第二十二話 期末テスト明けの憩い




 キーンコーンカーンコーン……





 「はーい、終了」





 教室の中に担任の前田憲人(まえだのりと)先生の声が響く……


 

 今日はテスト最終日……





 「それじゃあ、もう夏休みはすぐそこだからミスった行動はしないこと。そして、"はしゃぎすぎないよう"にはしゃげよー。来年は遊んでる暇なんてねーんだからよ」



 そう憲人ノリ先生は続ける。



 「んじゃ、みんなお疲れちゃーん」





 

 ノリ先生の軽い挨拶を皮切りにみんな席から立ち上がっていく。






 「やっと終わったー!!」

 


 


 私が席から立とうとした時にスズが抱きついてきた。





 「あー!!ユウの香りめっちゃ良い香りー♡このまま一緒に抱きまくりにして寝たーい♡」



 そうスリスリと私に頬を擦り付ける…



 「スズはテストどうだった?」

 「」



 頬ずりされながら私は質問した。









 「……………マァ、ソレハマタアトデイインジャナイ?」







 


 スズはさっきとは真反対の冷たい死んだ目をした笑顔で言った。



 


 「2人とも仲良いなー(笑)」



 「「!」」





 私達がそんな話をしてる所へ幼馴染で"私の彼氏"のトーカがやってきた。




 「おつ。トーカはどうだった?」

 「え、何が?」

 「テスト」




 「マァ、ソレハマタアトデイインジャナイ?」




 スズと全く一緒の答えだった。






 「あ、そうだ!!」

 「どうしたの?」




 突如、スズが大きな声を出した。




 「これから大人数でパーっとしない?」

 「お、いいじゃん!」




 スズが言うことにトーカも同調する。




 「大人数ってのは具体的には?」



 私はスズに尋ねる。



 「男女混合で遊ぼうってことだよ!!」

 「」



 


 そう言えばトーカ以外の異性と遊ぶのいつ以来だろ……



 




 と言うわけで……










 「あー、疲れたー!!最後の現代文の時間"寝過ぎ"ちゃったよ〜」



 隣のクラスの"私の親友"の一人、和澤小春かずさわこはること"ハル"。



 「いや、寝ることで疲れちゃ笑止千万だろ」



 他クラスの"私とトーカの幼馴染"のイケメン男子、柳田薫やなぎだかおる



 「そのツッコミもおかしいだろ!!そもそも寝る事象がおかしいから!!俺だってラスト20分しか寝てねーよ!!」



 また他クラスの"トーカの友達"のザ・体育会系の見た目をした邦山士郎くにやましろうが大きな声で笑う。



 「いや、どっち道寝てるのね(笑)」



 そう苦笑したのはまた"私の親友"の一人、森野阿澄もりのあすみこと"スミ"



 

 最後に……







 「そもそも俺、テストで文字を書き入れた記憶がないわ」






 「そりゃ、そうちゃんはもう殿堂入りだからなー、驚かんわ」

 「蒼ちゃんはもう学校来てるってだけで十分だよ」

 「後は机に座ってれば完璧!!」








 蒼ちゃんこと、岩滝蒼司いわたきそうじは私とトーカと一緒のクラスの"私とトーカの友達"だ。



 黒髪の鳥の巣のような長めなボサボサ頭で、顔はこれと言って特徴はない……そして可愛い系かイケメン系かで言えば可愛い系な人で身長は175cmくらいの……つまり、なんて言うか……




 【愛されキャラ】と言う感じだ。




 実際、この高校に入ってきたからにはそれなりに頑張って入ってきたんだろうけど……あまり"蒼ちゃん"は過去の事を話さないので分からない。



 でもこれだけは言える……











 一年の頃、成績ビリで冗談抜きで退学しかけた逸話がある。








 赤点を取るのは当たり前、提出物は遅れてだす、授業中は寝るかお絵描き、遅刻も単位が取れなくなるギリギリまでして、何もかも危ないギリギリまでやっちゃってる。


 そんな不安要素が多いけど……










 みんなには愛されている。









 私自身も蒼ちゃんのことは好きだ。


 なんて言うか……人を引き寄せる魅力見たいのがあって、私は"誰か"に似ているなと思っている。


 でも、詳しくは上手く説明できない……




 私自身は意識を高くして何事も全力でやってる……が、蒼ちゃんはのらりくらりでやってる感じだ……




 真反対なのに私は蒼ちゃんが好きで魅力的に感じる。





 ……あ…





 と、ともかく!!





 今回は暇だと言う事で蒼ちゃん含め、この5人が私、トーカ、スズを抜いて集まった。



 急だったこともあり、部活や家の用事があったりしたのでこの5人と言う感じだ。




 

 「んじゃ!!最初はどこ行きたいとかある?」




 学生ホールに集まった私含む7人にスズはクエスチョンを投げる。




 「どこでもいいんじゃね?人が密集するとこは怠いけど」

 



 と、薫。




 「海とか行ってみる?」




 と、阿澄スミ




 「あ、じゃあカラオケでも行くか!!」




 と、邦山君が言う。




 口々にみんな、何か言うが全く決まらない。


 私自身はこんな8人で…しかも男女揃って遊ぶなんて久しぶりだから正直、みんなに合わせる方向でいる。








 スッ






 その時、小春こと"ハル"が手を挙げる。







 「私さ……気づいちゃったんだけど……この"停滞"した空気をひっくり返す"代替案"が……」






 そんないつもの元気な明るい声とは違う静かなイケボな声音で言う……




 「別に停滞した感じじゃねーぞ?」


 と、トーカ……


 「代替案の意味も違うよ(笑)?」

 

 と、スズが突っ込む。





 「あ…………ちょ、ちょっとカッコつけただけだけだよ!!!カッコつけさせてよ!!!妙案なんだから!!」





 そしていつもの感じに戻って頬を膨らますハル。




 「で、妙案とは何よ?」




 薫が話を元に戻す。







 


 「とりあえずお昼食べちゃおーう!!!」

 







 「「「「「「」」」」」」




 ハルがいたって普通過ぎるそもそもの大前提なことを言う。




 「あー、俺も腹減ったからなんか食いたい」




 蒼ちゃんもハルの意見に賛成する………






 と言う訳でまず、お昼を食べながら考えることに決まった。















 そして、今は歩いて学校の最寄駅に向かってる。







 「そう言えば、もうすぐ夏休みだけどみんなは何か予定でもあるの?」

 


 阿澄ことスミがみんなに質問する。



 「え、特にねーな…森野は部活だろ?」

 「まぁねー、一応全国には進めたから今月末は"地方に移動移動♡"」

 「言い方……」

 「つか、【女子バレー部】ってそんな強ぇんだ」

 「え、薫は知らんかったの?」

 「興味なかったから」

 「いやいや!!うちの高校のバレー部は強いって有名だって!!何で知らんのよ!」

 「興味ねーから」

 「ヤナちゃん、敵作るタイプだねー」

 「おー、学校一天然なハルに"こんな目"をさせた薫は絶対女泣かすな(笑)」

 「あ、ごめん」



 こんな感じで、薫、阿澄スミ小春ハル、士郎、鈴衣スズ、トーカの6人はわちゃわちゃ話していた。







 けど、私は会話に入れなかった……



 あー、やっぱ大人数は苦手だよ……



 さっきからチラチラ、トーカが目線を向けてくれてはいるけど上手く入れない……




 でも…


 やっぱ頑張らな……



 「なぁ伊織」




 「!!」




 私が奮い立たそうとしている時に不意に蒼ちゃんから声を掛けられた。




 「怖い顔してんぞ?なんかあった?」



 蒼ちゃんが私の芯を喰うような感じで聞いてくる…



 「べ、別に大丈夫だよ?」

 「……………あ、そういや伊織に言っときたいことがあったわ」

 「え、何?」





 「この前、森野スミとお前が"頬やデコにキスしあってる"の見ちまったわ」





 「」





 「あまり女子同士で仲良いからって人がいそうな所でやんねー方がいいぞ?」



 無表情で蒼ちゃんは淡々と言った………



 「…………………












 はあぁぁっっ/////////!!!!!!!!!!????」













 私は大声を出していた。






 そして、周りの人達みんなに見られた。







 「ユウ?どうしたの?」



 スズが驚いた表情で質問してくる。



 「寿命縮みかけた…」



 邦山君が心臓を手で押さえる……



 「な、何でもない何でもない何でもないから//////!!!!!!!」




 私は必死に弁明する。






 「あ!!ユウちゃんはどう思う?薫君の人心の無さ!!」

 「いや、俺も人の心くらいはあ…」

 「うんうんうん!!!薫は少し人の皮を被ったモンスターな所があるよね!!!!!」

 「え…」




 そんな感じで私はとりあえず話題を逸らそうと"強い言葉"を使って話題を逸らそうと話の中心に入っていた……










 



 「」

 「ありがとな蒼司」

 「ん?何が?」






 「"ユウの背中"を"押してくれて"よ!」

 





 ユウ達とは離れた所でトーカが蒼司に礼を言う。



 「別に背中を押した訳じゃねーけ……いや、背中を押すと言う"ペインティング"をして伊織を揶揄っただーけ」

 「コーティングじゃね?」

 「どっちでもいいわー(笑)」

 



 と、二人の男子は笑い合った……













 岩滝蒼司いわたきそうじ

 


 彼の長所は人をよく見れている所……



 これが愛される所以でもある。




 完

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