第26話 魔力測定

「さぁ乱道様、この水晶に触れてください」


 サラサが俺の前に水晶を出す。

 う~ん。水晶コイツにはいい思い出がないが、触れないわけにはいかねーよな。

 

 俺はカウンターに置かれた水晶の上に手を置いた。


「…………えっ?」


 サラサの顔が驚いている。これは城と同じパターンか?


「すみません乱道様。どうやらこの測定器が壊れているみたいで……違うのを持ってきます!」


 サラサが裏へと走って行く。はぁ……やっぱりか。何度やっても同じだと思うが。

 

「もう一度これで測定させてください。何度も申し訳ありません」


 そう言って頭を下げるサラサ。

 次も同じ結果だと思うけどな……そう思いながら測定器の上に手を置いた。


「…………どうして!? そんな?」

 

 サラサの顔が青ざめる。


「サラサちゃーん? そんなに凄い結果なのか? この魔法師様の魔力は?」

「俺たちにも教えてくれよ!」


 男達はサラサの様子を見て、何か感じ取ったんだろう。結果を教えろと煽り出した。


「個人の結果は教えられません。さぁ皆様、下がってください!」


 サラサが煽る男達を、必死に退けようとしてくれる。

 ……だがそんな気遣いも虚しく。

 この騒めきに寄って来た別の職員が「なっ!? 測定不可能!?」っと大声で叫びやがった。


「ちょっと! ギルドマスター! 個人の情報を叫ぶなんて問題ですよ!」

「だってさ? 測定不可能なんてヤツ初めて見たからさっ……くくっ。魔力なしだぜ?」


 なんだ? この失礼な男がギルドマスターだと!? マスターって一番偉い奴のことじゃないのか?

 こんな奴が一番偉いとか、大丈夫かこのギルドって所は?


「何だって! コイツ魔力なしなのかよ! あはははっ」

「サラサちゃんも冗談がきついぜ? 魔力なしが魔法を使えるわけないだろ?」

「コイツに変な薬を飲まされて、幻覚でも見せられたんじゃないのか?」

「あははっ。魔力なしって……下民でもちったぁ魔力があるぜ?」


 男達が腹を抱えて笑い、俺を指差し馬鹿にする。


「そんな事ないんです! 乱道様は凄い魔法を使って、私を荒くれ者の熊獣人から助けてくれたんです!」


 サラサが熊獣人の話を出すと、ギルマスが少し呆れたようにため息を吐く。

「熊獣人ってBランクの兄弟だろ? 悪さばかりするが、ここらじゃ誰も逆らえなくって手を焼いていたんだ」


 あの熊獣人そんな悪い奴だったのか。


「そうですよ! その二人に襲われそうになっていたんです!」

「コイツが勝てるわけないだろう。何を言ってるんだサラサ?」


 ギルマスは一向にサラサの話を信じようとしない。

 まぁそうだろうな。城でもそんな扱いだったからな。


「それにだ? 魔力なしが魔法を使えるわけがないだろう?」

「でも! 本当なんです!」

「分かったよ。だが魔力が低いものには、下民の紋を入れないといけないからな。魔法師を呼んでこよう」

「ちょっと待ってください!」


 サラサが引き止めるも、ギルマスは奥に行こうとする。


 ちょっと待ってくれ! 

 またあの首輪を入れられるのか? 

 琥珀を使えばすぐに消せるが、もう一回あの紋を入れるとか、いい気はしねぇ。


「なぁギルマスよ? 俺が本当に魔法が使えたなら、下民の紋は入れなくていいのか?」

「魔法が使えたらな? だが魔力なしのお前では無理だろう?」

「それは見てもらったら分かる」

「はっ魔力なしが偉そうに、そんなに恥をかきたいならいいぜ? みんなの前で見せてくれよ、お前の魔法とやらを」


 ギルマスが馬鹿にした目で俺を見る。


「あはははっこりゃいいわ。俺たちも見学しようぜ?」

「そうだな。嘘つきが恥をかくのを見せてもらうか」


 サラサの件もあったからか、男達はギルマスの言葉に同調し、楽しそうにニヤニヤと笑う。

 まぁいいさ。笑っていられるのも今の内だけだ。


「じゃあ地下にある闘技場に降りて来い。サラサ? 嘘つき君を案内してやれ。俺は先に下りて準備している」


 ギルマスはサラサの肩を軽く叩くと「馬鹿に関わると痛い目見るぞ?」っと言って去っていた。

 

 ……聞こえてるよ。


「乱道様、私が騒いだせいでこんなことになってしまって、本当に申し訳ありません」

 サラサが泣きそうな顔をして、頭を下げる。

「大丈夫だ、そんな顔すんなって? 俺が魔法使えるの知ってるだろ? だから安心して見てろ」

「乱道様……はい!」


 さてと、なんの魔法を披露しようかな?


 

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