「日課」


 ……怖い話をしてくれって? そうだな……ふうむ。


 ついこの間の話だ。私はいつものようにネット注文をしたのだ――もう日課だな。

 朝起きて、とある喫茶店のクロワッサンとカフェラテを頼み、配達員に運んできてもらう……ようするにウー○ーイーツなのだがね。


 毎朝、それを頼むことで一日が始まるのだ。

 それをしなければ今日はもう動けないと思ってしまうほどには根付いているものだ。


 その日も私は朝起きて、いつものように注文した。毎朝していることだからたとえ寝ぼけていてもスマホの操作は的確だった。

 支払い方法も住所も既に登録済みだから、最短の操作で注文を確定できる。

 配達員には玄関前に置いてくれと指示してあるし、私の注文を受けたことがある配達員であれば事情も分かっているだろう……道に迷うこともなく手早く置いて去ってくれるはずだ――

 今日も同じように……だが、私はそこで気づいてしまったのだ。

 洗面台で顔を洗っている途中で、ふと、覚醒した。


 目が覚めた。……ゾッとした。



 私は今、旅行中なのだった。



 …了

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