第二十話 私と彼氏がトマトを一緒に食べれるようになった記念日





 「なぁ、ユウ」

 「ん?」

 



 私とトーカは朝、登校していた。

 





 「今日は何の日か分かるか?」






 「木曜日」

 「そ、そうだけど!!ほら、他にあんだろ?」

 「え…………何?」

 「え…本当に忘れちゃった?」

 「どちらも誕生日じゃないし、付き合った記念日でもないし………え、マジで何?」

 「ひでぇ………忘れんなよ」

 「だから何?」

 「俺とユウが……








 初めてトマトをまともに食えるようになった日じゃねーかよ」








 そうトーカは笑顔で言ってきた……



 「………………」

 「思い出した?」

 「ところでトーカはロスチャイルド家並の財産を欲しいと思ったことはあ……」

 「あれー?無視ー?」



 あまりに"くだらないことを聞いたよう"に私は無理矢理話を逸らそうとした。





 「立派な記念日じゃねーかよ!!」




 トーカは声を上げる。




 「いきなりそれを言われてどう反応すれば良いか分からないんだけど」

 「いやいや!!2人でトマトを好きになったんだぞ?ちょっとした奇跡だろ!」

 「確かに奇跡ではあるだろうけどそんなデカい声で言うほど大それたことじゃないでしょうが」



 私はジト目を向ける。



 「え、そうか?」

 「そうだよ」





 まぁ、私とトーカがトマトを好きになったのは3年前の中2の頃の話だ。



 当時、私はトマトは何だか"人"の肝臓や心臓のような臓器みたいに見えてしまい(多分、私の感覚がおかしかったんだと思いますが…)、つまり苦手ということであまり食べることがなかった……



 トーカが嫌いだった理由は単純になんか味が気に食わないからだった。



 それでだ。


 あまりお互いに好んで食べれる感じではなかったが中2の頃に幼馴染の……私の家族とトーカの家族……そして、薫の家族でバーベキューを夜していた……





ーーー3年前ーーー




 「なぁ、ユウ」

 「何?」



 当時中2だった私とトーカと薫は家族達と離れた所で話していた。



 「俺とユウってトマト嫌いじゃん?」

 「そうだね」

 「じゃあよ、お互いに食べさせ合いしねぇ?」

 「…………は?」

 「つまり、アーンをしようってこと」

 「いや分かってるよ!……何で嫌いなのにアーンし合うの?」

 「いや……幼馴染の親友同士でアーンし合えば異性が近いという事に目が言って緊張してトマトが嫌いとか無くなるんじゃねーかな?」




 一時的なだけな気もするけど。




 「なんか幼児向けのCMの苦い薬をゼリーで流し込むみたいな感じに似てるな。それの青年向けって感じか」




 薫がふとそう言った。




 「まぁ、そうだな」

 


 トーカもそう返す……




 「………………ん?」




 「どうしたユウ?」

 「あれ、アーンし合うの?」

 「だからそう言ったじゃん」

 



 私は一度聞いた時は冷静にツッコンでいたけど……




 「え………」




 これってなんかおかしくない?









 「よし、アーンするぞ!!」

 「…は、はい……」





 という訳で私とトーカはバーベキューで持ってきていた野菜の普通の市販で売ってるトマトを一口サイズに切ったのをフォークで刺して持っていた……





 「」

 「いやー、食えるようになるかなー(笑)?」

 

 

 「2人ともー!!ちゃんとゆっくりやりなさいよー!!」

 「撮ってるからねー」



 私の母親の伊織優奈いおりゆうなとトーカの母親の香月裕香かづきゆうかはビデオを構えていた……




 いやいや!!何で撮るんだよ!!





 「」(ラブラブだなー)


 私の兄の伊織悠人いおりゆうとはそれをチラチラ見ながらスマホをいじっていた。


 





 「じゃっ、ユウ。準備いいか?」

 「だ、大丈夫……」





 ドクン…





 や、やばい……何だろ……





 「それじゃあ……」




 ドクン…!



 

 「あ……」







 スッ







 そうして私とトーカは口にトマトを入れあった……





 「「」」





 モグ…モグ………





 そして噛んだ。







 「…………う………






 うめぇな!!!!」






 静かになってた周りの空気をトーカの第一声がかき消した。




 「トマトうめぇじゃん!!!」

 「お前普通に食えんじゃん」




 トーカの父親の香月雄太かづきゆうたが笑いながら言った。




 「いや、なんか前食った時と感じが違うからよ!!ユウはどう…………ユウ?」


 


 「………………」




 「ユウ?無理だったか?」

 「……………いや……







 美味しかった……!!!!」







 私は目を輝かせて笑顔になっていた。



 あ、思ってた時より全然真反対に違う……普通に甘酸っぱくて水々しくて美味しいや……





 「そうだよな!!」

 



 ニコ!!



 そう笑顔でトーカは笑った……




 「」





 と言う理由で私とトーカはトマトを食べれるようになった訳。



 まぁ、予想以上に美味しかったと言うのもあるけど……





 なんか、トーカの顔が近くて緊張してしまったのもあるんだよな……





 その時はとりあえずトマトが美味しかったって感じに全振りしてポーカーフェイスをしたけど、トマトのちょい上くらいにトーカと顔を近づけた事に気持ちは強かった…//////




 何だろう……




 何だろう…あの時の感じは…//////







 


ーーー現在ーーー








 まぁ、今思えばあの時点ではとっくにトーカと他の男子達は違った風に見えていたのかもな……



 



 「だからユウ……………ユウ?」

 「あ、ごめんごめん。聞いてるよ」

 「ともかくよ!!そんな記念日なんだから今日は一緒にデートしようぜ!!」

 「…………ねぇ、トーカ」

 「ん?」

 



 「もう期末テスト1週間前だよ?」




 「………………」

 「勉強デートしよっか♡」




 ツン…




 私は笑顔でトーカの鼻先を触った。





 「あ、なんかベタついてる」

 「!!!あ、暑いんだからしょうがねーだろ!!!た、"ただの水"だから!!!」

 「はいはい(笑)」




 そう笑いながら私とトーカは一緒に学校への道を歩いて行った。


















 「あ、ユウちゃんおはよー」

 「おはよー」




 私とトーカは教室に到着すると分かれて自分の席に向かった。



 そして私は前の席の仲がいい友達、悠木瑠奈ゆうきるなこと"ルナ"に挨拶した。



 ルナはメガネをかけたボブウルスカットの髪型をし、大人しい子だ。


 そして、顔も整っており可愛い。




 明るい系の久賀鈴衣ひさかすずえことスズとは少し違う感じの可愛いだと思う……




 「あ、ユウちゃん………ちょっと飲み物買いに行くんだけど……つ、付き合ってくれる?」

 「いいよー」




 と言う訳で私とルナは飲み物を買いに行った。




 「あ、えーとさ……ルナに話したい事があるんだけど……」

 「ん?香月君とのことかな?」

 「……!!!そ、そう……//////////」

 「どうしたの?」

 「私とトーカの……




 トマト記念日の3周年目なんだ//////」





 「」






 すみません嘘をつきました。




 私はトマト記念日のことも覚えていたし、しょうもないとも思ってませんでした!!!!!




 だって…






 誰よりも大好きな人との大切な思い出を忘れる訳ないでしょう///?



















 「いやー、マジでいい記念日だわ!!」

 


 一方、トーカは他クラスの友達、頭が良くお勉強キャラっぽい見た目で今はジト目をしている井山正孝いやままさたかにその事を話していた。



 「………本当に仲が良いんだな…なんか、嫉妬と通り越してこの先もずっと続いて欲しいって思えてくるよー」

 


 そう、正孝はジト目をしながら笑いながら言う……



 「だろだろ!!?」







 その皮肉に気づかずトーカは笑顔で話し続ける……








 完

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