第34話 今やってる事がセクハラって自覚はあるか?
レストランから家に戻った俺は勉強を再開した。母さんに頼まれていた家事がおおかた終わった玲奈も俺の隣で勉強をしていたがさっきから邪魔ばかりしてくる。
「ねえ、ここの長文の日本語訳が全く分からないんだけど」
「おい、この問題は確か授業でも一回解いてただろ。とりあえずその時のノートを一回見直してそれでも分からなかったら聞いてこいよ」
「その時も全く分からなかったから一切ノートを取る気にならなくてさ」
「……ったく、マジで手がかかるな。ここはだな」
こんな感じで玲奈は分からない問題を俺にひたすら聞いてくる。だから今日は勉強会を無しにしたというのに母さんが余計な事をしてくれたせいでこのざまだ。まあ、面倒と思いつつも結局玲奈を見捨てられず教えてしまっている俺も悪い気はするが。
こんな事になるなら叶瀬がいてくれた方が負担が分散するのでまだマシだった気がする。叶瀬がいた場合はそれはそれでめちゃくちゃうるさそうだが背に腹は変えられない。
「って感じだ、分かったか?」
「うん、何となくだけどさっきよりも分かった気がするよ」
「ちなみにその問題はそこまで難しく無いレベルのやつだからその辺りで躓いていると英語はマジで赤点の可能性もあるかもな」
「ちょっと、テスト前に嫌な事を言わないでよ」
「だって事実だし」
俺は玲奈の危機感を煽りつつ自分の勉強に戻る。どれだけ教えたとしても残念ながら赤点を取って夏休みに補習が入るか、無事に逃げ切れるかは玲奈次第だ。
それからしばらくの間は大人しく勉強をしていた玲奈だったがまた何か分からない問題があったようで再び俺に擦り寄ってくる。
「潤、次はこの問題の答えが全然分からないから教えてくれない?」
「今度は一体何が分からないんだ……ってそれ保健体育の問題集じゃん」
どうせまた英語か、もしくは物理か数学辺りだと思っていたため保健体育は完全に予想外だ。てか、保健分野も体育分野も基本的に暗記しかないんだからそのくらいスマホで調べろよ。
なんなら体育分野は運動部に所属している玲奈の方が絶対に俺より詳しい気がするんだが。そう思いつつも俺は問題を見る。
「……おい、妊娠と出産はそもそも今回の期末テストの範囲じゃないだろ」
「あれっ、そうだったっかな? まあ、でもとりあえずこの問題の答えだけでも教えてよ」
ニヤニヤした玲奈が指差した問題文には望まない妊娠を防ぐために男性が使用する避妊具の名称を答えろと書かれていた。うん、俺の口からコンドームというワードを出させたいがためだけに聞いてきたに違いない。
やっている事が貞操逆転前の女子にセクハラをする男子中学生と同レベルだ。玲奈のこの落ちぶれっぷりは幼馴染としても本当に悲しい。どうしてこうなった。
「あれっ、もしかして分からないの? むっつりスケベな潤ならきっと知ってると思ったのに」
「今やってる事がセクハラって自覚はあるか?」
「えっ、保健体育の問題集の分からないところを聞いてるだけなんだけどな」
うん、玲奈にはマジで一回通報されて痛い目に遭って欲しい。そうすればこんなふざけた事はもう二度と言わなくなるはずだ。
「ちなみに答えはコンドームだって」
「ああ、そうか。じゃあ解決って事で俺は自分の勉強に戻るから」
「潤のリアクションが想像以上に薄過ぎてつまらないんだけど」
「ぶっちゃけ最近の男子高校生はそれくらいじゃ全く驚かないと思うぞ」
貞操逆転前は多分ほとんどの男子が過激なエロ動画を見ていたはずだしコンドームごときではそんなにドキドキはしないと思う。
「じゃあ次は……」
「あっ、これ以上保健体育の問題を出してくるようなら玲奈の両親にセクハラされてるって言いつけるからな」
「うっ、それは困る」
性懲りも無くまた性教育関連の問題を聞いてこようとした玲奈に俺は釘を刺しておいた。貞操逆転してから女の子を持つ親はその辺りに敏感になっているため今やっている事がバレたら間違いなくこってりと絞られるはずだ。
その後玲奈はまるで人が変わったかのようにすっかりと大人しくなった。そう言えば玲奈のお母さんは昔から怒るとめちゃくちゃ怖かったな。今後あんまり玲奈が調子に乗るような事があれば利用させて貰おう。
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