第25話 サラサ

「ほええ~コレが冒険者ギルドか」


 教えてくれた通りだ。ほんとに黒くてデカイ建物だな。案内されて気付いたんだが、どうやら俺は反対方向にずっと歩いていたみたいだ。

 そりゃいくら歩いても辿り着かねーわ。


「さぁ、お入りください」


 サラサが大きな扉を開き、中へと案内してくれる。

 中に入ると無骨な男達がいっせいに俺達を見る。

 んん? 睨んでくる奴もいるな。なんでだ? 意味がわかんねーぞ?


「あちらのカウンターが私の場所ですので、今すぐ解放しますので、少しの間だけ前で待っててくれますか?」

「ん? りょーかい」


 俺はサラサに言われたカウンターの前に立った。


 よく見ると他にもカウンターは四つあり、色んな子が受付をしている。

 すごく並んでいるカウンターの子が人気って感じか? 


「おいっ! お前サラサちゃんとなんで一緒に入って来たんだ?」


「え?」


 サラサを待っていると、後ろから急に声をかけられた。振り返るとそこには男が三人立っていた。

 コイツらは俺が入ってきた時に睨んでいた奴らだな。


「なんでって? ええと……ギルドを案内してくれたから?」

「はあああ? そんな事で俺たちのサラサちゃんを独占してるのか!?」

「ふざけた奴だ! さっさとカウンターソコを退け!」


 男達が俺の腕を掴み、無理やりカウンター前から退かそうとする。


「何すんだよ! 急に触んな」


 俺は触れられた手をなぎ払う。何が嬉しくておっさんに触られないと行けねーんだっての。


「なっお前! 俺たちは朝からサラサちゃんが来るのを、ずっと待ってたんだぞ!?」


「そうだ! さっさと退け!」


「なんでお前らの言うことを聞かなきゃ行けねーんだよ? 俺はサラサに言われてこの場所にいるんだ」

「がうぅ!」

 

 俺が声を荒げたから、稲荷まで怒ってしまった。


「なっサッサラサちゃんを呼び捨てにして!」

「お前! もしかしてサラサちゃんと、ただならぬ関係なのか!?」


「別にそんな関係じゃねーよ」

「なら呼び捨てをやめろ!」


 男達がどうでも良いことで、ギャアギャアと騒ぐ。気がつくと、他にも同調している男達が増えてきている。

 もしかしてサラサは人気の受付嬢なのか?


「お待たせしました! あれ? どうしたんですか? 騒がしいですね」


 そんな中、服を着替えたサラサがカウンターにやって来た。


「どうしたもないよ! サラサちゃん! なんでコイツと一緒なんだよ」

「そうだよ! 俺たちがいくら誘ってもOKしてくれなかったのに」


 俺を押し退け、サラサにわぁわぁと詰め寄る男達。


「なんでって……それはぁ……ね? 乱道様」


 サラサは両手を頬に当てて俺を見る。ちょ!? なんだその意味深な態度は?


「なんだよサラサちゃん!? こんな弱そうな男が良いのか!?」


「なっ! 乱道様は弱くないです。すごく強いんですから! ねっ?」


 サラサは微笑みながら俺にウインクしてきた。

 頼むから男達をこれ以上煽るのはヤメテクレ。


「あははっ。サラサちゃんは見る目がないな。こんな細っこい体の男だぞ?」

「なっ! 乱道様は大魔法師様なんです!」

「え?! 嘘だろ!?」

「本当ですよ! すごい魔法が使えるんですから!」


 その言葉に、男達の視線が俺に集中する。マジ勘弁。


「はいっ分かったら、そこを退いて下さい。私は乱道様と大事なお話がありますので」


 サラサ? 俺はお前と大事な話はねーぞ? 案内を頼んだだけだぞ。

 はぁー……こんな目立つ中、身分証を作るとか。なんの罰ゲームだ。

 これ以上目立つ前に、さっさと作ってギルドを後にしよう。


 男達はサラサに嫌われたくないのか、舌打ちをしながらカウンターから退いた。


 サラサは豊満な胸をカウンターに乗せ、「こちらへどうぞ」と俺を呼ぶ。


 目のやり場に困るんだが……まぁ仕事墨入れで女の胸なんて、腐るほど見てるんだが……今は仕事中じゃないからな。


「乱道様、ギルドに何の御用でしょう?」

「ええとだな。身分証を作って欲しくって」

「身分証ですか? 紛失されたのですか?」

「紛失というか……まぁそんな感じだ」

「そうなると、再発行になりますので、冒険者ランクが最低ランクである、Fランクからスタートになってしまいますが……」

 

 冒険者ランク? 俺は冒険者になるつもりはないからな、ただ身分証が欲しいだけだし。


「それは大丈夫だ。作ってくれ」

「分かりました。乱道様ならすぐにランクも上がりますもんね。ではこちらの水晶に手を当てて貰えますか? これで魔力を測定させていただきます。この数値が高いと冒険者ランクも上がりやすくなっています」


 これって……城で測定不可能ってでたやつじゃ。


 ん? 何だろう嫌な予感しかしないんだが。

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