第29話 魔獣討伐 ①
「集まってくれた冒険者達よ! 感謝する。今日の魔獣の討伐料は、いつもの倍出すから頑張ってくれ!」
「「「「「ウオオオオオオオオオッ!」」」」」
ギルマスの言葉に興奮する冒険者達。
俺は冒険者じゃないんだけどな。
あの後、城下町イスカンダルにいた冒険者達が、ギルドに至急集結した。
Dランク以上の冒険者だけが、この討伐に参加することとなったんだが……冒険者ランクっと言うか、身分証さえもまだ作って貰えてない俺が、参加することになった。
どう考えてもおかしいんだが、魔法師クルトンが俺を討伐に連れて行きたいと言うと、すんなり決まってしまった。
ギスマスからは(仮)冒険者Dランクというカードを渡されて。
この国じゃ魔法師様の言うことは絶対なのか? なんて国だ。
「うゆ?」
はぁーっと大きな溜息を吐いたら、腕に抱いていた稲荷が、ポンポンと頭を撫でてくれた。
「ははっ……稲荷ありがとな」
「乱道様……大丈夫ですか?」
そんな俺たちにサラサが話しかけて来た。
少し不安げに俺を見る。
「まぁ……危なくなったら、走って逃げるわ。心配すんな」
「絶対ですよ! 無理しないで下さいね」
サラサが手に持っていた小瓶を俺に渡してきた。
「これを飲むと傷などが少し治ります。気休め程度ですが持っていて下さい」
「そうか。それは助かるよ」
サラサと話していたら、みんながギルドを出ていく。
どうやらディアナの森に向かうようだ。
……さてっと俺も適当に頑張るか。
★★★
「まじ?」
…………何で俺が最前線なんだ?
森の入り口で討伐隊列を、ギルマスが決めていってるんだが、最前列には魔法師やBランク冒険者達という手練が並ぶ中、何故かその横に俺がいる。
CやDランクの冒険者は皆後ろなのによ。
おかしくねーか? 俺(仮)Dランクカードだぞ?
「これで君が本当に優れている魔法師なのかが分かるね?」
俺のすぐ横に立つクルトンが嫌味な顔で話しかけて来た。
「……ソウデスネ 」
「クルトン? 何を言ってるんだ? こいつが優れた魔法師?」
するとクルトンの横にいる男までが、会話に入ってくる。
この男もクルトンと同じ様なローブを羽織っているので、どうやら魔法師なんだろう。
「こいつはさ、魔力測定器で測定不可能っと出たんだよ」
「それなら魔力無しだろ? 何で魔法士になるんだよ!」
「……闘技場に置いてある的を、知ってるだろ?」
「ああ……魔法の訓練やランクアップの時に使うヤツだろ?」
「それをコイツは全ての的を一瞬で灰にしたんだよ!」
「…………………え?」
クルトンの言葉に男が首を傾げる。
「何を言ってるんだ!? 魔力なしがそんな事できるわけねーだろ?」
「だからだよ! それが本当なら、この討伐で大活躍してくれるはずさ……だからさ?」
「……くくっ。それはそれは……」
その後は俺に聞こえない様に、クルトンは魔法師の男にコソコソと耳打ちしていた。
「じゃあ先に俺たち一番隊が、討伐に向かう。二番隊、三番隊は時間を開けて後からついてくるように」
「「「「はいっ」」」」
「行くぜえ————っ!!」
「「「「オオ————っ!!」」」」
ギルマスが声を荒げみんなを鼓舞する。
もちろんこの一番隊とやらの中に、俺も入っているんだが……。
一番隊はギルマスと俺を入れて全部で十五人。魔獣がどれだけの数いるのかは知らねーけど。
こんな人数で大丈夫なのか?
まぁ後から二番隊、三番隊っと後方部隊がついてくるんだが……。
俺は身分証が作りたかっただけなのにな。
何で魔獣討伐に参加してるんだ?
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