第28話 測定不可

「嘘だろ?」

「なんで魔力なしにあんなことが出来るんだよ!」

「今の魔法……サンダーって」

「……低ランク魔法であの威力」


 さっきまであんなに馬鹿にしていた奴らが、口を揃えて驚いている。

 ギルマスと魔法師にいたっては、まだアングリと口を開け、ただ呆然と的があった方角を見つめている。


「っという事で? 俺は魔法が使えるって、信用してもらえたか?」

 

 あんぐりと口を開いたままのギルマスに話しかける。


「…………こっこんなバカな! おいっ魔力なし! お前何か魔道具とか使ったんだろ?」


 ギルマスはハッと正気の戻ると、俺の胸ぐらを掴み食って掛かって来た。


「おいおい……? 魔道具? そんなんもん使ってねーよ」


 魔道具の使い方しらねーし。

 ってか使ったら流石に分かんだろ? 俺でも分かるぞそれくらい。


「じゃなきゃ! こんな事有り得ねーんだよ」


 顔近いって……ツバが飛んでるし。


「はぁ……そんなこと言われてもだな? 実際使えるんだわ? ってかな? 俺は魔力なしでもねーしな?」

「はぁあああああ!? 測定不可ってでただろーが! 何を言ってんだ」


 ギルマスが興奮し、掴んでいた胸ぐらを更にキツく締め上げてきた。


「……っ苦しいだろーが! 離せ」


 ギルマスの手を振り払うと、勢いが強かったのか、ギルマスはそのまま地面に倒れこむ。


「……っ!」


「分かったら、身分証を作ってくれるか?」


 ギルマスは納得してないのか、座り込んだまま俺を睨んでくる。


「僕は認めないぞ! 魔力なしがあんな魔法を使えるなんて! 絶対におかしい! 何かの間違いだ」


 魔法師のクルトンだったか? がおかしいと騒ぎ出した。

 ったくどいつもこいつも……魔法を見せれば良かったんじゃなかったのか?


「おかしいもクソもだな? 初めっからお前らが間違えてるんだよ。そもそも俺は魔力なしじゃねぇし」


「んなバカな! 測定器で計測不可能と出ただろうが!」

 

 ギルマスがギャンギャン吠える。はぁ……めんどくせえ。


「分かったよ? おバカなお前らにでも分かるように、教えてやろうか? 俺の魔力はな? 測定出来ないほどの魔力量ってことなんだよ」

「なっ……ギルドに置いてある測定器は一番最新式だぞ!? それで測りきれないとか……そんな奴が……」

「ココにいるんだなそれが」


 そう言うとギルマスは黙り込んでしまった。


「そんな事、僕は絶対に信じないぞ! おいっ僕と勝負しろ!」

 クルトンが勝負しろとか言い出しやがった。

 俺はそんな事よりも、身分証を作ってくれたらそれで良いんだが。


「……勝負って何をすれば良いんだよ?」

「それはっ」


 そんな時だった。ギルドの職員が階段を転がるように降りてきた。

 見るからに慌てているのがわかる。


「大変です! ディアナの森で、魔獣が大量発生との事です! 至急冒険者は魔獣の討伐を!」

「なっディアナの森ってこの王都のすぐそばにある森じゃないか!」


 ギルマスは慌てて立ち上がると、職員と一緒に階段を駆け上がっていった。


 おいおい……俺のことは結局どうなったんだ? 


「よしっ決めたぞ! 森で魔獣を多く討伐した方が勝ちだ!」


 そんな中クルトンが、とんでもない事を言い出しやがった。


「…………はぁ?!」

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