「ひとごとひとりごと」
「――――(ぶつぶつぶつぶつ……)」
「あのおねえちゃん、ずっとなにかいってるよー?」
「こらっ、見ちゃいけません!!」
視線を逸らし、見なかったことにした親子だったが、
「あの」
嫌な予感がした後、案の定、声をかけられてしまった。
我が子を背中に隠した母親が、話しかけてきた女性に苦笑いで対応する。
「な、なんでもないですっ、すぐに立ち去りますので……」
「あ、立ち去るのなら大丈夫です。今そこでビルが火事っぽいので気をつけてください」
「え?」
次の瞬間、漏れたガスに引火でもしたのか、ビルの上階が吹き飛んだ。
小さな破片が舞う。女性が傘を差してくれたおかげで、母親も子供も落下してきた破片で肌を切ることもなかった。
「あー……爆発しちゃいましたね……。急いで逃げてください」
「あ、あなた……さっきぶつぶつ言っていたのって、まさかこのことへの注意喚起だった、とか……?」
「はい。危ないですよ逃げてくださいよ、って、教えていたんですけど」
「聞こえるわけないでしょう!? もっと焦って言ってくださいよ!! 一切こっちに危機感を抱かせないのは気を遣ってることにはなりませんからね!?」
…了
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