「余命」


「残念ですが……、癌です……かなり進行してしまっていますね」


「…………先生、僕はあと、どれくらいの命なのでしょうか……?」


「余命、120年ほどですね」



「じゃあもう健康体と同じなのでは?」


 ……健康体以上に長生きだった。

 だが、あくまでも可能性を言っているだけで確実ではない。

 120年よりも早く死ぬこともあればもっと長く生きるかもしれない……可能性だ。

 そうだったらいいな、と医者が言っている可能性もある。


「確定事項ではありませんのであまりお気になさらず。余命に振り回されてストレスを溜めれば余命がもっと短くなるかもしれませんが」

「それでも100年ほどあれば充分ですけどね……闘病して、その年数ですか?」

「闘病せずに、です」

「じゃあ闘病なんて誰もしませんよ!!」


 癌が進行しても100年も生きられるのであれば。……ただ、繰り返すが目安であり、確定事項ではないため、余命が短くなることもある。


「明日、死ぬかもしれませんね」


「余命の枠が太すぎる!!」



 …了

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