。

 まぁ……そのレベルなら大丈夫か?


 ギルマスが「オークキングは俺たちが討伐するから、お前達はオークとオークジェネラルを頼む」そう言って仲間の男達を連れオークキングへと向かっていった。


「おい? どっちが多くオークを倒せるか、今から勝負だからな?」

「はぁ?」


 この緊迫した状況下の中、クルトンが討伐勝負だと言ってきた。

 おいおい……あれって本気だったのかよ。

 こんな状況下の中、よく勝負とか言えるぜ。


「はぁ……リョウカイッス」

「ククク……まぁ討伐経験のない君には、一匹討伐するのも苦戦するだろうがね」


 クルトンはそう言うと、魔獣に向かって走っていった。


 さて俺も魔獣討伐しますかね。


 確か……魔法について書いている本あったよな。


 アイテムボックスから、魔導書と書いている本を取り出した。


 おおっ、スゲエ。魔法名がいっぱい書いてある。

 折角だし、次は使った事のない魔法を使うか……。


 何にしようかな。


 炎と雷は使ったから次は……よしっ。風魔法にしよう!


 クルトンの奴が、討伐数勝負とか言ってたからな。

 どうせなら、一度に多く倒せる魔法がいいよな。

 俺は魔導書を捲りながら、広範囲魔法を選ぶ。

 

 ふぅん……テンペストか。


【広範囲魔法、一瞬で粉微塵になるSランク魔法】


 俺って確か……Sランク魔法まで使えるんだよな。

 Sランク魔法って、どのレベルなんだろう?


 ……ちょっと試してみるか。


 この時。


 こんな事を考えなければ良かったと、後に俺は酷く後悔する事になるんだが、この時の俺はそんな事知る由もなく。



 《テンペスト》




 厄災級の魔法を放つのだった。



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